2015年の初演から、何組ものチームによって繰り返し上演されているTipTapオリジナルミュージカル『Play a Life 』に、この春、新しいチームが誕生しました。
非常勤講師として高校で世界史を教える夫に岸祐二さん、その妻に彩吹真央さん。夫が担当教員を務めることになった教育実習生に平川めぐみさん。3人と1匹の猫が織りなす人生の物語をレポートいたします。

写真左より)平川めぐみさん、彩吹真央さん、岸祐二さん
青を基調とした背景、懐かしい“学校の机と椅子”を組み合わせたセット。この空間で、とっても個人的な物語が、無限のスケールで描かれます。

夫婦の何気ない会話
劇中、二人の出会い~結婚のエピソードが描かれます。そのきっかけはお互いに“ロビン・ウィリアムズ”が好き、映画『今を生きる』が好きということ。残り1冊のパンフレットを同時に手に取るという、ドラマティックな出会い、のちの夫になる男(岸さん)からの思わぬ提案に対する、のちの妻(彩吹さん)の「なんで?」という反応、その間というかトーンが絶妙でした(笑)。そんな何気ない会話……、二人の歴史の積み重ねが描かれます。
かつて役者を志していた夫。妻は『今を生きる』に憧れ教師になるも、どうやら教師を辞めてしまったらしい。そして、夫は非常勤講師に。二人に何があったのか。
ここでキャストのみなさんの印象を!

世界史の先生、随所で感じたのは「ロマンチストなんだろうな~」ということ!
岸さん演じる夫は、映画マニアの香り漂う歴史の先生。ひとたび映画の話になるとヒートアップ!圧倒的な歌声で届けられる♪Movie Study~世界史を学ぶなら映画でしょ!というロックなナンバー!を岸さんがロックスターのように歌い上げる!~ では、観客を生徒に見立て、コール&レスポンスで盛り上がりました。この日の生徒たちもなかなかのツワモノぞろいで、みごとな一体感!でも、平川さん演じる実習生には……ちょっとこの指導教官はハズレかも。なんて思われがち(笑)。

好きな映画は『今を生きる』。教育実習生の言葉に、夫の記憶が甦る
物語を突き動かす力のある歌とお芝居!
その平川さんは、溌剌とし、若さあふれる実習生をさわやかに演じます。夫婦の問題にけっこう突っ込んでいく若者を自然に受け入れられるのは……序盤で見せるちょっと小心者な可愛さや一生懸命さ、そこで実習生のキャラクタラーに魅了されるからでしょう。素敵な教え子です。

物思いにふける妻
彩吹真央さんが演じる妻は、実は、実習生の小学校の担任。彼女に大きな影響を与えた恩師なのです。たおやかで、知的な先生だったんだろうな、これは憧れてしまうよね~と、説得力十分。でも、なんだかちょっと憂い顔。彩吹さんの佇まいや歌声がかもし出す、儚さや美しさが、そんな“今”の彼女にぴったりなのです。そうかと思えば回想シーンでは、活発なところも見せ、最後には強さも……とても芝居の幅の要求されるキャラクターです。

教育実習生を触媒のようにして、夫婦の関係が浮かび上がります。
そうして物語の核心へ……。そこはまたの上演の機会を楽しみにしていただくとして。
ある場面、舞台上に突然訪れる闇。そこに燈るひとつの灯り。やがて再び明るさを取り戻した世界へ。その心理描写、表現から受け取った感覚は忘れ難いものです。登場人物の葛藤を、全身を使って苦しみもがく姿を目に焼き付けるような芝居でなく、暗闇の中で空気を震わせるような、エネルギーの芝居で伝える。そしてそれは体感として伝わり、客席にいながらにして、その人物の内面と向き合うことになるのです。
そうして明転。目の前にあるのは同じ景色のはずなのに、あら不思議!なんだか少し違って見えるのです。これは、これまでよりはやや大きな劇場空間だったものの、それでも密な空間を作り出していたからこそ。そこで生きている人から発せられる感情をダイレクトに受け止めることができる幸せが心にあふれました。
そして、♪今を生きよ~う~!!物語を彩る音楽もとても素敵!スケールも音域も、なんというか、縦にも横にも幅広いといった印象。ときに舞台上から観客を飲みこむように迫り来る、また、次の瞬間にはそっと心に寄り添う。そんなもう一人の出演者ともいうべき、ピアノ演奏者は本作の作曲者でもある小澤時史さん。観劇後も、歌が自然に口をついて出るのは、やはり歌詞と音楽がピタリとマッチしているから。これはオリジナルミュージカルの魅力・強みですね!!
「世界史」「今を生きる」「猫」そして「Play a Life」……、観劇後は作品を形成するひとつひとつのピースがしっかりとハマって一枚の絵になるような感覚が残りました。
(ちなみに彩吹真央さんご自身は大変な猫好きとか!!)
これからも各地で上演を重ねていくであろう『Play a Life』。夫婦の数だけ、チームの数だけ、違う絵になる。それはまた、その日の生徒にもよって変わるかもしない。生身の人間が演じて、生身の人間が受け取る、そんなやりとり。だからこそ感じられるその時限りの「絵」を観に、描きに、また劇場に足を運びたくなる作品です。
~過去の上演記録(TipTap HPより)~
▼2015年12月11日~14日 初演
JOY JOY STATION
黒猫:小林遼介、池谷祐子、平川めぐみ
白猫:丹宗立峰、木村花代、田中里佳
▼2016年11月16日~21日 再演
すみだパークスタジオ倉
黒猫:上野聖太、麻尋えりか、吉田萌美
青猫:広瀬友祐、塩月綾香、嘉悦恵都
白猫:原慎一郎、木村花代、田中里佳
演奏:小澤時史、安喰千尋
▼2017年11月21日 東京プレビュー公演
R'sアートコート
染谷洸太、水野貴以、吉田萌美
演奏:小澤時史
▼2018年1月6、7日 青森公演
青森県立美術館(シアター)
赤りんご組:原慎一郎、木村花代、田中里佳
青りんご組:染谷洸太、水野貴以、吉田萌美
演奏:小澤時史
▼2018年3月4日 浜松公演
space-K
神田恭兵、池谷祐子、田中里佳
演奏:小澤時史
舞台写真提供:TipTap
おけぴ取材班:chiaki 監修:おけぴ管理人