
東啓介さん、有澤樟太郎さん
はじまりはニュージャージー州の貧しい片田舎。
“天使の歌声”を持つフランキーは兄貴分のトミーとニックのバンドで音楽活動をスタート。そこに稀代のメロディメーカー、ボブ・ゴーディオが最後のピースとして途中加入し──。
ザ・フォー・シーズンズの成功と挫折。
あまりに劇的な春夏秋冬を駆け抜けていく4人がその先で見たものとは──。
2016年の日本初演より多くの、そして熱い支持を集めるミュージカル『ジャージー・ボーイズ』。2022年の公演でボブ・ゴーディオ役を務める
東啓介さん、
有澤樟太郎さんにお話を伺いました。
(2020年に予定されていた帝国劇場での公演が中止を余儀なくされるも、コンサートバージョンで同役としてパフォーマンスされた東さんと、今回新たに“ジャージーカンパニー”に名を連ねた有澤さんのダブルキャストでボブ・ゴーディオを演じます)【みんなの支持があるから、自分たちがある】
──『ジャージー・ボーイズ』という作品との接点、出演が決まった際の心境からお聞かせください。有澤さん)まだ俳優の仕事を始める前に『ジャージー・ボーイズ』の映画を見ていました。その後、ミュージカル(舞台作品)だということを知りましたが、その時点では出演したいというよりただ憧れの気持ちを抱いていました。こうして出演が決まり、それもザ・フォー・シーズンズのメンバーのひとりであるボブ・ゴーディオ役であることに対してはプレッシャーも感じますが、ずっと憧れていた作品に携われることをとても嬉しく思っています。東さん)(過去に上演された)『ジャージー・ボーイズ』を観劇し、素敵な作品だと感じていたので、2020年の公演にキャスティングされたときは嬉しかったです。そのときはコンサートバージョンになりましたが、上演できたことは本当によかったと感じています。今回の本公演に向けて、前回の思いも重ねながら改めて気持ちを引き締めて頑張りたいと思います。
──『ジャージー・ボーイズ』が長きに渡り愛される理由はどのあたりにあると思いますか。東さん)その答えはボブ・ゴーディオの劇中での台詞「僕たちをトップへ押し上げたのは、彼ら彼女たち(一般大衆)だった」に集約されていると思います。みんなの支持があるから、自分たちがある、それはザ・フォー・シーズンズというグループについても『ジャージー・ボーイズ』という作品についても言えること。そしてそれを理解したうえでステージに立つ。それが愛され続ける理由だと思います。
有澤さん)ひとつはザ・フォー・シーズンズの楽曲がずっと愛されていること。もうひとつはその楽曲を用いて、音楽で成功への階段を駆け上がったニュージャージー州出身の男たちの生き様を描く演劇作品として、その物語が受け入れられたからだと思います。音楽の力も大きいですが、どうやって彼らが歩んできたのか、そのドラマも魅力的だからずっと愛され、受け継がれているのだと思います。【ひとりの人間、ジャージーの男としてのボブ・ゴーディオ】
──ボブ・ゴーディオ役へのアプローチについて。東さん)前回、コンサートバージョンに向けて作ったものを一度すべて壊し、また一から作ろうと演出の藤田(俊太郎)さんとも話しています。あの時代の、あの土地の文化、彼らの置かれていた状況を掘り下げ、そこに生きていた4人の男の中のひとり。頭の良さや切れ者感はもちろん、“ジャージーの男”の強さを押し出してもいいんじゃないかと思っていて。これまでのボブ・ゴーディオ役の方々が作ってきたものに敬意を払いながら自分のボブ・ゴーディオを作る、そのために稽古ではいろいろと試してみるつもりです。樟太郎くんとも話し合いながらそれぞれのボブを素晴らしいものにできればと思っています。稽古がどんな形式なのか、話す機会がどれくらいあるのかはまだわかりませんが(笑)。
有澤さん)今はとにかく歌稽古に集中している段階なので、役づくりについて具体的にお話しできないのですが。才能豊かなスター、天才というよりも、ひとりの人間としてとらえたいと思っています。アメリカ人と日本人、違いはありますが、そういった壁は無しにして、ひとりの男として物語の中にいたい。
そしてザ・フォー・シーズンズのメンバー4人が集まったとき、もっと言えばカンパニー全体がひとつになったとき、大きなエネルギーが生まれる作品だと思うので、その一員としてしっかりと役をまっとうしたいと思っています。──共にボブ・ゴーディオを作る仲間として、お互いどう感じていますか。東さん)歌稽古で会ったときは、とても久しぶりだったので嬉しさもありつつ緊張しちゃいました。なんか敬語でしゃべっていたし(笑)。早く樟太郎くんの歌声を聴いてみたいなと思っていたのですが、僕がぐいぐいいき過ぎても、緊張させちゃうかなと勝手にそわそわしていました。
有澤さん)僕はデビューした頃から同い年の役者ということでとんちゃん(東さん)のことは意識していました。主役を演じていたり、ミュージカルをやったりと才能豊か。僕の地元にはいない感じだなと(笑)。だから僕も緊張していました。嬉しいし、ずっと楽しみだったけど、実際、なにから話せばいいんだろうって。今回、ガッツリご一緒できるので、すでに歌稽古で「すごい」と思っているとんちゃんからアドバイスをもらいたいし、いろんな話をしたい! ダブルキャストって、その公演を今日はとんちゃん、明日は僕と繋いでいくので、一緒に戦うような関係、ふたりで役を分かち合いたいです。──インタビュー前に行われた撮影時に交わした言葉やその時の雰囲気などお聞かせください。東さん)歌稽古の興奮冷めやらぬまま撮影だったので、やはり話題は歌。『ジャージー・ボーイズ』の歌は難しいよねとか、チームによって同じ役でも歌うパートが違うんだねとか話していました。
有澤さん)僕は撮影の間、すごく不思議な感覚でした。自分で言うのもあれなんですが、僕、身長が184cmでまあまあ大きい方ですが、とんちゃんはもっと“デカい”ので。撮影されながら、これ客観的に見てすごいことだな、普通じゃないなと(笑)。【言い回しがおしゃれ(有澤さん) かっこよすぎだろ・笑(東さん)】
──歌稽古真っ只中ということですが、現時点で課題に感じていることは。東さん)全部ですね(笑)。『ジャージー・ボーイズ』の歌唱は特殊で、いろんな歌い方、声質を使い分けないといけないので身体になじむまで本当に大変。でもそれを乗り越えたら絶対に歌が上手くなるんです。僕は相変わらず手こずっていますが、樟太郎くんはすでにパートも覚えてハモリにもつられないのがマジですごい。
有澤さん)いやいや。ハーモニーについては、これまでは周りの声を聴いたら惑わされるので自分は自分というような感じで稽古して、本番近くでやっと相手の歌声を聴けるようになっていたのが、『ジャージー・ボーイズ』では歌稽古からそれを求められる。人の声を聴いて、自分の声やリズムを合わせていく。本当に使ったことのない脳の部分を使っているような感覚です。さらに頭だけでなく身体の疲れもすごい、歌稽古の後はどっと疲れが(笑)。本当に僕の知らないことばかり、でもそれはすべて吸収したいことでもあるので、すごく楽しいんです。今日のとんちゃんとふたりでの歌稽古も楽しかった!東さん)僕も超楽しかった! 貴重な一日だったね。
──名曲ぞろいの本作。お気に入りのナンバー、フレーズはありますか。東さん)これはその時々で変わりそう。今思い浮かんだのはコンサートで歌った「My Eyes Adored You(瞳の面影)」。当時のいろんな出来事とも重なって、すごく思い入れのある曲です。ほかには『December,1963 (Oh, What a Night)(1963年12月(あの素晴らしき夜))』を歌えるのも楽しみ。台詞では、最後のボブ・ゴーディオの「ああしたことはすべて起こりえなかったはずだ……僕がいなければ」、かっこよすぎだろと(笑)! 大好きです!
有澤さん)やっぱり『Sherry(シェリー)』は名曲。みんなで歌声を合わせたとき、「自分がこの曲を歌っている」ということに感動しました。好きな曲で言うとトミーの『Silhouettes』がめっちゃ好きです。台詞では、曲中にある台詞が全部イイ! たとえば、『Sherry』の大ヒットを受けてボブ・ゴーディオが言う「でも本当に成功しているんだって僕がわかったのは──親がビジネススクールの話をしなくなったから」……そういうところがなんか日本ではない言い回しで。東さん)おしゃれだよね!
有澤さん)そう、おしゃれ!すごく印象的です。【コンサート版で生まれた色を深めるチームBLACK/読めないところが魅力のチームGREEN】
──今回はふたりのフランキー・ヴァリを擁する完全チーム制となります。チームBLACK(中川晃教・藤岡正明・東啓介・大山真志)とチームGREEN(花村想太・尾上右近・有澤樟太郎・spi)、それぞれどんなチームになりそうですか。東さん)BLACKはコンサートバージョンから引き続きになるので、すでにチーム感というか、それぞれの役割ができているように感じます。誰よりもこの作品を理解されているアッキー(中川晃教)さんがいて、マサ(藤岡正明)さんも引っ張ってくれて。割とナチュラルにふざけたりしています(笑)。役としての立ち位置、俳優個人としての立ち位置が融合したチームカラーをより色濃くしていきたいと思います。
有澤さん)僕らGREENは、歌舞伎や音楽など普段の活動のフィールドが違うところから集まっていることもあり、どうなるのかわからない(笑)。お客様もそう思っているんじゃないかな。でも、そんな読めないところがGREENの魅力。とにかく新しいものを作っていこうという姿勢で臨んでいます。コンサートバージョンを経て自然体でチームが出来上がっているBLACKのみなさんにもいい刺激を与えることができて、相乗効果が生まれるように頑張っていきたいと思います。──これまでも観客を熱狂の渦に巻き込んできたミュージカル『ジャージー・ボーイズ』、今年の公演を楽しみにされているみなさんへのメッセージを。東さん)『ジャージー・ボーイズ』はたくさんの方に愛されている作品なので、みなさんにどう受け止められるのかという怖さももちろんあります。でも初演からご覧になっているみなさんにも新しく生まれるBLACKとGREEN、どちらがイイではなくどちらのチームも愛していただきたいですし、初めて見る方には楽曲と物語の素晴らしさを存分に味わっていただきたい。そのために僕たちはこの作品の音楽の素晴らしさ、夢を追いかけ続けるエネルギーを信じて頑張ります!
有澤さん)『ジャージー・ボーイズ』はお客様の心の中に強く残る作品。これまで作り上げてきたものを受け継ぐ気持ちと、それを超えたい気持ち、自分の中にいろいろな思いがあります。ボブ・ゴーディオがグループに途中から加入したように、僕も今回からカンパニーのメンバーに加わります。それによってなにか新しいものが残せればと思っています。でも、やっぱり正直なところ「お手柔らかに」という感じです(笑)。東さん)わかるー!!
──では、「お手柔らかに」と「やってやるぞ!」の気持ちが50/50といったところでしょうか。東さん)それはもう……「やってやるぞ!」100%に決まってるじゃないですか(笑)!
有澤さん)もちろん!◆人気作『ジャージー・ボーイズ』に向き合う緊張感をのぞかせながら、一つひとつの質問に丁寧に答えてくださったおふたり。最後に互いを、自らを鼓舞するように聞かせてくださった力強い言葉におふたりのボブ・ゴーディオへの期待は高まるばかり! チームBLACKとチームGREENの誕生が今から楽しみです。公演は10月8日~29日(10月6日、7日:プレビュー公演)に日生劇場にて上演の後、大阪、福岡、愛知、秋田を巡り、12月10日、11日の横須賀芸術劇場での大千穐楽まで全国を駆け抜けます!
ヘアメイク:東=谷口祐人(amber_be)/有澤=SHIO
スタイリスト: 東=青木紀一郎(ALVARO)/有澤= 山田安莉沙
撮影:古熊美帆
おけぴ取材班:chiaki(インタビュー・文)監修:おけぴ管理人