いよいよ大詰め!新国立劇場『デカローグ10』稽古場レポート



いよいよ大詰め新国立劇場『デカローグ』

「デカローグ」は「トリコロール」三部作、『ふたりのベロニカ』で知られるポーランド出身の世界的映画監督クシシュトフ・キェシロフスキが旧約聖書の十戒をモチーフに 1980 年代のポーランド、ワルシャワのとある団地に住む人々を描いた十篇の連作集です。人間を裁き断罪するのではなく、人間を不完全な存在として認め、その迷いや弱さを含めて向き合うことが描かれたこの作品は、人への根源的な肯定と愛の眼差しで溢れています。

4月から、4か月にわたって10の物語を完全舞台化!という新国立劇場の壮大なプロジェクトも残すところあと1か月。6月22日から始まる『デカローグ7~10』、ラストを飾る『デカローグ10』の稽古場にお邪魔してまいりました。



竪山隼太さん、石母田史朗さん


この日は通し稽古。独特の緊張感が漂う中、開始のときを待ちます。
舞台中央で軽く身振り手振りを交えながら話していたのは、竪山隼太さんと石母田史朗さん。呼吸を合わせるようにいくつかの台詞を確かめた二人に、キャストからかけられた「ネタ合わせは終わった?」という言葉に笑い返す二人。すこし空気が緩みます。


『デカローグ10』は、父親が遺した切手をめぐってある兄弟に起こる騒動の顛末が“父のフラット(例の団地の一室)”、“ライブ会場”や“路上”など、シチュエーションを自在に変えながら描かれる疾走感あふれる物語。話のテンポ感が大事になってくるので、ネタ合わせにも頷けます。

物語を駆け抜けるのはイェジとアルトゥルの兄弟。兄は建築技師、弟はパンクバンドのボーカル、この一見したところ正反対の二人がたどり着くのは──


いよいよ通し稽古スタート。するとそこはライブ会場に!
『デカローグ1~6』をご覧になっている方にはおなじみの2階建てのシンプルな骨組みのセットが組まれた稽古場。これまで同様に各話で少しずつ構造や見せ方が違うのですが、何話か見ていると、あの団地に帰ってきたという安心感すら漂います。ここでは2階部分がライブ会場のステージにという仕掛け。



アルトゥルの絶唱!

挑発的な歌で聴衆を煽るアルトゥル。でもよく聴いてみると、『デカローグ』のモチーフとなる十戒を思わせる歌詞、細かいところにも秘かな繋がりが感じられるところが心憎い。アルトゥルを演じる竪山隼太さんのシャウトもすっかり堂に入っています。そして聴衆の中の場違いな空気を纏った男はアルトゥルの兄イェジ、石母田史朗さんが演じます。


2人が向かったのは、亡き父のフラット。鉄板で補強された何重にも施錠されたドア、その理由は──生前父親が集めた切手のため。ちなみにこの兄弟の父親は『デカローグ8』に登場する切手コレクター(大滝 寛さん)です。もちろん8を知らなくても楽しめますが、そこにも『デカローグ』の面白さが!



家中に「切手のため」の設備があることに驚き、「家族のため」には何もしなかった父への複雑な思いをのぞかせるイェジ。イェジと父は似ているところがあると話すアルトゥル。竪山さん演じる豪快なアルトゥルと石母田さん演じる実直なイェジ、久しぶりの再会なのに一言二言の応酬でテンポよく進む二人の会話やこれから起こることに対する喜怒哀楽の表現が兄弟だなと思わせるのです。




父の友人、ポーランド郵趣連合会長から伝えられたコレクションの価値に、兄弟の心境も変化していくのですが、その方向性がなんとも「この親にしてこの子あり」。いつの間にか二人もいっぱしの切手コレクターのような振舞いに! なんとも憎めない兄弟です。


かなりのスピード感で進む『デカローグ10』。突っ走る二人に関わる人々は、本当に出てくる人、出てくる人が雰囲気満点です。彼らが現れた理由、いったい何をたくらみ、何をもたらす人なのかは、ぜひ劇場で!



ブロムスキ(借金取り):伊達 暁さん


ポーランド郵趣連合会長:松本 亮さん


若い男:宮崎秋人さん


切手商:鈴木将一朗さん


ギタリスト(アルトゥルのバンド仲間):松本 亮さん


看護師:笠井日向さん


刑事:宮崎秋人さん


ハンカ:万里紗さん 撮影:宮川舞子


また、アパートの隣人として万里紗さん演じる『デカローグ9』の登場人物ハンカも登場します! ほかの話の登場人物たちの人生も続いていることを感じられる瞬間です。

こちらのみなさん、もうお気づきかと思いますが同じプログラムEの『デカローグ9』にも出演される俳優陣です。(石母田さんも9に別の役でご出演)
9に引き続き10にも総出演!というところが、なんだかシリーズ最後を飾る祝祭的な雰囲気を感じさせます。なんて贅沢!!



次々と現れる人物たちがどう関わり、僕らがどう変化していくかが見どころになりますが、対峙する俳優さんたちが素晴らしい方々なので、稽古場では伊達さんだ!次は秋人くんだ!と、次々に芝居の猛者たちと戦うような感覚です(笑)。(インタビュー記事(URLリンク)、竪山さんコメントより)

まさにこの言葉の通り、対峙する人々とのやり取りが純粋に観ていて楽しい! そしてくせ者たちにやり込められたり、やり返したり、手を組んだり……お芝居も見応え十分ですし、なにより物語が進むにつれて兄弟への愛おしさがどんどん増していきます。この日は代役でしたが、もちろん亀田佳明さんが演じる天使のような「男」も登場します。

また稽古場ならではの光景として、表(劇中)でも裏でも走り続ける竪山さん、石母田さんの姿が印象的でした。走り去って、すぐに次の出番、それも衣裳が変わったり、出はけの場所が変わったり休む間もなく動き続けます。それを舞台袖でサポートする衣裳部、シーンの変化に合わせたて小道具のセッティングを整える演出部、ライブ会場の迫力ある音や繊細なピアノの音色を響かせる音響、スタッフワークの緻密さもスピード感あふれる展開の舞台を支える重要な要素だということも改めて感じます。劇場では、ここに映像、照明の効果が加わり(ここまでの話でもとても印象的)、舞台版ならではの『デカローグ』となります。クシシュトフ・キェシロフスキが紡いだ物語の魅力とともに、演劇と観客の想像力を信じる小川絵梨子さんの演出による“舞台の表現”の面白さもしっかりと味わうことのできるこの機会をお見逃しなく。



清々しくて愛おしくて、なんだか泣けてくる。心に優しい光が差すような『デカローグ10』。この話のモチーフとなった戒律は「隣人の財産を欲してはならない」、そしてサブタイトルは「ある希望に関する物語」。そこココロは? ぜひ劇場で感じてください。




デカローグ10「ある希望に関する物語」
父の死により久しぶりに再会した兄弟は、父の遺品によって予期せぬ事件に巻き込まれていく。
パンクロックグループのリーダーである弟のアルトゥルは、コンサート会場にやってきた兄イェジから、疎遠になっていた父が亡くなったことを告げられる。父のフラットを訪れた兄弟は、彼が膨大な切手コレクションを残していたことを知る。父のコレクションに計り知れない価値があることを知った兄弟は次第にコレクションへの執着を募らせ、偏執的になっていく......。

【公演情報】
『デカローグ 1~10』
2024年4月13日(土)~7月15日(月・祝)@新国立劇場 小劇場
デカローグ1~4(プログラムA・B 交互上演):2024年4月13日(土)~5月6日(月・休)公演終了
デカローグ5~6(プログラムC):2024年5月18日(土)~6月2日(日)公演終了
デカローグ7~10(プログラムD・E交互上演):2024年6月22日(土)~7月15日(月・祝)

【原作】クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
【翻訳】久山宏一  【上演台本】須貝 英  【演出】小川絵梨子/上村聡史
【公式HP】https://www.nntt.jac.go.jp/play/dekalog/ 

6月22日(土)より開幕!
プログラムD(デカローグ7、デカローグ8)

デカローグ7 ある告白に関する物語
演出:上村聡史
出演:吉田美月喜、章平、津田真澄/大滝 寛、田中穂先、堀元宗一朗、
笹野美由紀、伊海実紗/安田世理・三井絢月(交互出演)/亀田佳明

デカローグ8 ある過去に関する物語
演出:上村聡史
出演:高田聖子、岡本 玲、大滝 寛/田中穂先、章平、堀元宗一朗、
笹野美由紀、伊海実紗/亀田佳明

プログラムE(デカローグ9、デカローグ10)

デカローグ9 ある孤独に関する物語
演出:小川絵梨子
出演:伊達 暁、万里紗、宮崎秋人/笠井日向、鈴木将一朗、
松本 亮、石母田史朗/亀田佳明

デカローグ10 ある希望に関する物語
演出:小川絵梨子
出演:竪山隼太、石母田史朗/鈴木将一朗、松本 亮、伊達 暁、
宮崎秋人、笠井日向、万里紗/亀田佳明

一部写真提供:新国立劇場
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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