【明日も頑張ろう!】こまつ座『頭痛肩こり樋口一葉』観劇レポート



ぼんぼん盆の十六日に
地獄の地獄の蓋があく──


その歌詞とは裏腹の元気いっぱい童歌調のこの歌が頭を離れない。
夭折した明治の作家・樋口一葉と彼女に縁の人々、6人の女性の物語♪
一年の中で生者と死者の距離がグッと縮まるお盆にぴったりのこまつ座第143回公演『頭痛肩こり樋口一葉』が開幕いたしました。



貫地谷しほり


香寿たつき、増子倭文江、貫地谷しほり、瀬戸さおり、若村麻由美、熊谷真実

明治23年、樋口夏子(一葉)19歳から、彼女の死の2年後となる明治31年まで、一場を除いて盆の7月16日の夕刻を舞台に繰り広げられる物語。

女性の自立とは無縁の世の中。女の子に学問はいらないと小学校を退学させられ、貧困の中、戸主として一家を支えた一葉。そりゃあもう頭痛もするでしょう、肩もこるでしょうという苦労の果てに、彼女は筆を執る。文筆で世の中に向き合う夏子が数々の名作を発表した「奇跡の14か月」とは──。

「女の幸せは男次第」と言われていた時代、それぞれに事情を抱えた女性たちが年に一度、盆礼に樋口家に集う。そこで交わされる“身の上話”“おしゃべり”に泣いて笑ってグッとくる。井上流・樋口一葉評伝劇は、現代を生きる私たちにも響く、今は亡き人々からのエールのよう。本作は1983年初演、劇団こまつ座旗揚げ公演のために井上ひさしさんが書きあげた人気作!演出は栗山民也さん。

登場人物、そしてそれを演じるのは、樋口一葉(夏子)に貫地谷しほりさん、母・多喜に増子倭文江さん、妹・邦子に瀬戸さおりさん。樋口家に縁のある元は旗本のお嬢様の稲葉鑛(こう)に香寿たつきさん、中野八重に熊谷真実さん。そして、夏子と奇妙な交流をする幽霊・花螢に若村麻由美さん。(登場人物は女性ばかりですが、彼女たちの人生を通してしっかりと男性たちの存在も感じられるのです)



香寿たつき、瀬戸さおり、増子倭文江、貫地谷しほり、熊谷真実


若村麻由美

貫地谷さんは作品の柱としてどっしりとした存在感。夏子が心を許す花螢とのやり取りはほっこりします。若村さん演じる花螢はなんと活発なことか。そして情が深いというかなんというか。とても魅力的な幽霊です。

その歌声の魅力も印象的な香寿さんのお鑛さまと激動の人生を鮮やかに演じる熊谷さん演じる八重の数奇な交わり(が、それもなんのその⁉)。世間体とプライドで夏子をしばる母ながら、彼女にもそこに至る人生があったのだと思わせる増子さん、小さな背中に大きな荷物、客席も含めみんながエールを送りたくなる邦子(くーちゃん!)を作り上げた瀬戸さん。

井上ひさしさんが一人ひとりに愛情をたっぷりと注いで描いた6人の登場人物を演じる6人の俳優の見事なアンサンブルに拍手拍手! そして全編にちりばめられた耳に心になじむ音楽は今も思わず口ずさんでしまうほど。「明日も頑張ろう」、すごくシンプルながら今一番求めていたものが劇場にありました。

ここからはこまつ座『頭痛肩こり樋口一葉』をご覧になったおけぴ会員のみなさんからの感想をご紹介いたします。


【感想紹介】



若村麻由美、貫地谷しほり

◆明治時代に生きた女性6人の物語ですが、現代にも通づる女性の生き方を、樋口一葉役の貫地谷しほりさんと幽霊・花螢の若村麻由美さんとのユーモアあるやり取りを楽しみながら、じんわりくるくる。最後、拍手をしながら涙がにじみました。内面にぐっとくる良い内容で感動。お盆のこの8月にぴったりのお芝居だと思います。

◆「頭痛肩こり樋口一葉」見てきました。素晴らしい女優さんたちのお芝居と存在感に圧倒されました!若村麻由美さん演じる花螢さんが妖艶でコミカルで可愛らしくて、こんな幽霊だから一葉も毎年お盆に現れるのを楽しみにしてましたね。でも、年々苦しそうになる家族たち。幽霊になってからは吹っ切れて楽しげになってるのが救われました。生きていくのは大変だなぁ。いつの世も。。。「世の中全体に張りめぐらされた因縁の糸の網」このセリフ、考えさせられますね。とても心に染みる作品でした。

◆さすが、井上ひさし作品。素晴らしい出来でした。お盆の夜、現世をさまよう幽霊の花螢。現世に恨みが残っているためなのだが、その恨みのもとをたどっていくと…なんとも皮肉な結果に。この辺りは、井上ひさしの面目躍如。

◆皆様お芝居が達者で、演劇的な時間でした。女性の生活の中にある悲しみが、ユーモアの合間に垣間見えて胸に響きました。

◆おかしな題名に引かれました。明治の女流作家で日本社会に先鞭をつけた傑物女性。成仏できずに冥界とこの世を行き来する元遊女の幽霊と一葉とのやり取りが面白い。見受け金を横取りした老嬢を恨むはずがどんどん原因を遡っていき挙句の果てが…という荒唐無稽な可笑しな話の連続。6人の女性が男社会で犠牲になって一人ずつ幽霊になっていく。女が生きて行くためには息苦しかった時代か、でも逞しく生きる女の姿は頼もしい。



貫地谷しほり、瀬戸さおり

◆当時も今も女性の置かれている状況はまったく変わってないことを再認識させられる名作。6人の俳優陣はみんな適役。貫地谷しほりさんの一葉は周りの芝居をしっかり受けて、舞台の中心として確かな存在感を放っていた。そして若村麻由美さんがすごい!美貌はもちろん、日本舞踊で鍛えた所作も美しく、重そうな衣装で舞台を縦横無尽に走り回る。なんてハードな役なんだろう。ぜひ生で見てほしい。

◆夏にぴったりの作品です。明治時代の話なのに今観ても古くなく、全ての日本人の心に響くであろう井上ひさしさんの素晴らしい脚本、息の合った存在感抜群の6人の女優たち。いつか生で観たかった若村麻由美さんを観ることができたのも嬉しかったです。間のとり方も、多彩な声色を操るところも、色気のある佇まいも、彼女は映像より絶対に舞台の役者さんだと思いました。香寿たつきさんの歌声も染みました。ミュージカルでは何度も拝見していますが、歌謡曲的な歌もこんなに素晴らしいのですね。熊谷真実さんもかなりのはまり役。

◆登場人物は女性6人だけというお芝居である。舞台上には彼女たちしかいないのに、実際に男性もお芝居しているかのように感じた。登場人物一人一人がとても魅力的なのだが、中でも花螢役の若村さんは目が離せなかった。明治時代のお話ではあるが、世間体を気にする母に翻弄されるところなど現代の私たちにも共感できることが多かった。皆さん歌が上手で驚いたが、香寿さんの歌は流石であった。

◆たくさん笑った、けど後味はほろ苦い。舞台は(一場面を除き)いつも7月16日の夕方。毎年一回、お盆の挨拶に集まる女性6人。一年ごとに様変わりする女たちの運命は、年々凄みを増していく。タイトルからは想像できないストーリー展開に驚愕。辛くて、おかしくて、私たち観客は翻弄されっぱなし。「お盆でございます」という挨拶、私も覚えておこう。いつか使う日のために。



貫地谷しほり、若村麻由美

◆主役を張れる実力派女優6人が見事なまでに井上ひさし作品を演じきっていました。貫地谷しほりさんがFM放送で、幼少時に樋口一葉記念館に行ったことがあり、この作品には特別な思いがある、と話していましたが、その思いが伝わってきました。鑛役を演じた香寿たつきさんの透明な声の響き・歌唱が終盤の場面を一段と盛り上げていました。

◆井上ひさしの女性を筆頭とするこの世の弱者への想いは本物だと思う。幕切れの多喜の言葉は、人類の歴史の遺物を背負わされた女性と弱き者たちへのエールだ。誰もが幸せになる権利があるのだ。

◆「お盆は地獄の釜の蓋が開く」と子供の頃からよく親に聞かされてきました。香寿さんの美しい歌声が耳に残りました。貧しく、苦悩を抱えながらも逞しく生きる女性達。あの世に行ってもそれは健在⁉ 劇中ずっと笑って観ていましたが、最後は邦ちゃんに「がんばれ!」とマスクの下で声をかけ、涙が溢れました。これから夏にお盆提灯を出す度に、きっとこの舞台を思い出すんだろうな…。



女性たちへのエールとともに、男性たちが推し進める国家の方向性、好景気の中で生まれる格差や歪など社会を鋭く見つめる厳しさも井上作品の魅力。それを声高に叫ぶ作品ではありませんが、その後に続く作品たちのエッセンスもふんだんに盛り込まれている『頭痛肩こり樋口一葉』。こまつ座ファン、井上ひさしファンのみなさんも、はじめてというみなさんもぜひ2022年の本作をご覧ください。しかしながら、こんなにも貧困にあえいだ一葉がお札になるとは…なんとも皮肉と言うか。井上さんもビックリされた……かな。



≪今こそ劇場へ行こう≫ スペシャルトークショー

★8月12日(金)1:00公演後 シークエンスはやとも 氏 (芸人) 
★8月18日(木)1:00公演後 一龍斎春水(麻上洋子)氏 (講談師・声優) 
★8月21日(日)1:00公演後 伊藤氏貴 氏 (明治大学文学部教授)


※スペシャルトークショーは、開催日以外の『頭痛肩こり樋口一葉』、『紙屋町さくらホテル』のチケットを
 お持ちの方もご入場いただけます。ただし、満席になり次第ご入場を締切らせていただくことがございます。
※出演者は都合により変更の可能性がございます。


【公演情報】
こまつ座『頭痛肩こり樋口一葉』
2022年8月5日~28日@紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
<全国公演>
【大阪公演】2022年9月2日(金)〜 11日(日)@新歌舞伎座
【岡山公演】2022年9月13日(火)@津山文化センター
【東京多摩公演】2022年9月19日(月・祝)@パルテノン多摩

上演予定時間:約2時間40分(休憩15分含む)

<スタッフ>
作:井上ひさし
演出:栗山民也
音楽:宇野誠一郎

<キャスト>
貫地谷しほり、増子倭文江、熊谷真実、香寿たつき、瀬戸さおり、若村麻由美

<あらすじ>
父や兄に先立たれ、若くして樋口家の戸主となった夏子(樋口一葉)の肩には、母・多喜と妹・邦子との貧しい 生活が重くのしかかっていました。
母の期待や妹の優しさに応えようと孤軍奮闘の日々を送ります。
恋をする自由も将来を夢みる余地もない夏子は閉塞感に押しつぶされそうになり、ついには、ただ墨を擦り 筆を動かすためだけに身体をこの世に置いてある、そう心を決めます。
そして、明治二十四年の盆の夕刻。
「ぼんぼん盆の十六日に 地獄の亡者が出てござる......」
少女たちの歌う盆歌に導かれて、一人の幽霊が夏子のもとを訪れてきます。「花螢」と名乗り、歌い踊る幽霊。
夏子と幽霊は、互いに心を通わせ合いますが...

公演HP:http://www.komatsuza.co.jp/program/index.html#406

舞台写真提供:こまつ座 撮影:宮川舞子
おけぴ取材班:chiaki(取材・文)監修:おけぴ管理人

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