新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』ニキヤ役:廣川みくりさん、ガムザッティ役:直塚美穂さん対談




4月27日、新国立劇場オペラパレスにて開幕する新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』にご出演される、ニキヤ役:廣川みくりさん、ガムザッティ役:直塚美穂さん。リハーサル開始から1週間ほど、まだまだ模索中と語りながらも、素敵なロールデビューになると予感させる役への確かな分析力をのぞかせるお二人。これからも数々の作品での競演が期待されるおけぴ観劇レポ初登場のお二人のスペシャル対談をお届けします。これまでの歩みも好対照、タイプの違うお二人の、息ぴったり、心弾むお話に頬が緩みっぱなしでした!



廣川みくりさん、直塚美穂さん

物語
インドの寺院に仕える舞姫ニキヤはラジャー(王侯)に仕える若い隊長ソロルと恋仲である。ニキヤに思いを寄せる大僧正はニキヤを手に入れようと機会をうかがっている。一方、ソロルが仕える王の娘ガムザッティはソロルとの結婚を望み、王の命にそむくことが出来ないソロルは心ならずも結婚を承諾してしまう──



【『ラ・バヤデール』の二人の女性】

──廣川さんは舞姫ニキヤ、直塚さんは王の娘ガムザッティを演じます。共にソロルを愛する二人の女性、今の時点での、それぞれの人物像は。

直塚:
ガムザッティは悪女で強い女性という印象をお持ちの方も多いかと思いますが、私はニキヤのほうが断然強いと思っています。純粋にソロルが好きで、ただただ彼との結婚を望むガムザッティは、外側は王の娘、絶対的な地位という鎧で覆われているものの、内面はニキヤの出現に心が崩れてしまうような脆さのあるお嬢様だと捉えています。

廣川:
私もガムザッティはガラスのハートのイメージがあります。ただ登場するときの雰囲気がどうしても強い女性という印象を与えるよね。

直塚:
強い女性という面も確かにあるからね。この役は踊る人によっていろんな解釈、作り方ができる役。私自身も昨日と今日で感じることも変わっています。ここからリハーサルを重ねる中でどうなっていくのか楽しみですし、本番でそれをお客様がどう受け取ってくださるかも楽しみにしています。ニキヤはどう?




廣川:
私自身は割とガムザッティに肩入れしてしまうところがあるので、そこに流されないようにニキヤに向き合っています。ニキヤは、ある種、少女漫画の悲劇のヒロインのようだと感じています。清楚で美しく、本能的に惹かれ合うソロルと秘密の恋を共有しているのですが、それを失ったときに彼女の中の頑固さや決して諦めないプライドが増大化していく。一途にソロルを愛するが故に、二人の愛を邪魔するガムザッティに刃を向けたり、結婚式に乗り込んだり、現代の感覚でとらえると狂気じみた行動をとってしまう。

直塚:
一線を超えるというか……。

廣川さん:
でも、それを悪にはしたくなくて。狂おしいほどの愛に突き進む姿が、ニキヤが人を惹きつけるところだと思うので、時代背景や物語の力を借りてしっかりとニキヤの愛を表現したいと思います。

──現実から飛躍した悲劇のヒロインというのも物語の特権であり、そこに人々が惹かれることも納得です。これは本作に限らず、バレエ作品の物語あるあるかもしれません。

直塚:
現実と離れているからこその楽しさは、演じていても感じます。

廣川:
無理に、今の自分の価値観と重ね合わせるのではなく、ニキヤとしてどう生きるかを考えています。あれほどまでに愛情が暴走するのは、ソロルしか見えないという盲目さにあり、そこに身分の違いによる理不尽さ、嫉妬、悲しみが加わり、ニキヤの中で「どうしてなの?」が繰り返されることで自己陶酔の域に達してしまう。それは2幕のニキヤのソロにも表れていています。あれがパ・ド・ドゥならまた印象も変わるのですが、ソロなのでニキヤの大きな感情がすべて一方的にソロルへ向かう。その感情をしっかりと表現したいと思います。同時に、どんなに狂気じみても、深い悲しみの淵でもニキヤは美しいというところも大切に演じたいと思います。

──ガムザッティもまた、ニキヤの命を奪おうします。




直塚:
ニキヤとソロルの心が通じ合っていると知り、ニキヤを呼びつけたガムザッティは、そこで彼女の顔を見て、その美しさに敗北感を覚える。それでもソロルを手に入れたいから地位や権力を使ってでもものにする。ソロルの気持ちがわかっていながらも、というところに切なさを感じます。命を奪うというのも、ただ気に入らないからではなく、身を引くように告げたにも関わらずニキヤが諦めないためにやむを得ずそうなったと思いたいんです。根っからの悪女ではないと。

──バチバチなキャットファイトを繰り広げるお二人が、役作りを楽しそうに語っている様子が面白いです。キャットファイトでのマイムはどのように表現しようと考えていますか。



廣川:
リハーサルでは、はじめは台詞を言いながらマイムをすることで感情と動きを身体に馴染ませています。まるで演劇! バレエミストレスの湯川麻美子さんが台詞付きで教えてくださるのですが、すべてのマイムに意味があることがよくわかり「なるほど!」の連続です。

──例えば?

直塚:
ガムザッティが「宮殿にある物、あれも、これも、ソロルも……私のものよ」と指差すところの動きを台詞に合わせて行うことで、より明確に伝わるマイムになっていきました。

廣川:
動きの裏付けがあることでマイムの説得力が増します。湯川さんのマイムを見ていると思わず「その通りでございます」とひれ伏したくなるような感情が自然に出てくるんです。ニキヤとしてはそれに負けない強さを出さないといけないのですが。また、リハーサルでは経験豊かな先輩方の踊りやマイムから様々な感情表現を学んでいます。たくさんのヒントをいただけることは本当にありがたいことです。

直塚:
本当に! みなさんの表現を参考にしながら、自分たちはどうしたいかをみくりちゃんと話し合っています。音楽の中で、ちょっとした間の取り方でもニュアンスや伝わるものが変わってくるのがとても面白いです。

──直塚さんは、廣川さんと小野絢子さん、二人のニキヤと対峙しますが、違いは。

直塚:
まだ一回ずつしか合わせていないのですが、絢子さんのニキヤに対しては、ガムザッティとして上の立場にいなくてはならないという思いが強く働くためか、お姉さん然とした感じをあえて出す“クール系”。みくりちゃんとは同じ目線で感情むきだしにぶつかる“必死系”でした。それはあくまでも今感じていることです。ここからもあまり決めずに、感じたことを大事にしたいと思っています。

──“必死系”のお二人、今回も白熱した戦いになりそうですね。

廣川:
昨日、リハーサルをしたのですがとっても楽しかったです!

直塚:
私も!ここからさらに自由に表現できるようになると思うとますます楽しみです!

──そんな二人の女性に愛されるソロルとは。

お二人:
でも、一番悪いのはソロルだよね!

廣川:
それもバレエあるあるですが(笑)。
私たちが組むソロルは(井澤)駿さんですが、駿さんご自身はとても穏やかな方なので、私たちの激しさに……。

直塚:
振り回されているかも(笑)。私は駿さんと(福岡)雄大さんのソロルと踊ります。つい先日振り合わせをした後、いきなりシーンを通したのですがお二人の高いサポート技術に支えられて一度も止まることなく通せました。ここからも助けていただきながら演技を深めることに集中できる、ありがたいです!

──踊りの面での目標や大切にされていることは。



廣川:
ニキヤは曲調的にも陽気で快活な曲はなく、美しいしっとりとしたイメージの踊り。テクニック面でも難しいところがたくさんあるので、しっかりと踊りを磨いていきたいと思います。一方で、1幕、2幕での心の動きが3幕の「影の王国」に繋がっていくというような、全幕だからこそ生まれる感情の変化が踊りを作ってくれるところには、私自身、期待しています。全体を通してなにが生まれるのか楽しみです。



直塚:
ガムザッティは派手なテクニックが多いのでそこが見どころになります。でも、私自身はテクニックより感情表現を重視したいと思っています。テクニックはすべてできて当たり前、そこに、足を上げるなら、なにを伝えるために上げるのか、ガムザッティとして考え、表現したい。そのために日々のクラスレッスンを大切にしています!

廣川:
美穂ちゃんは、テクニックはなんの心配もいらない方です。

直塚:
いやいや、見せ場の前にはやはりテクニックを意識してしまうので、そこでもガムザッティとして舞台上に居たい。基礎がしっかりしていればできるはず!と信じて、今回は一つ上を目指したいと思っています。


【ここが素敵】

──ちなみにお二人が思う、お互いの素敵なところは。



直塚:
私はみくりちゃんの指先が好き!バーレッスンのときも私の好きなラインだなと見ています。指先のなんとも言えない力の入り方、抜け方が好き!

廣川:
そんなところが!

──マニアックですね(笑)。

直塚:
舞台上での素晴らしさはご覧いただけばわかるので、私独自のポイントを挙げました(笑)。

廣川:
では私からも。美穂ちゃんはバレエ大好き人間、だからこそ周りの人のことも客観的に見て、いいところを積極的に取り入れようと努力する人です。そんなダンサーとしての姿勢が素晴らしく、しかもそこに一切の雑念がない! 純粋で嘘がない、心から信頼できるダンサーです。

直塚:
ありがとうございます。初耳です。

廣川:
つい最近、そこだ!と気づきました(笑)。

──ここで少しバレエから離れますが、直塚さんは今日お召しのTシャツからも……。



直塚:
ドジャースの大谷翔平選手の活躍に力をもらっています!推しています! でも、推し活と言えばみくりちゃんです。本当に多趣味で!



廣川:
趣味のお話を始めると止まりませんよ(笑)。私は演劇やミュージカルが大好きで、中でも声優、俳優、歌手として活動されている宮野真守さんを学生時代から応援しています。エンターテイナーとしての在り方、宮野さんのような舞台づくりができれば演者も観客も幸せだろうと見ています。ジャンルは異なっても、そんな宮野さんの舞台に対する姿勢、舞台に生きるという精神からたくさんのことを学んでいます。もはや神格化しています(笑)。

※おけぴ注:廣川さんの舞台愛はかなり割愛してお届けしました(笑)。その熱量もボリュームも共感しかない!ことをご報告します。


【歩んできた道のり】

──お二人がバレエを始めたきっかけは。

廣川:
音楽に触れさせたかった母の意向で最初はピアノを習ったのですが、座っているのが苦手で(笑)。オペラ好きな両親の影響で、家で歌ったり踊ったり、もともと音楽に合わせて踊ることが好きだったこともあり、身体を動かすバレエ教室のほうが向いているのではないかと連れていかれたのがきっかけです。

直塚:
私は通っていた幼稚園にあったバレエ教室で、4歳ぐらいのときに始めました。私も、もともと音楽が聴こえると自然に踊っているようなこどもだったらしく、バレエはすぐに好きになりました。

──プロのダンサーを目指そうと思ったのは?

廣川:
小学6年生ぐらいのときに、バレエの先生に「バレエでお金を稼ぐ」と宣言したらしいです(笑)。こどもでしたので、私自身はそこまで深くは考えていなかったかと思いますが、それをきっかけに周囲がオーディション情報を集めてくれて、それに導かれるようにバレエダンサーとして生きていく自覚が芽生えてきました。研修所に入所した際には、牧(阿佐美)先生に、「色(個性)がないからこそ何色にも染まることができる」と言っていただいたことをよく覚えています。自分なりに精一杯努力はしてきましたが、ご縁に恵まれて「好き」だけで続けてこられた環境には感謝しています。



直塚:
私はみくりちゃんとは反対に自分で切り拓いてきたタイプです。中学1年生の頃にボリショイ・バレエ団の来日公演を観たのがきっかけです。ロシアバレエの素晴らしさに圧倒され、バレエダンサーになろう!そのためにロシアへ行こう!と決意しました。そこから自分でいろいろと調べて、国内開催でロシアのワガノワ・バレエ・アカデミーに繋がるオーディションにエントリーし、受けに行き、留学が決まりました。そして通っていた高校もやめてロシアへ行きました。

廣川:
新国立劇場の「バレエ・アステラス」でご一緒したときから美穂ちゃんは踊りも志も私のはるか先を行くダンサーでしたので、今、一緒に仕事をしていることが不思議なくらいです。でも、話をしてみると普通に同じ世代の仲間、今では大切な友人です。

新国立劇場 バレエ・アステラス:世界各国で活躍する日本人ダンサーとそのパートナーが出演するガラ公演。新国立劇場バレエ研修所も出演し、さらにワガノワ・バレエ・アカデミーなど世界の著名なバレエ学校も迎え、互いに交流することで高め合い、熱い競演が繰り広げられます。2019年にお二人は参加されています。

──歩んできた道のりのまったく違うお二人ですが、これから共にたくさんの作品を作り上げ、また、新国立劇場バレエ団の一員としてますます活躍されていくかと思います。今後の目標は。

直塚:
今はもうガムザッティに集中! 大きな目標より、目の前の作品や役に全力を尽くしていくだけです。



廣川:
同感です。コールドから主役まで、それぞれにプレッシャーがあり、家に帰ってからも踊りのことを考え始めると不安やプレッシャーに押しつぶされそうになります。そこから逃れるために趣味の時間を持っているところもあります。バレエに向き合う時間は、必死に次の作品に取り組み、それを乗り越えた先、やり遂げた先に成長がある。結果はあくまでも副産物であり、その過程が自分を作るということが身に染みてわかってきました。

直塚:
プロとしては当然、常に高みを目指しますが、そこにはすぐには行けない。一歩ずつ地道に積み上げていくことが大切だと、このバレエ団にいると改めて強く感じます。バレエダンサーとしての在り方についても、バレエはなくても人は生活できるものだからこそ、公演を観てくださったお客様に「明日からも頑張ろう」「観てよかった」と思ってもらえる元気の源になるような舞台を作っていきたいと思っています。

廣川:
『ラ・バヤデール』のリハーサルは始まったばかりでまだまだ手探りですが、美穂ちゃんとの演技はきっと面白いものになると妙な自信があります(笑)。私たちが感じているこの楽しさを、お客様にも感じていただけると嬉しいです。

直塚:
私たちはお互い初役、奇をてらうというわけではありませんが、新しい『ラ・バヤデール』になると思います。

廣川:
いい意味でね! お客様にはバレエ団が一丸となってお届けするクオリティの高い舞台芸術『ラ・バヤデール』をお楽しみいただくと共に、私たちのロールデビューも見守っていただければ嬉しいです。

お二人:
劇場でお待ちしています!



公演は4月27日より新国立劇場オペラパレスにて開幕!
夢の場の3段の九十九折スロープをゆっくりと舞い降りる精霊たちのコール・ド・バレエ、清楚で内に秘めた強さを持つ舞姫ニキヤと恋人で王に仕える騎士ソロル、ソロルを慕う王の娘ガムザッティ、そしてニキヤを憎からず思う大僧正らが織りなすドラマ。古典バレエの様式美を存分に堪能できる演出、スピード感あふれるスペクタクルな舞台展開、豪華でオリエンタルな深い色彩の舞台美術で届けられる舞姫と戦士の悲恋をお楽しみください。



新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』速水渉悟さんインタビュー
【公演情報】
新国立劇場『ラ・バヤデール』
2024年4月27日(土)~5月5日(日・祝)@オペラパレス

振付:マリウス・プティパ
演出・改訂振付:牧 阿佐美
音楽:レオン・ミンクス
編曲:ジョン・ランチベリー
美術・衣裳:アリステア・リヴィングストン
照明:アリステア・リヴィングストン/磯野 睦

ニキヤ:小野絢子 柴山紗帆 米沢 唯 廣川みくり
ソロル:井澤 駿 速水渉悟 福岡雄大 渡邊峻郁
ガムザッティ:木村優里 直塚美穂

出演スケジュールについては公式サイトをご覧ください

指揮:アレクセイ・バクラン
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

※やむを得ない事情により出演者等が変更になる場合がございます

公演サイト:https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/labayadere/

リハーサル写真提供:新国立劇場バレエ団
おけぴ取材班:chiaki(インタビュー・撮影)監修:おけぴ管理人

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