お客様と舞台の安全を守る!劇場抗菌作業レポ~シアタークリエ~

 2020年、新型コロナ禍における演劇興行。各社、感染リスクを低減するために様々な感染対策を模索しながら上演を続けています。その試みのひとつとして、お客様、スタッフ、出演者といった劇場を訪れる人が接触する部分にコーティング剤「ウイルス侍」(開発協力者:株式会社W lab、販売元:東宝舞台株式会社)を低圧ガンで塗布する作業が行われました。より安全な舞台上演に向けた、シアタークリエでの作業の様子をご紹介いたします。

 劇場の灯を消さないための取り組み、その思いを知り、観客として私たちにできることは何かを改めて考える機会となりました。記事ラストの伊達支配人のコメントまで、ご一読いただけますと幸いです。



シアタークリエでの作業


帝国劇場での作業(提供写真)

 この秋、東京工業大学などの研究グループによって、酸化チタンと酸化銅を主成分とした光触媒が新型コロナウイルスを不活性化させることが明らかになったという研究成果が日刊工業新聞(9月29日付)で報道されました。この「ウイルス侍」も、同じく酸化チタンと酸化銅を主成分とした光触媒材料です。「ウイルス侍」を塗布した部分に光(光源は太陽光、室内の蛍光灯、LED照明など)が当たることで、そこに付着した菌やウイルスを無害なものへ分解、除去する。学校や病院、ホテル、飲食店などでの利用が期待されるこの技術を、帝国劇場とシアタークリエの感染対策のひとつとして用いることになったのです。これは演劇劇場としては初めての試みとなります。

 「光を照射して…といっても、劇場内って割と薄暗いよね」と思った方も安心! 若干暗いなと思われる場所でも効果が変わらないのが「ウイルス侍」なのです(回し者ではございません、事実です(笑))。また、その効果は大手自動車メーカーにおける摩耗耐久試験によって、研磨するなど故意に削り落とさない限り約2年にわたり持続することが検証されています。これは使用の状態によって変わってくるところでもありますので、今後、継続的にモニタリングされていくでしょう。

 ちなみに約一か月に及ぶ帝国劇場での試験施工を経て「ウイルス侍」の施工が決定したのですが、その過程は──。特定の座席、ロビーのソファ、手すりなどに本剤を塗布、噴霧することで、菌や汚れは施工後平均95%減、一か月経過の後も平均94%減という数値に基づき、この度の本格的な施工となったとのことです。

 では、実際の作業の様子を見てみましょう。解説はW labさんです!こちらはおなじみのシアタークリエ客席、1席あたり3分ほどの時間をかけて(単位面積当たりの噴霧量などから計算)丁寧に噴霧していきます。対象箇所の素材の特性によって「噴霧」と「手塗り」が使い分けられ、しっかりとウイルス侍を浸透させていきます。




起毛しているお座席には噴霧


後方席では木製部分に手塗り作業中


座席裏も

 客席だけでなく、ロビーや階段、ロッカーなど劇場内の人が触れるであろうことが予測されるあらゆる箇所に施工されています。お写真はありませんが、もちろんトイレも!





 こちらも大事!バックヤードの様子もご紹介。





 1席あたり3分、帝劇は1800席と思うと大変な作業ではありますが、現在は多くの劇場で公演毎に座席の消毒などを手作業で行っていることを考えると、その労力たるや……。この技術によってその負担が軽減されるのは素晴らしい!

 最後にシアタークリエ支配人の伊達学之(だて・たかゆき)さんのコメントをご紹介します。


【伊達支配人コメント】



シアタークリエ 伊達学之支配人

 シアタークリエでは7月以降、少しずつ公演を再開しており、現在、12月12日からの『オトコ・フタリ』に向けて準備を進めております。また、稽古場ではキャスト、スタッフのみなさまがマスク、フェイスガードを着用、手指消毒、毎日の検温はもちろんのこと、万が一、体調不良となった際の体制も整えた上で稽古に励んでおります。そんなキャストのみなさん、そしてお客様をお迎えするための取り組みについてお話させていただきます。



『オトコ・フタリ』稽古場の様子


浦井健治さん、山口祐一郎さん、保坂知寿さん、山田和也さん(演出)

 当劇場の600席という席数。通常は舞台との距離も近く、濃密な空間で贅沢な時間を過ごしていただけるという特長に繋がるのですが、現状では、地下にあるということも影響し、お客様が密閉感などの不安を感じられていることも事実です。そちらについては、開演前はもちろん、休憩時間も通常より長くとり扉を開けしっかりと換気しております。上演中につきましても、当劇場は文化庁のガイドラインで定められた一人当たりの換気量も十分にクリアする空調設備、換気機能を備えております。しかしながらウイルスは目に見えないモノ、不安のすべてを拭い去ることはできません。そこで、今回、ひとつでも安心材料になればと思い、帝劇での効果が実証された「ウイルス侍」を施工いたしました。

 また、手指消毒、検温、休憩時間などに楽しい気持ちをぐっと抑えて会話をお控えいただくなど、お客様のご協力なくして公演はできません。お客様同士の会話については、こちらが声を発することへのご不安もあると思いますので、出来る限りパネルなどで注意喚起を行っております。ただし場合によってはお声がけさせていただくこともございます。楽しい気持ちがトーンダウンしてしまう、厳しいと感じられるかもしれませんが、それも安全第一ということでご理解いただけると幸いです。まだまだ不安な日々ではありますが、みなさまのお力添えをいただきながら、劇場の灯を消さないよう努めてまいりたいと思います。





 先端技術と一人ひとりの努力を両輪に、誰も経験したことのない演劇の、劇場の危機を乗り越えていこう! そんな思いを新たにしました。そして、今回はウイルス対策として施工された「ウイルス侍」ですが、普通に抗菌、消臭などの衛生面で気になるポイントにも効果を発揮なのです! 劇場がより気持ちの良い空間となりますように!


【公演情報】
『オトコ・フタリ』
2020年12月12日~30日@日比谷シアタークリエ
2021年1月15日~17日@梅田芸術劇場シアタードラマシティ
2021年1月23日、24日@刈谷市総合文化センターアイリス

<スタッフ>
脚本:田渕久美子
演出:山田和也

<キャスト>
山口祐一郎 浦井健治 保坂知寿

<ものがたり>
物語はある画家のアトリエから始まる―――。
キャンバスに絵筆を走らせているのはその主、禅定寺ぜんじょうじ恭一郎きょういちろう(山口祐一郎)。
「先生、お茶が入りました」
その声がけに絵筆を止め、家政婦の中村なかむら好子よしこ(保坂知寿)が運んできた薔薇のお茶を口にする。
「ところで先生、こちらの作品にはいつおかかりになるんですか?」
好子の目線の先にはまっ白のキャンバスが置かれている。
「愛、ねぇ・・・」
女性には不自由しない恭一郎だが、“愛”をテーマに、と引き受けたこの作品にはなぜか取り掛かることができなかった。
そこには誰にも言えない、言ったところで信じてはもらえないだろうある理由があったのだ。
と、ドタバタとうるさい足音が彼の思考を遮る。
「禅定寺恭一郎さんですか?」
息を荒げながら一人の若者がアトリエに踏み込んでくる。
「須藤すどう冬馬とうま(浦井健治)と言います。僕は・・・母を探しに来たんです。母を出せ、今すぐに!」
訳が分からない恭一郎と好子、しかし冬馬と名乗る青年は怒りの表情を携えたまま、恭一郎をまっすぐ睨みつけるのだった―――

公演HPはこちらから


おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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