11月16日、Bunkamuraオーチャードホールでのソロコンサート
『I Sing~Wonderful Wonder~』を控えた中川晃教さんにお話を伺いました。ツアー公演中のミュージカル『ジャージー・ボーイズ』のお話や韓国のミュージカルフェスティバルへご出演された話もたっぷり、韓国から届きたてのオフィシャル写真とともにご紹介!
──2013年からスタートした『I Sing』シリーズ、今回は副題が~Wonderful Wonder~です。そこに込めた思いは。 このコンサートは36歳になった自分が初めて開くソロコンサート。そこへのワクワク、ドキドキからWonderful Wonderと付けました。さらに、先日、韓国のミュージカルフェスティバルに参加したときの思いも加わり、ますますWonderful Wonderなコンサートになると確信しています。韓国での経験についてはのちほどお話しするとして、まずは改めて僕の中での『I Sing』の位置づけからお話させてください。
『I Sing』は、文字通り歌うことで中川晃教という人間を知っていただく、そんなコンサートです。僕自身にとっては、これまでに経験したことすべてを含んだ“今の中川晃教”と向き合い、それを歌で表現し、お客様に楽しんでいただく、大切な場所です。
──今の中川晃教さんが歌で表現される、素敵な時間になりそうですね。 今の僕は、シンガーソングライターとしてだけでなく、ミュージカル俳優としても活動しています。そこで『ジャージー・ボーイズ』という作品、フランキー・ヴァリという役に出会いました。その出会いがもたらしてくれたものはトワングという歌唱法を用いた“新しい声”です。そして、今まさにツアー公演中の再演では、進化し続けることで充実感を得ています。それはシンガー中川晃教にとっても大きな財産。そのタイミングで、ご縁があって韓国のスターライト・ミュージカル・フェスティバルへ出演することになりました。
──日本のミュージカル俳優として初めて同フェスに参加されたのが中川さんです。いかがでしたか?中川さんとセクシー同顔クラブの(チェ・ミンチョルさん、キム・デジョンさん、チェ・スヒョンさん、チョ・スンチャンさん)競演!このポーズ、もうお分かりですね!
トークコーナーでは劇団四季でも活躍されたカン・テウルさんが通訳を務めてくださいました!
一番印象的だったのは、ミュージカル『フランケンシュタイン』の楽曲♪偉大な生命創造の歴史が始まる を歌うと言ったときの、お客様の熱狂。そこに素直に感動したんです。タイトルを告げたとき、イントロが流れたとき、歌ったときの反応を体感し、自分の中なにかが変わった。
2日間で1万人の観客、その規模のミュージカルフェスってどんなものなのだろう、という思いで降り立った仁川空港。事前に抱いていたイメージは、いい意味で覆されました。まず、あらゆる層のミュージカル俳優のレベルが高い。そして、ただ出てきて歌うだけでなく、ミュージカルのハイライトも観られるし、僕も共演したセクシー同顔クラブのように、それぞれにミュージカルでキャリアを積んだ俳優たちがユニットを組むことでお客さまをより楽しませるような人気企画もある。そんなサービス精神も、全編にわたり感じることができました。
ステージ上だけでなく、バックステージでの交流も大変刺激的でした。僕と同じように海外からのゲストとして出演したチョン・ナヨンさんやミュージカル『ボディーガード』のナンバーなどを歌われたチョン・ソナさんとお話をするなかで強く感じたのは、ここは開かれたステージだということ。あの場所から世界へと繋がっているような。だから、あのステージ上には、解き放たれている中川晃教がいました。そして、「これってWonderful Wonder だな!」と。あの時に感じた思いや熱気は、今こうして『I Sing~Wonderful Wonder~』の準備を進めていても、とても大きな影響を与えています。
チョン・ナヨンさん
オランダ生まれのナヨンさんは、2013年にロンドン・ウエストエンドの『レ・ミゼラブル』にてファンテーヌを演じ、その後、韓国公演でも同役を務められました。この日も♪ Dreamed a Dreamや、やはりご出演された『王様と私』のタプチムのナンバー♪My Lord And Master をご披露されました。圧巻!
キム・グンナさんと『モーツァルト!』より♪愛していればわかりあえる
──たくさんの聴衆の中に交じってその様子を拝見しておりましたが、中川さんの歌唱中、みなさんが集中されている静寂、歌いだしたときのどよめきや興奮などを体感しました。反応が率直ですよね。 フェスの会場からホテルに戻る途中でも、話しかけてくださる方、手を振ってくださる方がいらっしゃいました。お母さんと娘さんと思われる女性二人は「僕が歌い出した瞬間に、天から歌声が降り注いできたような感じがした」と言ってくださり、家族連れの方は日本語で「『フランケンシュタイン』の歌は韓国の人より好みだった」と言ってくださいました。それは僕の中でちょっとビックリだったのですが(笑)。でも、すごくうれしかったですね。
お客さんだけでなく、共にフェスを作りあげた制作陣の反応もうれしいものでした。観客のみなさんの反応……実際にどうだったのだろうという不安も確かにありました。でも、指揮・音楽監督のキム・ムンジョン先生に、終演後「楽しかったです!ありがとうございます」とお礼に伺うと、韓国サイドのみなさんからも「すごくよかった!これからも一緒に創作していきましょう」という、大変ありがたい言葉をいただきました。
ここだけの話。事前に、キム先生はとても厳しい方だと聞いていたんです。実際、リハーサルでもその様子は感じられ、ちょっとドキドキしていました。いよいよ僕の出番が来ると、『フランケンシュタイン』の♪偉大な~を隣で歌ってみてと言われました。あの曲は、韓国でも尋常でない難曲と言われているくらいなので、それを僕が日本語で歌うとなるとそれはとても大変なこと。すぐに先生の傍へ行き、歌いました。するとその歌声に熱心に耳を傾けてくださった先生が「OK、わかったわ!」と。フィーリングが合ったというか、一回のセッションでお互いに通じ合えたんです。歌、音楽というのは、こんなにも簡単に言葉の壁や、もっと言うと国境を超える力があるんだと再認識しました。
こうして韓国の地で僕の中で湧きあがってきた「世界を目指していいんだ!」という思い、それが僕が感じたWonderの正体! ミュージカルを書くということもそう、突拍子もないことのように思われがちだけど、そうじゃない。音楽で世に出た自分が、ミュージカルに出会い、ミュージカルを書きたいと思う。それは運命だと思えるんです。
そんなミュージカル、音楽に導かれて世界を目指す僕に力を!今はそんな意気込みです(笑)。
──ワクワクしますね。ここからは『I Sing』について、もう少し具体的に伺います。現在、セットリストなど構想中とのこと。 オープニングから前半にかけては、中川晃教というフィールドへみなさんを誘うような構成を考えています。ミュージカルが入口でも、音楽が入口でも、これがWonderful Wonderねと思ってもらえることが大事だなと思って。ポップシックあり、ミュージカルナンバーあり。『ジャージー・ボーイズ』からのナンバーですか?ある曲を弾き語りで披露しようと思っています(笑)。
──今の中川さんが集約されていますね。 まさにそう。そして、今の僕というと、もう一つ欠かせないのは日本の素晴らしい歌謡曲を歌い継ぐということ。今年、由紀さおりさんの、日本の素晴らしい歌を歌い継ぐ歌手を育てるという思いに僕がマッチしたようで、「こころの歌人たち」(NHK-BS)※という番組の司会に抜擢していただきました。スタンダードを歌う、そこでも実はミュージカルで身につけたトワングが活かされているんですよ。
※昭和、平成と日本の音楽を創り続けて来た作詞・作曲家たち「歌人」をクローズアップする番組。第1回目の「歌人」は、作曲家の都倉俊一さんでした。
そして、後半は、まさに今、書いている新曲や最近の楽曲でまだ音源化されていない曲を歌おうと思っています。今の物事のとらえ方、自分の中から湧き出る衝動、夢を追う原動力を歌に込めてお届けします。
──曲作りの中で感じるご自身の変化は。 10代でデビューした僕が、30代半ばを迎え、やはり書く曲は変わってきています。「愛」というのは変わらぬテーマですが、「家族」というワードも重さを増しています。今、プライベートがすごく充実しているんです。僕の周りの人がどんどん幸せになっていく。僕?恋人?結婚?そっちのほうは、全然、僕に順番が回ってこないんだよね(笑)。でも、いい感じ。
──満たされている。 『ジャージー・ボーイズ』のツアー公演、『岩谷時子メモリアルコンサート』のリハーサル、『I Sing』の準備、そして『銀河鉄道999シンフォニック・コンサート』のナレーションを務めた夜に、来年の公演が告知される。その合間に奇跡的に実現した韓国フェスへの出演……。一つひとつのピースが奇跡的なタイミングでハマっている感覚があります。一方で、曲作りは完全に一人の作業であり、プライベート空間。そこで感じる高揚感や充実感は、音楽に向き合っているからこそ感じられるもの。音楽が僕に幸せを与えてくれるんです。
そして、それをとことん表現できる場が『I Sing』なんです。
──本当に、音楽とともに走り続ける中川さんなんですね。たとえば『ジャージー・ボーイズ』初演、あれほどまでに高い評価を受け、燃え尽き症候群に陥るようなことはなかったですか。 初演の千穐楽には2年後の再演が決まっていた。その瞬間から、カンパニーの一人ひとりが「再演までにやるべきこと」を暗黙の了解のように胸に抱いたんです。再演の稽古場で、再会したとき、みんなが進化していた。そこに新しいメンバーも加わってさらに進化する、本当に稀有なカンパニーであり、作品です。
一緒に作った仲間、それはお客様も含めて、みんながいるから燃え尽きることはない。むしろ、まだまだです!
僕個人的なことで言うと、1年のレッスンで臨んだ初演では、フランキーの声に悔しさが残った。だから、初演が終わったときに、もう一度あの声を特訓し、今度は倍の時間2年かけて再演に挑みました。それによって、初演ではできていなかったことができている実感があります。あの声が、ようやく自分のものになった。そして、再演できる喜び、作品を大切に育てるということも改めて知ることができました。
──その上で、まだまだとおっしゃる。そのココロは。 トワングを自分のものにした。今度はそれをいかに歌にするか、もちろん今も追及していますが、さらなる高みを目指したい。だって、『ジャージー・ボーイズ』はミュージカルだから。その原動力の一つは全国ツアーで受け取った思いです。
ツアー序盤の、秋田や盛岡では、おじいちゃんおばあちゃんも2000人規模のホールに集まってくれ、立ち上がって楽しんでくれました。そのほとんどはオペラグラスも持たずに、そこにあるドラマ、そして音楽に身を委ねてくれた。ミュージカルというものを知らなくても、『ジャージー・ボーイズ』の音楽が生み出す高揚感が人の心を動かす。音楽が主役のミュージカルの強みを改めて感じました。
そして!そんな旅を経て進化した『ジャージー・ボーイズ』が凱旋するのが神奈川公演です。すでにご覧になっている方も、「知ってる~」と油断して座っていると、全然違う『ジャージー・ボーイズ』かもしれませんよ。各地でいただいたエネルギーを糧に、僕らが積み重ねてきたものお見せしますので、新鮮な気持ちでご覧いただければと思います。そんな客席の思いが、きっと僕らを七色に輝かせてくれるから! みんなで盛り上がろう(笑)!
──その前には『岩谷時子メモリアルコンサート』です。※ 宝塚OGのみなさんのもつ華やかさもあれば、おなじみの昭和の歌謡曲のよさ、ミュージカルビッグナンバーの盛り上がりもある。豪華コンサートです。
僕が歌うのは、贅沢なコーラス隊を率いたものから、僕が小学生の時に観たミュージカルの超有名ナンバーまで。いい曲なんですよ。さらにスタンダードナンバーもあります。ほかにも僕が歌う曲ではないのですが、昭和の歌謡曲にはトワングを用いて歌う曲が普通にあるんです。歌として表現する、このコンサートに出演することで新たな発見があり、とても勉強になる。本当に幸せなことです。
やっぱり僕にとって歌うことはなによりの幸せ!そんな中川晃教のとれたての思いが詰まった『I Sing~Wonderful Wonder~』、お楽しみに~!! ※『岩谷時子メモリアルコンサート』は11月7日に終了いたしました!中川さんが歌われたのは、♪雪が降る、♪スーパースター(ミュージカル『ジーザス・クライスト・スーパースター』より)を岡幸二郎さん、福井晶一さん、田代万里生さん、里アンナさん、綿引さやかさんとともに、♪アメリカン・ドリーム(ミュージカル『ミス・サイゴン』より)でした!ほかにも全員での歌唱、♪オーシャンゼリゼ、♪お嫁においで、♪サインはVなど、幅広い楽曲をご披露されました。このコンサートでも“歌い継いでいく”“歌い続ける”使命ということを感じましたね。
おけぴ取材班:chiaki(インタビュー・文・撮影) 監修:おけぴ管理人