「全てが電子化されていく世の中で、本物の、動物的な「生」を演じる俳優のエネルギー。一つひとつの場面は短いのですが、それを作り出していく俳優のエネルギーを感じてもらえたら」(大竹さん) エディット・ピアフが亡くなって55年となる今年、パム・ジュムス作、栗山民也演出、大竹しのぶ主演の舞台『ピアフ』が4度目の上演!シアタークリエでの初日を前に行われた会見でのコメント、ゲネプロの様子をレポートいたします。

左より)彩輝なおさん、大竹しのぶさん、梅沢昌代さん
初日前会見には、初演からご出演の3人の女性が!「女3人で、男どもしっかりしろやーという感じでお稽古してきました(笑)」
大竹さんが言うと“男ども”という言葉もチャーミングに響きます♪
観る度に心を揺さぶられる作品。全身全霊でピアフの人生を体現する大竹さん、そして彼女の波乱に満ちた人生を彩る人々を演じるみなさんの芝居の力に、4度目となる今回も圧倒されました。ご出演は、初演から不動の女性3人に加え、同じく初演から作品を支える辻萬長さん、前回、2016年の公演よりご出演の川久保拓司さん、大田翔さん。今回初出演の、LE VELVETSの宮原浩暢さん、上遠野太洸さん、上原理生さん、駿河太郎さんが新しい風を送ります。

ピアフが見出した歌手シャルル・アズナブール(宮原浩暢さん)
またとない好条件のツアーのチャンスを前にしたアズナブールを突き放すピアフ、それもまた彼女の愛の形。

晩年、ピアフに献身的に寄り添い、看取った夫テオ・サラポ(上遠野太洸さん)
ピアフの髪をテオが優しく整えてあげるシーンは、激動の彼女の人生のつかの間の安らぎ。
お酒や麻薬に体を蝕まれながらも、決して歌うことをやめなかったエディット・ピアフ。彼女はいつも愛を求め、愛を与えていた。その人生のいくつかの場面が、短く表現され、それが連なるような構造を持つ作品。その一つひとつがドラマティックで印象的、シャンソンが3分のドラマと言われることに通じるような観劇体験です。

ボクサーのマルセル・セルダン(駿河太郎さん)との悲恋も決して長いシーンではないのですが、大きな印象を残します。このシーンが美しければ美しいほど、その喪失感の大きさが……。

「今は、これから始まるゲネプロのことで頭がいっぱい。とにかく1日1日。梅ちゃんが言ってくれた言葉ですが、『演劇に命をかけるまではできないけど、命を削るぐらいのことはやっているね』本当にそんな感じ」(大竹さん)

♪愛の讃歌
キャストひと言コメント。梅沢さんが演じるピアフの友人トワーヌはハチャメチャな若き日からボロボロになった晩年までピアフと関わった女性。互いを戦友と呼び合う大竹さんと梅沢さんの信頼感が役にもこれでもかと表れています。いい時も、悪い時も、変わらぬ友トワーヌに拍手!ピアフを道端からナイトクラブへ引き上げたパパことルイ・ルプレの辻さん。ピアフが心から甘えることのできる人間の大きさ、そしてチャーミングな人柄が辻さんにピッタリです。あるシーンで思い切りはしゃぎまくる辻さんも見どころ!彩輝さんは、初演から変わらぬマレーネ・ディートリッヒとピアフの秘書マドレーヌの演じ分け、何度観ても同じ人とは……?!です。
宮原さんのシャルルは王道(それだけにメチャメチャ切ない)!さらに序盤の強盗団の鋭い目つき、危険な香りもお見逃しなく。上遠野さんはその透明感でピアフの寂しい晩年を美しく見せます。二人で歌うデュエットも素敵♪ 川久保さんはマネージャーのルイ・バリエの初老の芝居が絶品!彼自身の生まれのことを言われたときのなんとも言えないあの表情……。イヴ・モンタンを演じ、歌う大田さんの芝居もイイ!素直な、ともすればちょっと野暮ったい青年がピアフに歌の才能を見出されたことで変化していくシンデレラ・ボーイのキラメキ!
上原さんはオランピア劇場支配人など、歌唱場面はないのですが、その美声を堪能。独特の怪しい響きで、同じアナウンスを繰り返す滑稽さに人生の悲喜劇を感じさせます。駿河さんはこれまでの濃厚な印象のセルダンのイメージを一新。幼き日の孤独をその胸にしっかりと抱きながら、力強く誠実で軽やかに生きる男。本当に一瞬のシーンですが、ピアフが深く深く愛したセルダンに説得力を与えます。そして随所で活躍する万里紗さんは声がイイ!!
(まるでピアフという小舟を揺らす波のように、みなさんはここで触れた役以外にも様々な役を担い、彼女の人生ドラマを次のシーンへと運びます。時に、荒波、時に凪のように優しく…)「人を愛する。人として基本的なことが詰まった愛の物語です。ピアフの歌の力強さ。そして戦前・戦後という時代背景。全てが電子化されていく世の中で、本物の、動物的な「生」を演じる俳優のエネルギー。一つひとつの場面は短いのですが、それを作り出していく俳優のエネルギーを感じてもらえたら」(大竹さん)
「これまで、この作品を観たお客様にエネルギーをもらったと言っていただくことが多かったので、今回もいいエネルギーをお渡しできればと思います」(梅沢さん)
「栗山さんの『動物的な人間の生き様、人生をそれぞれに背負っていることを大切にしたら魂が伝わる』という言葉に集約されていると思います」(彩輝さん) また、SHINOBU avec PIAF2018-19プロジェクトとして、本舞台のほかにも、「SHINOBU avec PIAF」と題し大竹さんによるビアフ楽曲初の音源化となるアルバムリリース、コンサートが開催されます!
ピアフ楽曲の魅力について──
「ピアフの歌は色あせない、今も、みんなに愛されている。悲しい歌でも、力強いので、私も勇気をもらいます」(大竹さん)
舞台『ピアフ』は12月1日までシアタークリエにて上演、前売りは完売となっておりますが、東宝テレザーブ(03-3201-7777、9:30~17:30)にてキャンセル待ち受付中。
おけぴ取材班:chiaki(会見撮影・文)