原作は、直木賞作家・森絵都による累計発行部数120万部を超える同名ベストセラー小説。身近な家族や学校をテーマとしながらも、斬新かつ予想外な設定とストーリー展開で、“生きることが面倒になってもそれでも選択を続けながら生きていくこと”をポジティブに伝えてくれるこの物語。この夏、「せたがやこどもプロジェクト 2023《ステージ編》」として子どもも大人も楽しめるオリジナルの新作ミュージカル『カラフル』として届けられます!
ミュージカル『カラフル』
撮影:NAITO
7月22日の世田谷パブリックシアターでの初日を迎えた本作、脚本・作詞・演出の小林香さん、大きな過ちを犯して死んだ主人公<ぼく>役の鈴木福さん、、ガイド役の天使・プラプラ役の川平慈英さんからコメントが届きました。
ミュージカル『カラフル』
撮影:NAITO
【脚本・作詞・演出 小林香さんコメント】
キャスト、スタッフ全員で夢中になって、楽しみながら、真摯に舞台を作ってきました。主人公を演じる鈴木福さんを筆頭に、いつもカンパニーを笑いでひとつに束ねてくださる川平慈英さん、カンパニーのみんなで千秋楽まで作品を育てていきたいと思っています。
ミュージカル版の『カラフル』としては世界初演となります。子どもたちに観てもらいたい気持ちがとてもあり、子どもたち、若い子たちに集中して観てもらえる仕掛けをあちこちにちりばめました。もちろん大人を含む全世代に楽しんでいただける、見ごたえのある作品に仕上がったと思っています。高校生以下は 1,000 円、24歳以下は半額で観ていただけるチケットも揃えてお待ちしています。
今の若い人たちが抱えている問題に、鋭く切り込んだ作品になっていますが、非常にユーモラスに物語が進んでいきます。ぜひ背中を押されに、笑ったり泣いたりしに、劇場に遊びに来てください。
【<ぼく>役 鈴木福さんコメント】
キャスト、スタッフの皆さんとここまで元気に初日を迎えられたことがまずうれしいです。作品がかたちになっていくにつれて、自分がしっかりしないとこの作品が組み立たない、<ぼく>の芝居が中心になっていくんだと感じました。
この作品をとおして、自分の中でできることが増えているのも感じていますし、<ぼく>としてやっていかなければという気持ちが、自分の中で心地良いものになってきているのを感じています。演出の小林さんをはじめ、カンパニーの皆さん素晴らしい方々ばかりで、皆さんと一緒ならやれる、という気持ちでいます。
<ぼく>として、『カラフル』をお客様の心の奥底まで届けられるように精一杯がんばります。最後には驚きのラストも待っています。原作が好きな人も、ミュージカルが初めての人も、ミュージカルが大好きな人も楽しんでいただける作品になっていると思います。劇場でお待ちしています。
【プラプラ役 川平慈英さんコメント】
ついに『カラフル』のキックオフタイムが来たんだなと、とても楽しみです。
皆さんにハッピーエナジーを届けられることがうれしいですし、このチームに参加できたことを誇らしく思います。7年ぶりに福くんと舞台に立てることもうれしいですし、最後まで完走できるよう一丸となって楽しみたいです。
福くんの“アンクル・ジェイ”だと思ってるんですが、叔父としてこんなに誇らしい共演者はいないと思っています。
抱きしめたくなるくらいチャーミングな福くんをはじめ、キャストみんなの感情豊かな芝居とミュージカルナンバーにぜひ期待してください。
観終わったあと「生きているだけで、こんなにうれしいことはないんだ」ということを、みんなでシェアできる作品です。
日本のオリジナルミュージカルシーンのエポックメイキングな作品になっていますので、歴史的な瞬間を楽しく共有できたら。“カラフル”な舞台を楽しみにしてください!
<観劇ミニレポ>
ミュージカル『カラフル』
撮影:NAITO
劇場に入ると目に飛び込んでくるのは真っ白な舞台セット、教室やダイニングルーム、どこか歪んだ日常の風景。この真っ白な世界で『カラフル』の物語が紡がれます。
ミュージカル『カラフル』
撮影:NAITO
「おめでとうございます!抽選にあたりました!」の言葉とともに登場する天使プラプラ。
え?なにごと?!という周りの空気はお構いなし、“非日常”感満載の天使プラプラを演じるのは川平慈英さん(ピッタリ!)。チビ天使たちも引き連れたショータイム!は、パーンと風船が割れるようなエネルギーと華やかさ、一気に観客の視線と惹きつけ、心を掴みます。
ミュージカル『カラフル』
撮影:NAITO
そして、プラプラに「自殺を図った中学生の小林真として人生の再挑戦を」と告げられるものの戸惑いを隠せないのが死んだはずの<ぼく>。演じるのは鈴木福さんです。<ぼく>の魂は真(まこと)の肉体に入り(それをプラプラは「ホームステイ」と呼ぶ)、病院のベッドに横たわる真が突然覚醒。当然、それを大喜びする家族なのですが、<ぼく>にとってははじめて見る人々なのです。こうしてプラプラの導きで、真として家族やクラスメイトと関わり、彼らを知ることで成長する<ぼく>を等身大の芝居で見せる福さん。すごく繊細でナイーブなところを噓なく演じるからこそ、観ていてそこに寄り添いたくなるのです。
ミュージカル『カラフル』
撮影:NAITO
ミュージカル『カラフル』
撮影:NAITO
真の家族は一見すると“ごくごく平凡”なのですが、それでもやはりそれぞれの中に葛藤があり真実がある、それはクラスメイトも一緒。真にホームステイする<ぼく>との関わり合いの中で登場する一人ひとりの存在にリアリティがあるのです。内面を吐露する場面での切なくヒリヒリとする歌の中にある強さ、そこにもミュージカルならではの効果を感じます。中でもクラスメイトの佐野さんを演じる加藤梨里香さんの心が真っ直ぐに届く、伸びやな歌声がとても印象的です。
ミュージカル『カラフル』
撮影:NAITO
ミュージカル『カラフル』
撮影:NAITO
『カラフル』、そのタイトルの響きから受ける陽気でポップな印象とはまたひと味違うテイストの本作。命を扱っているからこその、厳しさと優しさのバランスが絶妙で、一歩堀り進めたところにある”カラフル”の意味を気付かせてくれる小林さんの演出が光ります。そして心の揺らぎや闇に真摯に向き合い、それを表現。それでも重くなりすぎないのがミュージカルの魅力のひとつだということを改めて感じます。
ラストシーンを迎えるころには、すっと背筋が伸びているような清々しい気持ちになりました。心が浄化され、でも、楽しかっただけじゃないこの感じ。そして、劇場ならではのラストシーン(とてもステキ)をぜひ体感しましょう!
また、観劇したのは初日公演。カーテンコールに登場した福さんには、劇中で大役を演じ切った、生き切ったことの安堵、その重圧からの解放からか、充足感とともにあふれる涙が。それは2度目のカテコで川平さんにハグされるともう号泣の域に。思わずこちらももらい泣きしてしまうほどの鈴木福さんの素の純粋さには、やっぱり、「福くん!」と呼びたくなるのです。幼いころからお茶の間のみんなに愛された福くんが青年になり、でも劇中ではしっかりと物語の主人公として作品を生き抜く姿をお見逃しなく!
(ミュージカルファンには「ビッグ・フィッシュ」でも共演されたお二人が、こうして『カラフル』では一風変わったバディのような関係を築いていることにも胸が熱くなります。)「生きていく」ことを考えるきっかけにもなるミュージカル『カラフル』、今、心に浮かぶのは、人は一人では生きていけないということです。心が色づく過程、<ぼく>の成長を劇場で追体験しましょう♪
ものがたり
「おめでとうございます!抽選にあたりました!」
死んだはずの<ぼく>(鈴木福)の魂は、ガイド役の天使・プラプラ(川平慈英)に導かれ、自殺を図った小林真として人生の再挑戦をすることに。家族やクラスメイトとの関わりの中で、モノクロだった世界のイメージが少しずつカラフルな色に変わりはじめたとき、<ぼく>の生前の罪が明らかになる…。
この記事は公演主催者の情報提供によりおけぴネットが作成しました
おけぴ取材班 chiaki(ミニレポ取材・文)