【感想ご紹介】
おけぴ会員のみなさんから寄せられた感想を、相葉裕樹さん&山寺宏一さんの舞台写真を交えてご紹介いたします。
(シングルキャスト、および水江建太さん、戸井勝海さんのお写真は感想に続く【ゲネプロレポート】に掲載しています)◆♪作劇の方向性がとても好みでした。オリジナルミュージカルなのだけど、熱量がいい感じで、パガニーニ、悪魔、パガニーニの母親、恋人、執事と、パガニーニを取り巻く人々の描き方もとても面白かったです。♪観劇前はテーマが難しそうに思いましたが、開演前のアナウンスでの説明と、前半のシーンで丁寧に語られていたのがとても分かりやすかったです。壮大な難しい楽曲を中川晃教さん初めベテランの方々が素晴らしい歌とお芝居で演じていらして引き込まれました。
♪相葉さんのパガニーニは1幕ラストの「やってやるぜ!」とスイッチが入ってからの全能感がまさに悪魔に魅入られた天才!ゾーンに入ったちょっと人間離れした演奏をダンスで再現。それでいて自宅ではあどけなさを出してくるので、不意打ちでハートを射抜かれます。油断できません。悪魔のヴァイオリニスト“パガニーニ”と一人の人間“ニコロ”の対比が鮮やかで、最後に一つになったとき……。その過程をドラマティックに演じます。♪パガニーニの水江さんはとにかく姿が美しく、悪魔が声をかけたくなるのもわかります(笑)。音楽へのあこがれ、自分の実力に対する不安、手に入れた力が借り物であり命を削るものと知りながら自らの音楽の力に引きずられていく揺れ動く心を丁寧に表現していました。そのパガニーニを心から愛し、それゆえにさらに孤独を深める女性を演じた青野さんの力量にも驚きました。無邪気で天真爛漫なキャラクターにぴったりの早川さんも可愛かったです。
♪中川さん演じるアムドゥスキアスの圧倒的な存在感、多彩な歌声とお芝居に引き込まれました。山寺さんの安心するお芝居と表情豊かな歌声、そしてちょっぴり息抜きできるお茶目なエッセンスがとても楽しかったです!♪香寿たつきさんの歌、素晴らしかった! 瞳がキラキラ輝いて子供を守る母親の愛が伝わりました。アムドゥスキアスと並んで話すシーンも印象的でした。舞台美術、ライティングも素敵で目を離せませんでした。幕間にプログラムを求め、帰宅後活字を全部読み込んでしまいました。プログラムも素敵です。
♪音楽が本当に絶妙に素敵で。複雑に変化するリズムや旋律と、シンプルで優しい音が混ざりあって、なんともいえない味わい。それを歌で表現するキャストの皆さまの素晴らしい歌の力も相まって、すごく印象的でした。あまり馴染みのない題材なので、少し難しく感じる部分もありましたが、ひとりの人間の物語として、あまり詳しく知らないパガニーニの人生にいつしかどっぷり感情移入していて、ラストあたりは涙腺が崩壊していました。これから更に進化していき、どんどん面白くなるのではとも感じました。公演期間中にもう一度観にいく機会があるので、すごく楽しみです。♪戸井さんの執事が観たくてこの日にしました。トレーを持つ手がさすが、美しい。小言を言いつつ、パガニーニを心配し父親のように愛している執事にラスト泣かされました。
♪相葉さんのどこか人を寄せ付けないパガニーニの懐に飛び込むアーシャ。彼女を見つめる視線の変化が繊細に表現されています。才能を得たパガニーニの脆さ、気付きを得たパガニーニの強さが印象的。♪中川晃教さんの「音楽の悪魔」は奔放で無邪気(悪魔なのに)で、人を誘惑し取引を持ちかける動機が音楽を捧げさせるためなあたり、純粋さすら感じる。出演者個人の魅力だけでなく、題材が興味深い。悪魔との取引で天賦の才を得たパガニーニ。音楽がもたらした成功、富と名声と堕落と孤独の果てに得るもの破滅しかないのか、残る曲数=命のカウントダウンと共にいつのまにか客席で固唾を飲んで見守っている自分がいた。
♪中川さんはじめベテラン陣はさすがの演技、歌も見事でした。香寿さん、何もかも包み込む母の愛、それによって生かされ、「自分が天才ではないとわかるほどの才能」をもったパガニーニをある意味追い詰め、それをこえてなお与え続けた愛を体現したようで素晴らしかったです。山寺さん、軽妙な中にも執事という職務を超えてパガニーニを支える優しさがうす暗闇の中を進む舞台を照らしてくださいました、歌も上手なんですね。畠中さん、パガニーニを教え育てたゆえに悪魔との契約に気付き糾弾する教師と終盤パガニーニの友となるベルリオーズの2役、まったく違う役を演じられて素晴らしかったです。それら全てを受け止めるパガニーニ役の水江さんも苦しみながらも最後まで人として生きぬいた演技が素敵でした。若手も含め、まだまだ変化していく舞台だと思います。♪あらためて、中川晃教という稀有な音楽の才能をリアルに持つミュージカルアクターあってこそ成り立つ舞台だと思いました。ちょっとコミカル、でも目は笑ってない、約束は約束(契約)として冷酷に遂行する、さすがは悪魔です。パガニーニが主人公なのですが、彼を愛した人々の物語でもあって、特に香寿さんが演じる母親はその歌声も温かくやわらかく、パガニーニにとっても観客にとっても包み込むようなやさしさで癒されました。
♪キャストの豪華さ、音楽の素晴らしさ、舞台装置、照明、全てが魅力的で感動しました。パガニーニがバイオリンを弾く姿を、こう表現するかと驚きでした。Wキャストで見比べたくなることは、間違いありません。ベテラン勢が若手キャストを包み込みリードするような感じが素晴らしかったです。
♪とにかく香寿さんの歌と演技が素晴らしく、効果的なリプライズも相まって、心を揺り動かされました。バンドが舞台上奥の一段高い所に設置され、少人数ながらも素敵でした。とくにホルンソロがめっちゃよかったです!♪キャストが多彩で魅力的だった。あらゆる曲を軽やかに歌いこなし、時にはミステリアスに、時にはコミカルにetc、変幻自在に演技する音楽の悪魔役の中川晃教はさすがである。香寿たつき、戸井勝海、畠中洋のベテランの歌唱・演技が作品を支え、深みを与えていた。
【ゲネプロレポート】
人生のCROSS ROAD(十字路)であなたは何に出会うのか 人気の音楽朗読劇VOICARION(ヴォイサリオン)シリーズで原作・脚本・演出を手掛ける藤沢文翁さんが満を持して挑むミュージカル! その作品は、藤沢さんが手掛け、東宝初の朗読劇として2012年にシアタークリエで上演された『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』。音楽に溢れた朗読劇がミュージカルになることは必然だったのかもしれない──、こうしてミュージカルとなって生まれ変わった『CROSS ROAD』GPの様子をレポートいたします。(Wキャストは、パガニーニ:水江建太さん、アルマンド:戸井勝海さん)
音楽に魅せられた者たち
物語の舞台は19世紀ヨーロッパ。数多の音楽家が誕生し、人びとは彼らが生み出す音楽に酔いしれた。そんな音楽が支配していた世界に突如として現れた一人のヴァイオリニスト、ニコロ・パガニーニ。
誰も見たことのない奏法でヴァイオリンを奏でる彼には常にある噂がつきまとった。
悪魔と契約し、魂と引き換えに音楽を手に入れた……と。
街外れの十字路で悪魔アムドゥスキアスと血の契約を結んだ彼が掴んだものと失ったもの。命に代えて演奏をするパガニーニがたどり着く境地とは。
多彩なキャスト
“地獄の公爵” 音楽を司る悪魔アムドゥスキアスに中川晃教さん、アムドゥスキアスに魅入られ血の契約を結んでしまうパガニーニは相葉裕樹さんと水江建太さん(Wキャスト)。
悪魔と聞くと地を這うように近づいてくるようなイメージですが、音楽の悪魔の歌声は天から降り注ぎます。中川さんの妖しく甘美な響き、これは逃れられない。一方のパガニーニの水江さんも芝居、歌、ダンスに大奮闘。憂いを秘めた表情、名声を得て浮かべる恍惚の表情を見せながら、パガニーニが辿った人生を生き抜きます。才能が覚醒する場面でのダンスもご注目ください。
悪魔と人間、照明効果でそのパワーゲームがより鮮やかに。
「才能はある、その限界がわかるくらいに」残酷な響き
自分には天賦の才はないことを知る青年が葛藤し迷い、人生の岐路に立ったとき。
悪魔が忍び寄る
悪魔との血の契約によって、ヴァイオリニスト、パガニーニは覚醒する
パガニーニの母テレーザには香寿たつきさん。
香寿さんの慈愛に満ちた歌声、眼差し。たとえ息子が悪魔と呼ばれたとしても、それが変わることはありません。
テレーザの愛は悪魔にもつけ入る隙を与えない強さを持ちます
パガニーニのヴァイオリンの師、コスタ先生に畠中洋さん。
誰よりも早くパガニーニの演奏が変わったことに気づく
パガニーニに憧れ、楽屋に忍び込むこと数回、流浪の民ジプシーの娘アーシャには早川聖来さん。
バレエで培った身のこなしは美しく、アーシャの持つ精神の自由を投影するシーンに。虐げられる人生で音楽が光となると信じるアーシャと、音楽は枷になると言うパガニーニ、音楽の捉え方も真逆。はじめは鬱陶しい素振りだったパガニーニも、彼女の明るさを目の当たりにし次第に笑顔を見せるようになる。
彼が抱える苦悩を知り、やがては良き理解者となるアーシャ
彼の死後、主人亡き屋敷を訪れてパガニーニの人生を教えて欲しいと執事に頼むことから、この物語が始まる。
こちらは皇帝ナポレオンの妹エリザ・ボナパルト。王宮では誰もが「ナポレオンの妹」として扱うなか、パガニーニだけは「エリザ」という一人の女性として彼女を見つめる。エリザの孤独や愛を青野紗穂さんが芯の強い歌声で届けます。
エリザの「愛しただけ」の言葉が今も耳に残る
畠中さんはもうひと役、音楽家のベルリオーズも演じます。
何のために音楽を奏でるのか──
パガニーニからベルリオーズへ歌い繋ぐことで、志をも受け渡す。そのシーンがとてもとても印象的。
そしてパガニーニの忠実な執事アルマンドは山寺宏一さんと戸井勝海さん(Wキャスト)。忠実ゆえに、主人にもときに口うるさくなってしまう。故郷を離れたパガニーニにとっては彼こそが家族だったのではないか、パガニーニの、ほかでは見せることのない柔和な表情がそう思わせます。
終盤のビッグナンバーは圧倒的!
物語はアルマンドの回想という形で綴られる、ストーリーテラーでもあります。
常に音楽を渇望するアムドゥスキアス、嬉々として歌う姿は軽やかですが、「契約事項は何があっても守ってもらう」その厳しさは実に悪魔的(事実、悪魔なのですが)。
血の契約は、「命」と引き換えに天才だけが奏でられる「最高のメロディー」を100万曲演奏できる、そしてその演奏をアムドゥスキアスに捧ぐということ。
才能を手に入れるも、演奏をすること=命をけずること
音楽の悪魔に魅入られたひとりの男と彼を取り巻く人々の愛や葛藤。人間の業や悲しき性、深い愛情を巧みに表現する本作音楽を手掛けたのは村中俊之さん。そしてそれにより一層の厚みとドラマを持たせるのが頼もしいアンサンブルのみなさんとバンドの生演奏。楽曲もラテン、ロック、時折奏でられるクラッシックなどなど多彩。もちろん感情爆発のミュージカルビッグナンバーも!
原作・脚本・作詞・演出の藤沢文翁さんと作曲・音楽監督の村中俊之さんと数々のミュージカルを創作してきたみなさんによって舞台上に立ち上がった『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』。新しい才能と東宝に蓄積された技術や経験、知識が一体となり、ここに新作ミュージカルが誕生しました。ここからどう成長するかを含め、パガニーニの人生を辿る、ともすれば淡々と、と感じられる一幕で撒かれた種がパガニーニに絡みつく蔓のように伸び、よりドラマ性を帯びる二幕。情熱や冷酷さを肌で感じるようなヒリヒリとした生の舞台の魅力をぜひ劇場で味わってください。
人生の岐路、それは音楽家でなくとも、天才でなくとも、誰の人生にも訪れる局面。そこでなにを掴むか、なにを手放すか。なんのために、そして誰のために。幕が下り、劇場を後にするころには、「CROSS ROAD」か、うん、「CROSS ROAD」だ……そのタイトルが頭のなかリフレインなのでした。公演は6月30日まで。
舞台写真(相葉裕樹さん、山寺宏一さん)提供:東宝演劇部
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人