「シャンソンの女王」エディット・ピアフの半生を、大竹しのぶさんが16曲のシャンソンを歌いながら演じる舞台『ピアフ』。2011年の初演より数えて5演目となる公演が、2月24日、日比谷シアタークリエにて開幕。「ピアフが大竹しのぶに舞い降りた」と評されるほどの当たり役、主演の大竹さんと、ピアフを愛する男性陣がご登壇された会見の様子をレポートいたします。
(作品紹介やキャストコメントは
「『ピアフ』2022 製作発表レポート~孤独と愛との繰り返し~」もご覧ください♪)
──大竹さんにとって5度目の『ピアフ』が始まります。大竹さん) 5回目ということはあまり意識していません。でも、今回も栗山さんが新たに細かい演出をつけてくださっていますし、新しいキャストの方も一緒なので新鮮な気持ちでいます。
──共演のみなさんは初日を前にどのような心境ですか。
ピアフと最も熱い恋をしたボクサー、マルセル・セルダン:中河内雅貴さん
中河内さん) 自分たちにできることを信じて、栗山さんが求めていることを自分なりに解釈して表現できるように稽古を積んできました。これから始まる本番で、大竹さんともっともっときちんと芝居のキャッチボールができるように、千穐楽まで常に挑戦しながら臨んでいきたいと思います。

ピアフが育て、羽ばたいた歌手シャルル・アズナブール:上原理生さん
上原さん) 前回はブルーノを、今回はシャルル・アズナブールを演じます。役が変わることで物語の見え方も変わり、二回目ではあるのですがはじめてのような感覚です。はじめて参加するつもりで新鮮に最後まで演じていけたらいいなと思っています。

傷つき果てたピアフの人生の最後に訪れた天使といえる、20歳下の生涯最後の恋人テオ・サラポ:山崎大輝さん
山崎さん) 栗山さんは僕たちのそれぞれのお芝居を見て、それを前提とした演出してくださっていると感じました。最後まで挑戦し続けたいと思っています。

ピアフが見出す、フランスで最も偉大な歌手イヴ・モンタン:竹内將人さん
竹内さん) 僕にとっては挑戦、そのひと言に尽きます。挑戦して、栗山さんに助言をいただき、また挑戦する。博多座の大千穐楽まで、もっと芝居に、役に向き合って、自分の(心の)中で動いたものを素直に表現できるように取り組んでいきたいと思います。
──コロナ禍で、稽古もこれまでとは違うものになったと思いますが、いかがでしたか。 大竹さん) マスクを着けての稽古、そして稽古が終わったら即解散。そんな状況が2年。一緒にご飯を食べたり、飲みに行くことができないので、そこで人間関係を深めることができません。稽古場だけで、最初からオープンな気持ちで自分を出していかなくてはなりません。恥ずかしいとかぐずぐず言っている時間はない、最初からいきなりあなたが好きです、愛してくださいって。そのために無理やりにでも仲良く……無理やりじゃないけど(笑)。でも、そうやってお互いにしっかりと芝居で向き合うことで、こんなに仲良くなれる、信頼し合える、ひとつになれるということがわかりました。それができるのは、どんな時も私たちはいいものを作らなければならないという(共通の)思いがあるから。この状況でも来てくださる、チケットを買ってくださるみなさんに「やっぱり観に来てよかった」と思っていただけるものをお届けしたいと思っています。
──そんな大竹座長は共演者のみなさんからどう見えましたか。
大竹さん) 正直に言ってごらん(笑)。
山崎さん) 先ほどの大竹さんのお話にもあったように、こういう状況下なので、(人間関係も)ゼロからのスタートでした。大竹さんの「早く、ゼロからもっと上の段階に持っていこう」という気持ちに引っ張っていただきましたが、どうしても遠慮してしまうところもあったんです。そこを大竹さんのほうからぶち壊して(⁉笑)くださって。なんて器の大きな方なんだと思いながら、甘えながら、思い切り芝居できるようになりました。
竹内さん)(僕らが)ふとした瞬間に、不安そうな顔をしてしまうと、それに気づいてすごく優しく声をかけていただきました。本当にありがとうございます。
大竹さん) なんだかすごく年上のおばさんみたい、まあ、そうなんだけど(笑)。
上原さん) 今回集まったキャストの経験も様々、限られた時間の中でどうしてもうまくできないこともありました。そういう時に、しのぶさんがすっとそばに来て「できないことで落ち込む必要はない。気にしないで、みんなで博多座の大千穐楽まで一緒になって頑張っていこう」と声をかけてくださったことが印象的です。(座長としての姿勢を)行動で見せてくれる方です。
中河内さん) だから大竹さんが残って稽古されている時、自然と僕らも残って見届けてしまう。大竹さんの姿を見て、自分がやるべきことを見つけ、自発的に動く活力をいただきました。
──それは座長として、努めてそう振る舞ったのでしょうか。 大竹さん) それは一緒に芝居をして、芝居を見ていれば絶対にわかること。「今日、元気がないな」とか、「演出家にこう言われると落ち込むな」とか、私だからじゃなくて、みんなそれぞれわかるんです。それはやはり私たちは役者なので、(芝居を通して)人の心(の機微)を見て、感じることができる。そこにあるのは若い子(の芝居)を見てやろうとかではなく、いい芝居を作りたいということだけ。
私も、私が残って歌のお稽古をしているのをみんなが残って見てくれることが嬉しくて。そんなみんなから逆にエネルギーをもらっていました。そういう稽古場ってありそうでないので、嬉しかったです。
竹内さん) 僕も居残りが多くて(笑)。そんな時も、カンパニーのみなさんが残って見守って、本当にたくさんアドバイスをくださいました。ファミリー感の溢れるカンパニーです。
──大竹さんは、今回、博多座での大千穐楽で200回目となるそうです。大竹さん) 本当に回数は関係なくて、もう1回1回なんです!もちろん明日のチケットも、博多座のチケットも、それを買って楽しみに待ってくださっている方のために(全公演)駆け抜けたいと思ってはいますが、「200回を迎えたい」ということはまったく考えていません。
──では、201回とかは。
大竹さん) 明日のこともわからないんです(笑)! まずは今日のゲネがきちんとできるように、そして今日より明日って。チケット代に見合ったものをちゃんとお見せしたいと思います。
──博多にもメッセージを!大竹さん) 博多では美味しいものが食べたい!本当に博多に行く頃には、春になって、暖かくなって世界が元に戻って欲しい。博多座でイェーイとやりたいです!
──最後に大竹さんからひと言。大竹さん) こうしてピアフと再会し、新しいキャストのみなさんと出会うことでピアフの愛に対する思いをさらに深く知ることができました。愛って本当に素晴らしいと、私自身が改めて教えられました。そんなピアフの魂をカンパニー一丸となって届けたいと思います。
ものがたり
エディット・ピアフ──本名エディット・ガシオンはフランスの貧民街で生まれ、路上で歌いながら命をつないでいた。
ある日、ナイトクラブのオーナーがエディットに声をかける。
「そのでかい声、どこで手に入れた」
「騒がしい通りで歌っても、歌をきいてもらうためよ!」
“ピアフ”──“小さな雀”の愛称がついたエディットの愛の歌はたちまち評判となる。
華やかで順風満帆な人生にも見えたピアフだが、私生活では切実に愛を求めていた。
ピアフが見出し、愛を注ぎ、国民的歌手へと育てあげたイヴ・モンタン、シャルル・アズナブール。
ボクシング・チャンピオンのマルセル・セルダン、生涯最後の恋人となる若きテオ・サラポ……。
最愛の恋人を失った時も──病が身体と心を蝕んだ時も──エディット・ピアフは愛を求めて、マイクに向かい続けるのだった。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人