8月1日に、デビュー20周年の記念日を迎えた
中川晃教さんにお話を伺いました。この夏、8月9日&21日に東京オペラシティ コンサートホールにて開催される
「中川晃教コンサート2021 20th Anniversary “Musical Season”(9日)/“Celebration of Music”(21日)」を中心に、シアタークリエでの
「中川晃教20th ANNEVERSARY CONCERT@シアタークリエ」、そして
20周年を迎えた現在の心境など中川さんの「これまで、今、これからの」がギュギュっと詰まったインタビュースタートです。
【二十歳を迎えても……まだまだ子供、これからも思春期です(笑)】
──毎年訪れる8月1日のデビュー記念日、今年は20周年という、よりスペシャルな記念日となりました。20周年を迎えた今の心境は。 たくさんの出会いと支えがあったからこそ歩んでくることができました。そんな素晴らしい出会いの数々が、この20年を実り多い年月にしてくれたと改めて感じています。
「出会い」の中には、創作の過程で出会う仲間との出会い、お客様やファンの方との出会い、大きく2つあります。作品やステージを通して出会った共演者や関係者のみなさんと切磋琢磨する時間が自分の存在を見つめ直す機会となり僕を成長させてくれました。そうして作り上げたものを受け取ってくださるのがお客様、ファンの方です。いつも楽しみに待っていてくださって、チケットをお求めいただき、劇場・会場へ足を運んでくれる。次はどんな世界を見せてくれるのか、中川晃教という存在に期待してくださる気持ち、それに僕はずっと支えられてきました。ファンの存在とともに歩んできた20年です。
──今年の8月1日は、「中川晃教Live Music Studio」(日テレプラス)の一挙放送もありましたが、中川さんご自身、特別な時間を持たれましたか。 その日は、9日のコンサートに向けた3日間に及ぶリハーサルの初日でした。僕は2日目からの参加を予定していましたが、オーケストラの音を聴きたいと思い、初日からスタジオに顔を出しました。今回のセットリストは僕にとっても懐かしい、思い出の塊のようなもの。オーケストラのみなさんが奏でる音楽、そのナンバーの歌詞を思い浮かべると「あの時はこんなことがあったな、大変だったな、楽しかったな」、そんな思いが溢れました。
これまでもデビュー記念日などを機に、自らの歩みを振り返る時間は持ってきましたが、こうして20年の歩みを目の当たりにすることで、大きな節目を迎えたことを改めて自覚しています。
20年、人間で言うと二十歳ですからね。実際、公私の“私”の中川晃教が二十歳を迎えたときより、“公”としてシンガーソングライターでミュージカル俳優の中川晃教の20周年のほうが20年の重みを実感しています。だからこそ、良かったことも悪かったこともまとめて肯定できる自分がいます。少し余裕ができたのかな(笑)。オーケストラの音を聴いた時に感じたことは、思い出や感傷に浸るのとはまた違う感覚。経験したこと、その事実が変わることはありませんが、それを過剰に美化することなく、事実を直視しながら、おおらかに受け止められるようになったことは、20年諦めず、投げ出さずにやってきてよかったなと思う瞬間でもありました。
──先ほどおっしゃったように、エンターテイナー中川晃教さんとして迎える二十歳の誕生日、それまでには幼少期も思春期もあっての今ですよね。 いやぁ、大人になれているのかどうか……まだまだ子供、これからも思春期です(笑)。
【エンターテイナー中川晃教の実態⁉】
──オペラシティ コンサートホールでの2つのコンサートについて伺います。ひとつはミュージカル楽曲に特化した“Musical Season”(9日)、そしてオリジナル楽曲で構成される“Celebration of Music”(21日)です。 先ほどお話したように、どちらのバージョンもファンの方と共に歩んできたことを表すセットリストになっています。まず、“Musical Season”について、実は中川晃教としては、ミュージカルコンサートは今年初めて行いますが、20年を2時間にというところで、楽曲を絞り込むのが本当に大変でした。また、ミュージカル楽曲の魅力を最大限に味わっていただけるように物語性も生まれるような構成にしました。時折MCもはさみますが、思い出を語り出したら終わらなくなりそうなので、ちゃんと思いをまとめて臨もうと思います(笑)。
──中には久しぶりに歌われる楽曲もあると思います。再構築していく過程で感じることは。 例えば「ウリセスソング」、これはMichael Nyman Band Concert Tour 2006 with Akinori Nakagawaコンサートで世界初演した、変拍子が作り出す世界観が美しい大好きな楽曲です。そして翌2007年の『エレンディラ』という作品の中で歌いました。拍子もめまぐるしく変わっていくトリッキーな楽曲で、当時、音楽監督から学んだこと、アプローチ方法を台本や楽譜に書き込んでいました。それを手掛かりにして、今回のコンサートの指揮者・井村誠貴さんやオーケストラのみなさんにどのような楽曲なのかを伝えながら作っています。
それは「ウリセスソング」に限らず、一つの完成された作品の中から一曲を取り出す時、実際の公演に参加されていない奏者の方と作品のこと、楽曲のことを丁寧に共有しギャップを埋めていくことは簡単ではありません。でもそれによって演奏は驚くほど変化し、どの曲も僕自身も楽しみなクオリティになっています。演出家のいないコンサートなので、そこはこれまでのコンサートと違いますね。
──その作業はミュージカルコンサートの方向性を左右するとも言えます。 一曲一曲が僕の歴史であり、お客様にとっても思い出のある楽曲たち。みなさんの中にある当時の記憶を呼び起こし、その舞台を見ていないという方には追体験でしていただくために、ただ歌うだけでなく、その楽曲が持つ世界観や物語性を届けたいと思うんです。そうやって僕の20年を共有する時間になればと思っています。
一方で、オリジナル楽曲で構成された“Celebration of Music”は、僕が信頼するミュージシャンの方と刺激を与え合いながら中川晃教の世界を形にしていく作業をしています。リハーサルで生まれたものを育みながら本番でみなさんに届ける、それはミュージカルも音楽活動も共通しています。でも、その過程は全然違うところもあり、楽しいです。
──楽しみながら、誠実にコンサートを作っていく。そこにお客様との信頼関係が生まれるのですね。 自分の中ではいつも手探りなんです。最終的には自分が培ってきたものすべてで体当たりするしかない。でも、そこでみなさんの心を掴むことに自信が持てるようになった自分もいます。それは僕一人の力ではなく、これまでやってきた作品、コンサートの経験がそうさせてくれているのです。
──当たり前のことなのですが、コンサートのタイトルには「中川晃教」という名前を冠したものがほとんどです。改めて、その重責はいかばかりかと思います。 ミュージカルなどの演劇作品では「作品タイトル」があり、その一部を担うのが僕らの仕事です。それとコンサートでの「中川晃教」が同等かというと、またちょっと違うのですが、それぞれに責任をもって取り組んでいます。
ただ、僕のコンサート、中川晃教という看板にお客様が何を求めるのかは常に考えています。経験を積み重ねる中で、作り上げられてきた現在の形、それすらも完成形ではなく変化していくもの。
シンガーソングライターとしてピアノを弾きながら歌う、「高音を特長とした男性R&Bシンガー」という肩書で世に出たことで、僕自身それを突き詰めていくことがゴールなのだと思っていたところもありました。でも、そこからミュージカルに出会い、自分の音楽性も広がりを持ちました。デビュー当時は、ミュージカルとシンガーソングライターの“二足の草鞋”と言われることが多く、音楽と舞台が別々の世界ととらえられていました。でも、僕はそこに違和感をもっていたんです。自分の中ではその二つが一つになっていく可能性を感じていたから。そしてそれがエンターテイナー中川晃教なのだと。
だから音楽活動ではオリジナルも日本の歌謡曲も、洋楽も、ミュージカル楽曲も歌うのが中川晃教の実態(笑)。20年、試行錯誤を繰り返しながら取り組んできたことでお客様ともその認識を共有できていると思っています。これからも、この先に待ち受けている経験を糧にした変化、成長を恐れずに中川晃教コンサートを届けていきたいと思っています。
【中川晃教の時間、みなさんとの歩みはこれからも続く】
──今回のコンサートで新たな試みとして、ダンサーの中川賢(なかがわさとし)さんがご出演されます。 賢くんとは2004年の『himself』で出会いました。ハムレットをモチーフにした作品で、そこで僕がハムレット、彼がホレイショー、親友役で、劇中の関係さながらに仲良くなりました。その後、公立劇場専属舞踊団新潟市りゅーとぴあ「Noism1」での活動を経て、今は東京を拠点に活動されている才能あふれるダンサーです。
賢くんは僕の中での青春のような存在。20周年のコンサートに出演していただけることをとても嬉しく思っています。でもそういった個人的な思いだけで、二人のコラボレーションをお客様にお見せするのは違うと思うんです。その大切な思いは僕自身の中に留めて、新たな表現としてお届けしたいと思います。
僕はもともとダンサーの方とのコラボレーションはすごく好きなんです。でも、自分のコンサートではこれまで試みることはありませんでした。それは自分の音楽・歌とダンスという身体表現がマリアージュすることでどんな魅力が生まれるのか、何が生まれるのかがなかなか見えていなかったから。だからなかなか手を出せなかったとも言えます。でも、20周年を迎えたことで、歌を届ける+アルファに挑戦したいと思いました。それがお客様にどう映るのか、楽しみです。
──ちなみに同じ中川姓ですが……。 親戚とかじゃないです。でも僕がこの業界で初めて出会った中川さんです(笑)。
──また、オペラシティのコンサートに先立ち、8月7日、8日には日比谷シアタークリエでのコンサートも開催されます。 このような機会をいただけたことをうれしく思います。山田和也さんの演出で、これまでに東宝さんでやってきた作品に特化したコンサートになります。コーラスには『ジャージー・ボーイズ』で出会った、大音智海くん、山野靖博くん、石川新太くん、僕が愛してやまない三人が揃います。これもシアタークリエが結んでくれたご縁ですね。
山田和也さんはミュージカルコンサートや山口祐一郎さんのトークショー『My Story-素敵な仲間たち-』で演出を受けていますが、作品でご一緒したのは、シアタークリエで上演されたミュージカル『ファースト・デート』一つだけなんです。『ファースト・デート』は、僕にとって初めて挑むブロードウェイ発のコメディミュージカルということでプレッシャーも感じていましたが、和也さんに導かれ、また、たくさんのことを教えていただきました。共演者も新妻聖子さん、藤岡正明さん、昆夏美さん、古川雄大くん、未来優希さん、そして今井清隆さんというメンバーで、すごく楽しかったんですよね。またやりたいなと素直に思える、ひとつのターニングポイントにもなっているのがこの作品であり、和也さんとの出会いです。ですので、今回のコンサートの演出をお引き受けいただき、本当に感謝していますし、またご一緒できるように頑張ろうという意欲がわいてきます。
──では、最後にコンサートを楽しみにされているみなさんへメッセージを。 みなさんの日常にはさまざまな形で音楽があると思います。ただ、コンサートホールで聴くオーケストラが奏でる音楽には特別なものがあると感じています。非日常の空間に身を置き、そこで聴く音楽が心の栄養になり、来てよかったと思っていただけるものにしたいと思っています。また、現在、コンサートホールや劇場は、ホールのみなさんや足を運んでくださるお客様の感染予防などに対する心遣いがあってなんとか扉を開けることができています。この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。
20年を振り返ると語りつくせないほどの思いが溢れますが、僕はそのすべてを歌に込めてみなさんに届けたいと思います。それが中川晃教だなって。みなさんと20年を共有する時間が特別なものになるようなコンサートにしますので、その瞬間にしか味わうことのできないものを一緒に体感してください。また、今の状況下で会場に足を運ぶことを控えるという決断をされた方もたくさんいらっしゃると思いますが、中川晃教の時間、みなさんとの歩みはこれからも続きます。またきっとお会いできます。その日を楽しみにしていてください。
──素敵なお話をありがとうございました。改めまして、20周年おめでとうございます!
おけぴ取材班:chiaki(撮影・インタビュー・文)監修:おけぴ管理人