1990年公開の大ヒット映画『ゴースト/ニューヨークの幻』をベースに誕生したミュージカル『ゴースト』、日本版オリジナル演出でシアタークリエにて本邦初上演中!
アカデミー賞脚本賞を受賞した映画版と同じブルース・ジョエル・ルービンによる脚本・歌詞、デイヴ・スチュワートとグレン・バラードによる音楽・歌詞、さらに演出を手掛けるのは名匠ダレン・ヤップ(『ミス・サイゴン』ほか)。
キャストは主人公サムに浦井健治さん、その恋人モリーには咲妃みゆさんと秋元才加さんがWキャストで挑みます。また、サムの友人カールを演じるのは平間壮一さん、物語のキーパーソン霊媒師のオダ・メイには森公美子さん。ミュージカルファンにはおなじみのみなさんながら、実はお初!というフレッシュな顔合わせで届けられる『ゴースト』。ゲネプロ(咲妃さんバージョン)を観劇し、この物語が“不朽”であることを実感。オーソドックスで現代的な物語は、深い愛、不器用な愛、勝者と敗者を生み出す社会・経済の息苦しさから、ひょんなことから生まれる絆まで、多面的な楽しみ方のできる、この夏おススメの一作です。
幕開きは幸せな恋人たちの日常。新生活のワクワクとラブラブがあふれています。
誠実な銀行員サム(浦井健治さん)と恋人で芸術家のモリー(咲妃みゆさん/秋元才加さん)はニューヨーク・ブルックリンに居を構え、新しい生活をスタートさせる。
『ゴースト』といえば!の ♪アンチェインド・メロディももちろん登場します!
♪今ここで
ニューヨーク・ブルックリンの新居での生活を始めるサム(浦井健治さん)とモリー(咲妃みゆさん)
幸せそうなふたりを見つめるサムの同僚銀行員で親友のカール(平間壮一さん)
♪聞かせて愛の言葉を
それまで避けてきた「結婚」を口にするモリー、戸惑うサム。「愛している」の言葉をなかなか口にしないサムへの不安もぶつけるモリー。サムが口にするDitto(同じく)も映画をご覧になった方には、もうおなじみですね。
そんな恋人たちに突然の悲劇が。愛の巣への帰路、暴漢に襲われ突然命を絶たれるサム。すれ違う人をすり抜け、ものに触れることもできない、気づくと彼はゴーストとして街をさまよっていたのです。
それぞれのやり残したことのために、天国でも地獄でもなく、地上にとどまっているゴーストたち。救急病院でサムは先輩ゴースト(ひのあらたさん)に出会う。
♪信じる準備は?
サムは霊媒師のオダ・メイのもとを訪れる。この人物、死者と交信できるというのは真っ赤な嘘で、実は詐欺師だが……。
♪ウィズ・ユー
サムの死を受け入れることのできないモリーの深い悲しみ
「苦労を振り返るより、ここまであっという間の充実したお稽古期間でした」と話す咲妃さんは宝塚歌劇団を卒業してから初めてのミュージカル出演。
「歌に気持ちを乗せた表現がまだまだでしたが、だんだんと楽しさも感じられるようになってきました」と語ったのは秋元さん。ともにシアタークリエ初登場となるタイプの違う2人のモリー、どちらも気になります!
咲妃さんは悲しみの深さ、そこから一歩を踏み出そうとする強さと振り幅の広い感情をとても丁寧に演じられています。
サムの声を届けにモリーのもとへやってくるオダ・メイだが、モリーは信じるわけもなく……。だが、オダ・メイの発するあるひと言がモリーの心を動かす。
「天使にラブソングを」に続いてウーピー・ゴールドバーグの当たり役にミュージカルバージョンで挑むのは森公美子さん。
「オダ・メイはぶっきらぼうでね(笑)。霊媒師というより詐欺師ですので、初めて霊と会話してビビりつつ、次第に彼の思いに同化し、変化していきます」とお話されたように、サムとオダ・メイ丁々発止のやり取り、奇妙な友情も作品のアクセントになっています。
映画のエッセンスは大切に残しながらも、日本版、ミュージカル版としての見どころにあふれた展開。繰り広げられるのは“ゴースト”という超常現象なのですが、描かれるのは、ちょっと不器用なサム、凛としたモリー、忙しさの中でも人生をエンジョイするサムとカールの友情など、等身大のキャラクターたちの日常。皆、普通の人々なのです。さらに演技巧者なみなさんなので、舞台はニューヨークながら、すんなりと物語に入ることができます。 そして、日常は尊くなんと儚いものか。そんなことを感じました。
そこにスパイシーに登場するド派手なオダ・メイ!彼女のシーンは華やかでショーアップされているのですが、彼女もまた非常に人間味あふれる女性です。
会見で浦井さんがおっしゃった大掛かりなセットも、変幻自在に情景を変えるシンプルでスタイリッシュな構造。余計なものが削ぎ落とされたセット、そこに照明効果も相まって、人間ドラマがくっきりと浮き上がります。1幕ラストのサム、モリー、カールの三重唱では、それぞれの思いが幾重にも積み上げられ、劇場空間が「思い」で満たされ2幕への期待が十分に膨らみました。『ゴースト』日本版は、芝居は繊細、骨格・構造は直球で王道です。期待が大きく膨らんだ2幕もそれを裏切らない展開。物語は急展開を迎えるので、ここから先のレポ&お写真は未見の方は閲覧注意?!というわけで、公演情報を挟み、
【第2幕レポート】へ続く!(下にスクロールしてください)
【第2幕レポート】
自らを殺した男の本当の狙いは…。死の真相を探るサムは恋人モリーの身に危険が迫ることも知る。ゴーストとなっても彼女を護りたい! その思いがサムを駆り立てます。
見つめることしかできない……サムのもどかしさが募ります。
親友カールが差し伸べる手は救いの手か魔の手か……
地下鉄のゴースト(西川大貴さん)、彼の力の源は強い強い“怒り”のエネルギー。
サムを撃ち殺した男(松田岳さん)の矛先は……
オダ・メイの手を借り真相を暴くサム。2幕中盤は痛快バディストーリーがテンポよく描かれます。
台本にはカールのバックグラウンドはあまり描かれていなかったと話す平間さん。
「役作りの過程では、自分の中で“やるしかなかった状況”をつくりました。単なる悪い人ではない。なぜカールは……と考えていただくのも面白い見方だと思います」とのこと。その行為は決して許されることではないのですが、カールの弱さも、また、人間のもつ一面。
また、お稽古エピソードとして浦井さんは
「壮ちゃんとすごく仲良くなった。カール(の役作り)で悩んでいたとき、稽古場で捨てられた子鹿のように座っていた。そのときにすごくシンパシーを感じ、友情がうまれました。それがあるから、舞台上でも(親友同士として)自然に居られます」とお話されました。
サムとカールの関係では、思わず手を差し伸べるサム……ふたりのラストシーンがとても興味深く映りました。
ちなみに会見では「子鹿って捨てる?子犬ならわかるけど(笑)」と森さんから鋭いツッコミが!爆笑会見となりました。
やがて訪れる奇跡の瞬間!嘘から出たまこと?!オダ・メイの変化も作品の大きな見どころ!
比較的冷静にレポートしてまいりましたが、まぁ、なんと言いますか、浦井サムの魅力が炸裂!その眼差しの柔らかさには観ているこちらが溶けそうに。口には出さなかったけれど、その愛の強さにもキュン。そして、平間カールの屈折
と肉体美に図らずもクラクラ。自立している女性像を嫌味なく体現、それでも耐えられないほどの喪失感に立ち向かう咲妃モリーを全力応援。モリクミさんのもつ人間性の大きさにシンクロしていくオダ・メイに拍手。と、心はかなり大忙しでした!
各キャラクターのブレなさと、数々のエピソードが巧みに絡み合う展開に唸る。昔映画を観たけれど、今、ミュージカルで『ゴースト』?!とほんのちょっと懐疑的だった自分に喝でございます。王道作品の王道たる魅力にじっくりたっぷり浸れる作品です!
東京公演は8月31日(金)までシアタークリエにて、その後、9月8日(土)から10日(月)までサンケイホールブリーゼ(大阪)、9月15日(土)&16日(日)は久留米シティプラザ ザ・グランドホール(福岡)、22日(土)&23日(日)に刈谷市総合文化センター アイリス(愛知)にて上演です。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人