【「今」を感じる】ミュージカル『RENT』2023 ゲネプロレポート

プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』をもとに、1991年のニューヨーク・イーストヴィレッジを物語の舞台に移したミュージカル『RENT』。若きアーティストたちが貧困やエイズ、ドラッグといった問題に直面しながらも、愛と友情を信じ夢に向かって懸命に生きていく姿を描いた本作を生み出したのは、作詞・作曲・脚本を担当したジョナサン・ラーソン。彼はプレビュー前日の1996年1月25日に35歳の若さでその生涯に幕を下ろしました。翌1月26日、オフ・ブロードウェイにて『RENT』はプレビュー公演をスタート、瞬く間、3か月という異例のスピードでブロードウェイ進出を果たし、ピュリッツァー賞ドラマ部門をはじめ、トニー賞ミュージカル部門作品賞、脚本賞、作曲賞、助演男優賞の4部門獲得。7年という歳月をかけてジョナサンが紡いだこの物語が、2023年の東京で熱く上演中。ミュージカル『RENT』公開ゲネプロレポートをお届けします。記事ラストにはダイジェスト映像も!


「今」を感じる『RENT』



主な登場人物は、映像作家のマーク、そのルームメイトで元ロックバンドボーカルのロジャー。二人が暮す古いロフトの階下の住人SMクラブのダンサー・ミミ。マークとロジャーの元ルームメイトのコリンズ、彼が偶然出会ったストリートドラマーでドラァグクイーンのエンジェル。マークの元恋人のモーリーンとその恋人、弁護士のジョアンヌ。かつては仲間だったが現在は大家となり、マークたちから家賃を取り立てるベニー。


1991年のクリスマス・イヴの夜から物語は始まります。おもむろに舞台に登場するキャスト、家賃滞納により電気も暖房も止められ……その瞬間に、彼らのエネルギーが一気に爆発します。



マーク(花村想太さん)ロジャー(古屋敬多さん)


若さや焦り、苛立ち、ありとあらゆるエネルギーが凝縮されたナンバー「RENT」では、物語の登場人物たちが舞台上に次々に現れます!

恋人をエイズで亡くし、自身もHIV陽性、ずっと引きこもっているロジャー。死ぬ前に1曲、後世に残る曲を書きたいともがく彼の前に現れた、ミミ。古屋さんの「One Song Glory」はロジャーの繊細さと音楽への情熱が痛いほど伝わってくる魂の叫び。遥海さんと歌う「Light My Candle」はまさにテンポよく進む会話。一つひとつの言葉が大切に届けられます。



惹かれながらも一歩を踏み出せないロジャー(古屋さん)、ミミ(遥海さん)もまたHIV陽性。
二人はまだそれを知らない。

こちらはまさに天使のような愛の人エンジェルの「Today 4 U」からの一枚。百名さんの身体能力とキュートな笑顔、キラッキラを振りまきます。



エンジェル(百名ヒロキさん)

一方、モーリーンの元恋人と現恋人の二人が歌うのは「Tango: Maureen」。その夜に行われるモーリーンのパフォーマンス準備中のトラブル対処に駆けつけたマークが会場でジョアンヌに鉢合わせ……気まずさが続くと思いきや。



ジョアンヌ(塚本直さん)、マーク(花村さん)
奔放なモーリーンに振り回されっぱなしの二人に芽生える奇妙な共感、タンゴに乗せて踊り歌います。

なんとかロジャーを外に連れ出そうとするミミの願い(歌声)は、やがて彼を見守るたくさんの人々の声となります。




コリンズ(加藤潤一さん)、エンジェル(百名さん)

ロジャーとミミのもどかしい恋模様と対照的に出会いの瞬間に芽生えた愛に正直に生きるコリンズとエンジェル。ともにHIV陽性、死が隣にある状況でも愛し愛される喜びにあふれる二人。加藤さんのコリンズは大きな愛でエンジェルを包み込みます。豊かで艶やかな歌声にうっとり。現実を見通すどこか冷静さと目の前のエンジェルをひたすらに愛する強さももつ素敵なコリンズです。



雪が降りだした~
人種、セクシャリティ、感染、貧富の差……誰のもとにも平等に降り注ぐ雪

こちら↑は、そこに生きる一人ひとりの物語でもあるという『RENT』の群像劇たる魅力を感じるシーンのひとつです。


こうして始まったモーリーンのパフォーマンスは大成功。打ち上げパーティの会場ライフカフェに居たのはこの人。



写真中央)モーリーン(鈴木瑛美子さん)、写真右)ベニー(吉田広大さん)

かつては仲間、今は敵のベニー。やけにスマートで絶妙にイラっとさせるベニーを吉田広大さんが好演!!



1幕ラストは「La Vie Boheme」

誇り高きボヘミアンたちが歌うショーアップされたナンバーです。その片隅ではロジャーとミミが、互いの秘密を共有し心を通わせる。



愛し合いながらも喧嘩ばかりのモーリーンとジョアンヌのパワフルなナンバー「Take Me Or Leave Me」。塚本さんと鈴木さんのリミッターを外したバチバチのデュエットは聴き応えしかない!!(二幕より)



ドラマティックな展開を見せる登場人物たちの中、ときに「傍観者」のように映るマーク。夢を抱き、ときに流され、迷いながらも自らのやりたいことを見つめ直す。等身大の花村さんマークは共感を呼びます。



生きるエネルギーに満ちた「What You Own」
夢や仲間、確かなものを掴んだ彼らは強く、たくましく躍動!

こうしてニューイヤー、バレンタインデー、ハロウィーンと季節は巡りやがて訪れる次のクリスマス・イヴ。衝突や離別の果てに彼らがたどり着くのは……。



NO DAY BUT TODAY

20世紀末のニューヨークに生きた人々に扮した俳優たちが、彼らのすべてをかけて作り上げるステージのフィナーレ。これまでにも何度も観た『RENT』ですが、やっぱり観るたびに胸に熱いものがこみあげてくるこのシーンです。その時、その瞬間にしか生まれない『RENT』はやっぱり尊い! NO DAY BUT TODAY、今を生きる、その積み重ねが未来を作る。混迷の時代を生き抜くヒントがそこにありました。

公演は4月2日までシアタークリエにて、7日~9日は新歌舞伎座、12日、13日は愛知県芸術劇場大ホールにて上演です!

また、Wキャストのもう一方は、マーク:平間壮一さん、ロジャー:甲斐翔真さん、ミミ:八木アリサさん、コリンズ:SUNHEEさん、エンジェル:RIOSKEさん、モーリーン:佐竹莉奈さんです。


【公開ゲネプロ ダイジェスト映像】

【公演情報】
ミュージカル『RENT』
2023年3月8日(日)~4月2日(日)@シアタークリエ
<大阪公演>4月7日(金)~9日(日)@新歌舞伎座
<愛知公演>4月12日(水)~13日(木)@愛知県芸術劇場大ホール

脚本・作詞・音楽:ジョナサン・ラーソン
演出:マイケル・グライフ
日本版リステージ:アンディ・セニョールJr.
振付補:マーカス・ポール・ジェームズ
衣裳:アンジェラ・ウェント

キャスト
マーク・コーエン:花村想太、平間壮一
ロジャー・デイヴィス:古屋敬多(Lead)、甲斐翔真
ミミ・マルケス:遥海、八木アリサ
トム・コリンズ:加藤潤一、SUNHEE
エンジェル・デュモット・シュナール:百名ヒロキ、RIOSKE
モーリーン・ジョンソン:佐竹莉奈、鈴木瑛美子
ジョアンヌ・ジェファーソン:塚本直
ベンジャミン・“ベニー”・コフィン3世:吉田広大

チャンヘ、長谷川開、小熊綸、ロビンソン春輝、吉田華奈、Zinee

https://www.tohostage.com/rent2023/


動画提供:東宝演劇部
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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