ジェイミーがやってきた! 英BBCで放送されたドキュメンタリー「Jamie; Drag Queen at 16」(実話)に基づいた、ドラァグクイーンになりたい16歳のジェイミー・ニューの物語をポップな音楽に乗せて描くミュージカル『ジェイミー』。ついに日本初演の幕が上がりました♪
まずは、こちらのおけぴ編集のダイジェスト動画をご覧ください。
ジェイミー・ニューには森崎ウィンさんと髙橋颯さん。真綿のようにソフトで艶やかな印象の森崎ジェイミー、壊れそうなガラス細工のような繊細な印象の髙橋ジェイミー。ともにそっと包んであげたくなるようなジェイミーが、これが自分だと真っ赤なハイヒールで凛と立つ。迷い、傷つき、励まされ──ジェイミーの歩みには、実話だからこその強さと今日性があるのです。
ジェイミー:森崎ウィンさん
ジェイミー:髙橋颯
ジェイミーはイギリス・シェフィールド
(かつて鉄の街として栄えたイングランド中部の工業都市、『フル・モンティ』の舞台でもあります)の公営住宅に母マーガレットと暮す高校生
(劇中ではイングランドの義務教育が始まる5歳から数えて11年生と呼ばれます)。父は家を出て行ってしまったものの、母の親友のレイが、この親子を支えます。
ジェイミーは子どものころから母親の服や靴を身に着けて遊ぶのが大好き。いつからかプロのパフォーマー、ドラァグクイーンになることを夢みている。常にジェイミーの理解者であるマーガレットは苦しい家計をやりくりして、ジェイミーの誕生日に真っ赤なハイヒールをプレゼントする。
マーガレット:安蘭けい ジェイミー:森崎ウィン
マーガレット:安蘭けい レイ:保坂知寿
マーガレット親子とレイの距離感がすごくいい!
母マーガレットを演じる安蘭けいさんは、お金も時間も心も、自分にはかけずにジェイミーのためにと生きている女性を好演。安蘭さんのお芝居や歌声の持つ強さと愛が、ともすれば共依存になりそうな関係を独立した個が支え合う関係を描き出します。そして、ジェイミーの背中を押し、マーガレットの子離れを自然に促すレイの存在も偉大。保坂知寿さんのもつカッコよさが全開です! 身近にいるカッコイイ大人の存在は大事。
カッコイイ大人といえば……、ジェイミーが足を踏み入れたドラァグクイーンドレスショップで出会う、ヒューゴやドラァグクイーン仲間のトレイ、ライカ、サンドラも忘れてはなりません。まさにジェイミーの強力な応援団!
ヒューゴ:石川禅 トレイ:吉野圭吾 サンドラ:今井清隆 ライカ:泉見洋平
トレイ:吉野圭吾 サンドラ:今井清隆 ライカ:泉見洋平 ジェイミー:森崎ウィン ロコ・シャネル:石川禅
自らの人生を自らの足で闊歩する彼らですが、そこに至るまでにはそれぞれが傷つき、選択をしてきた。その人生の重みを感じさせるのがベテランキャストのみなさんです。特にヒューゴ(伝説のドラァグクイーン“ロコシャネル”)役の石川禅さんの凄みと深みがスゴイ。含蓄MAX!生き様を見せつけて、ジェイミーに進むべき道を示す。こうして先輩たちに導かれ、ジェイミーは自らの道を歩み出すのです。ドラァグクイーンのみなさんのゴージャスさは写真や動画でももちろん伝わりますが、その真髄は、ぜひ生(劇場)で浴びてください!
プリティ:田村芽実 ジェイミー:森崎ウィン
ジェイミー:髙橋颯 プリティ:山口乃々華
ジェイミーの理解者は大人ばかりではありません。クラスメイトの親友プリティ、彼女はイスラム系移民でとても聡明な女性。彼女が、なぜ自分がヒシャブを被っているのかわかるかとジェイミーに問いかけるシーンは、ジェイミーだけでなく、多くの人に気づきを与えるでしょう。成績優秀な優等生というだけでなく、真の知性と美しさをもったプリティを演じるのは田村芽実さんと山口乃々華さん(Wキャスト)。お二人の透き通るような歌声、伸びやかな歌声がプリティというキャラクターに命を吹き込みます。
ジェイミー:森崎ウィン レイ:保坂知寿 マーガレット:安蘭けい ミス・ヘッジ:樋口麻美
ディーン:佐藤流司 ジェイミー:森崎ウィン
ディーン:矢部昌暉
もう一つの現実としてジェイミーを待ち受けるのは、進路指導といじめっ子。担任のミス・ヘッジは現実主義者、生活のための選択を迫り、いじめっ子
(スクールカーストの上位にいて、ジェイミーやプリティに突っかかってくる)のディーンは悪意に満ちた言葉をジェイミーにぶつけてくる。ディーンがいら立っているものの正体は。
こういった現実は、実は姿を変えて私たちの身の回りにも存在するもの。ジェイミーの話でありながら、現代を生きる私たちの物語でもあるのです。それゆえにディーンがジェイミーに浴びせる言葉に傷つく人もいるだろうし、後半でジェイミーがディーンに放つ言葉に心が痛む人もいるでしょう。そしてジェイミーもまた、父親の言葉に、母親の言葉に、先生の言葉に──、葛藤しながら大人になっていくのです。
小西詠斗 太田将熙 佐藤流司 川原一馬 MAOTO
田野優花 フランク莉奈 鈴木瑛美子 伊藤かの子
ジェイミーのクラスメイトたちも反応、変化も新鮮。
独自の価値観で認めるものは認める、若さのもつ柔軟性なのか、そこにへんなこだわりはない。
この作品はジェイミーがドラァグクイーンになるまでの道のりを描いた作品ではありません。その先にあるジェイミーが幾多の壁にぶち当たりながらも、周囲の支えもあって、自らの人生を歩み出すまでの成長物語。ドラァグクイーンの世界を目指すと聞くと、ややもすれば自分の生活とはかけ離れた世界を描いているように思われるかもしれません。でもポップなエンターテイメント性も備えた作品でありながらも、その芯にあるのは「自分」。それゆえに多くの現代を生きる観客の支持を集めるのでしょう。あなたの人生の主役はあなた。劇場を後にするころには、ジェイミーがそっとあなたの背中を押してくれるはず!
2021年夏、シンプルで力強いエネルギーにあふれる
ミュージカル『ジェイミー』がやってきた!のです。
ストーリー
主人公は16歳の高校生ジェイミー・ニュー。彼には一つの夢があった。
それはドラァグクイーンになること。そして高校のプロムに本来の“自分らしい”服装で参加すること。母親から真っ赤なヒールをプレゼントされたことをきっかけに夢に向かって強く突き進む思いを抱いたジェイミーだが、学校や周囲の保護者たちは猛反対。ジェイミーの夢を理解できない父との確執や周囲からの差別など、多くの困難を乗り越えながら、自分らしさを貫くジェイミーの姿に勇気と感動、そして幸せをもらえる、最高にハッピーなミュージカル!
舞台写真・映像提供:ホリプロ 撮影:田中亜紀
おけぴ取材班:chiaki(文)監修:おけぴ管理人