ミュージカル『ナビレラ』GPレポート~ミュージカルならではの表現で味わう~

“ナビレラ”、韓国語でナビは蝶、ナビレラは蝶のように羽ばたく。そのタイトル通り、軽やかで優しく美しい作品の日本初演がシアタークリエにて大好評上演中!(作品紹介&初日前囲み取材の模様はこちらから)

プロのバレエダンサーを目指す青年と定年退職後に夢だったバレエに挑戦する老人の出会いが、世界をやさしく色づけるようなミュージカル『ナビレラ』公演をご紹介いたします。




才能あるダンサーながらスランプに陥っている青年イ・チェロク。バイトに励む等身大の青年の苦悩に沈み、ひとたび踊り出すと光輝くスター性を放つのは三浦宏規さん。幼少のころから鍛錬したバレエの技術、魅力を増す情感豊かな歌唱はもちろんのこと、母との約束、父との確執、友との決裂……複雑なバックグラウンドのチェロクの内面的な成長をリアルに見せます。乗りに乗っている三浦さんと、三浦さんの持ち味が十二分に活かされる作品との幸せな出会いに、舞台ファンの一人としてなんだか嬉しくなってきます。




一方、定年を迎え残りの人生を考え始めたシム・ドクチュルは親友の葬儀の帰り道、チェロクが踊る姿に心を奪われる。しょんぼりした背中を見せるドクチュルが、バレエという夢を追うことでどんどん輝いていく過程を川平慈英さんが時にコミカルに表現。ドクチュルの笑顔が人を幸せにしていきます。



バレエ団の門を叩くも、はじめは相手にされなかったドクチュル。チェロクのマネージャーを兼ねることで入団を認められ、チェロクはドクチュルにバレエを教え、ドクチュルはチェロクに長い人生経験から得たものを分け与え、夢を見る力の素晴らしさをその身で証明する。その姿にチェロクは踊ることの喜びを再発見。決して交わることのなかった二人の人生が、「バレエ」をきっかけに徐々にかけがえのないバディになっていく。


2人を取り巻く人々は──



チェロクのかつてのサッカー仲間ソンチョルを演じるのは瀧澤 翼さん。屈折したソンチョルもドクチュルと出会い、関わることで変化していく。夢に真っ直ぐに突き進む人がいれば、夢に破れた人もいる。物語が社会の縮図になっています。そんな素直になれないソンチョルがチェロクとの本来の関係性を取り戻す過程がなんとも微笑ましいのです。

こちらはドクチュルの家族。はじめは「おじいちゃんがバレエ?」と驚き、恥ずかしいから、怪我をするからと必死で止める家族でしたが、ドクチュルの熱意と次第にイキイキとしていく姿を目の当たりにすることでドクチュルの挑戦を認めていく。そこから見えるのはドクチュルの父としての来し方。家族のため、懸命に生きてきたからこそ、家族もそれぞれの形で愛情をもってドクチュルと接するのです。


ドクチュルの家に招かれ、妻ブンイの手料理でもてなされるチェロク


「ちゃんと食べている?」韓国のお母さんらしい温かさと包容力の溢れる岡まゆみさんのブンイです。



真っ先に父ドクチュルの挑戦を応援するのは次男のソングァン。なぜなら、父がいつもそうしてくれたから。出るところは出て、引くところは引く、狩野英孝さんが絶妙な緩急でソングァンを立ち上げます。


堅実な長男ソンサンを演じるのはオレノグラフィティさん。ソンサンを悪者に描くのではなく、愛ゆえの行動だとしっかりと感じさせるオレノさんのお芝居です。ソンサンの娘でドクチュルの孫娘ヘジンには井上音生さん(青山なぎささんとのWキャスト)。家族が大好きな、太陽のような明るさを持ったヘジンは家族のムードメーカー。



バレエ団を率いる団長ムン・ギョングクには舘形比呂一さん。隠し切れないスターダンサーのオーラで説得力抜群!



バレエ団の仲間たちはじめ、いくつもの役を演じ分けるアンサンブルキャストのみなさんも、歌に踊りにお芝居に大活躍です!




チェロクとドクチュルの夢への道のりは決して平坦ではなく、いくつもの困難が立ちはだかります。互いを支え合い、立ち向かっていく二人。バレエを愛した二人の物語は多くの観客の心を潤します。また、物語の強さ同様に感情を増幅させる音楽の力も感じる本作、繰り返されるメロディラインやキャストの力強い歌声はもちろん、歌に入るまでのイントロ、その最初の数音で心を持っていかれます。舞台上で汗をかき、涙し、笑い合う……ミュージカルならではの表現で“ナビレラ”の物語を届けます。


ドクチュルの夢に向かうエネルギーからたくさんの勇気をもらうのはチェロクだけではありません。観客もまた、劇場を出るころには背筋が伸び、(観劇直後は、涙で視界が……ではありますが)世界がクリアに見えてきます。これは若きバレエダンサーが才能を開花させる奇跡の物語でもありながら、そこで描かれるのは夢、老い、病、家族などわたしたちが人生のあらゆる局面で出会う出来事でもあります。そしてなにより「好き」なことへの情熱。広い世代のお客様それぞれの視点で楽しめ、忘れられない作品になることでしょう。

ナビレラ、蝶のように羽ばたく──
その瞬間をぜひ劇場で味わいましょう。



ポスタービジュアル、イントロ、そして「チビすけ」の言葉、一瞬で心を掴む仕掛けがあふれるミュージカル『ナビレラ』。WEB漫画、韓国でのミュージカル化、ドラマ化と旋風を巻き起こしてきた物語、日本初演も観客を魅了しています!

あらすじ
一流のバレエダンサーを目指すイ・チェロクは才能を持ちながらも、自身を取り巻く厳しい現実に将来を見出せず、スランプに陥っていた。一方、郵便配達員として家族のため長年働いたシム・ドクチュルは定年を迎え、残りの人生を考え始める。

ある日、ドクチュルはダンススタジオを通りかかり、そこでチェロクが踊る姿に心を奪われる。ドクチュルは子どもの頃バレエダンサーに憧れていたが、家庭は貧しく、実現できる環境ではなかったのだ。かつて諦めた夢に挑戦しようと、チェロクが踊っていたスタジオを訪ね、バレエのレッスンを受けたいと伝えるが、チェロクは相手にしない。それでも熱心に通い続けるドクチュルを見たバレエスタジオの団長から、チェロクはドクチュルのバレエの指導者になるよう、そしてドクチュルはチェロクのマネージャーになるよう、言い渡される。

こうして、若者と老人、一見奇妙な2人のバレエレッスンが始まった──。


ミュージカル『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』
2024年5月18日(土)~6月8日(土) @日比谷シアタークリエ

<スタッフ>
上演台本・演出 桑原裕子
原作「ナビレラ」 作:HUN, JIMMY
オリジナル台本・作詞 パク・ヘリム
作曲 キム・ヒョウン
オリジナル・プロダクション ソウル芸術団

<キャスト>
イ・チェロク:三浦宏規 シム・ドクチュル:川平慈英

ドクチュルの妻:岡まゆみ
ドクチュルの次男、TVプロデューサー:狩野英孝
ドクチュルの長男、会社員:オレノグラフィティ
チェロクの元サッカー仲間:瀧澤 翼
ドクチュルの孫娘:青山なぎさ/井上音生(W キャスト)
バレエ団長:舘形比呂一

久保貫太郎
市川絵美 岩﨑巧馬 岡山玲奈 河西茉祐 古賀雄大 政田洋平 舞夏 山田美貴

作品公式サイト: https://www.tohostage.com/navillera/

おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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