“お客様に劇場で演劇を楽しんでいただきたい”2020年7月、新型コロナの緊急事態宣言が解除されたばかりのころ、劇場での観劇の楽しみを思い出していただけるように、また初めて演劇をご覧いただくお客様にも楽しんでいただけるように、前向きな“実験”として始まったのが「TOHO MUSICAL LAB.」。無観客、1か月間での新作製作と東宝ミュージカルとして初めて尽くしの挑戦は大きな実を結び、多くの方がライブ配信を通じてシアタークリエの空間や観劇のワクワクを感じる、思い出す体験となりました。そんなすてきな“実験”が再始動!
「TOHO MUSICAL LAB.」第2弾は高羽彩さん(タカハ劇団)脚本・演出で、華やかな舞台の楽屋裏の様子を描く『わたしを、褒めて』と、池田亮さん(ゆうめい)が作詞・脚本・演出を担当、アニメーション制作現場を描いた『DESK』、出来たてほやほや東宝ミュージカルの新作2編の同時上演!たった2日間のプレミア感のあるプロジェクトだからこそ、ミュージカル界の豪華キャストが集結。そんなキャスト、クリエイターによる開幕記念会見の模様をレポートいたします。
ご登壇されたのは『わたしを、褒めて』より有澤樟太郎さん、美弥るりかさん、エリアンナさん、屋比久知奈さん、高羽 彩さん(脚本・演出)、 『DESK』より東 啓介さん、豊原江理佳さん、山崎大輝さん、壮 一帆さん、池田 亮さん(作詞・脚本・演出)です。
──キャストのみなさんには、それぞれの役どころと作品に対する意気込みをお伺いします。演出のお二人には作品の生まれた背景など含めてお聞かせください。『わたしを、褒めて』
高羽 彩さん(脚本・演出)、屋比久知奈さん、エリアンナさん、美弥るりかさん、有澤樟太郎さん
有澤さん)
『わたしを、褒めて』で、お騒がせ主演俳優の星奈 和(ほしな かなう)役を演じます。僕だけ衣裳のテイストがちょっと違って、いったいどんな作品なんだと思われる方がいらっしゃると思いますが、このきらびやかな衣裳に惑わされないでください(笑)!(本作で描かれるのは)“人間ドラマ”です。
心に潤いを!
有澤さん)
これだけ短い期間で作ったと思えないぐらい、すごく密度が高くて、みなさんの心を打つ作品になっていると思います。僕自身、すごく役柄とリンクしているところがあり、人の支えなくして舞台には立てないという原点に戻れるお芝居だと感じています。この感覚はみなさんにも通じると思うので、ぜひそこにご注目ください。乾燥する季節、みなさんの心を潤すような人間ドラマを劇場はもちろん、配信もございますので、『DESK』とあわせてお楽しみください。
美弥さん)
星奈さんに振り回される演出家の朝日役を演じます。「TOHO MUSICAL LAB.」という大変面白い企画に参加できることをすごく楽しみにしていました。そこでまさか自分が演出家を演じるとは!今まで出会った女性の演出家さんのことを思い出し、みなさんの個性を少しずつ取り入れながら演じております。個性あふれる素敵な共演者のみなさんと、高羽さんと一緒に、短い公演期間ではありますが精一杯全力で駆け抜けたいと思います。
エリアンナさん)
プロデューサーの水川役を演じます。この水川はちょっとクセのあるプロデューサーで、どちらかというとこの役もみんなを振り回します。美弥さん演じる演出家の朝日とそれぞれの正義をもってバトルするシーンがありますが、そこはなんて言うか……「ゴジラ対メカゴジラ」(笑)。是非そちらも楽しんでいただければと思っております。笑いの絶えない稽古場、ギュッとチーム一丸になった感じが、舞台上から伝わると思います。いっぱい笑って、そしてちょっとほっこりして!お楽しみいただけると嬉しいです。
どっちがメカゴジラ?どっちかな?
屋比久さん)
有澤くんが演じる星奈のマネージャー田之倉役を演じます。私自身、マネージャーさんと関わる機会が多々ありますが、本当にいろんな個性の方がいらっしゃいます。ですので、その方々というより、屋比久がマネージャーだったらと考えながら私なりの田之倉を作ろうと稽古をしてきました。
屋比久さん)
ラボという名にふさわしい、それぞれの個性やアイデアを持ち寄って、それを高羽さんがディレクションで導いてくださった濃密な稽古の日々、お客様にもこの作品で描かれる「誰もが一度は思うであろうこと」や「登場人物への共感」などを笑って楽しんでいただけたらと思っています。
高羽さん)
脚本・演出の高羽彩です。この作品を作った経緯ですが、私は、ある作品のスタッフワークに感動したことがきっかけで、プロの演劇人になりたいと思いました。それから20年。私の演劇活動はリスペクトするスタッフさんと共に歩んできたのだと感じています。だからこそ、舞台裏で何が起こっているのか、どういう人たちが働いているのかを、ぜひお客さんにもわかっていただきたい!そこをわかった上でさらに演劇を楽しんでいただきたいという思いから、この作品を書きました。また、演劇の話ではありますが、働くすべてのみなさんへの応援になるような作品かと思います。舞台裏を覗くような感覚で、楽しくこのバックステージのトタバタコメディを楽しんでください。
高羽さんの言葉に時折深く頷く『わたしを、褒めて』チーム
とてもいい稽古を重ねてこられたのだなと期待が高まります!
★『DESK』
東 啓介さん、豊原江里佳さん、山崎大輝さん、壮 一帆さん、池田 亮さん(作詞・脚本・演出)
東さん)
『DESK』で(アニメーション会社「TERA」の制作デスクの)和田を演じる東啓介です。
今、『わたしを、褒めて』チームのお話を聞いていて、(本当に)同時期に稽古をしていたんだと思うくらい、稽古期間はぜんぜん顔を合わせませんでした(笑)。
なので、今日、『わたしを、褒めて』の通し舞台稽古を拝見した時、別々に作り上げてきた2作品が、こうしてシアタークリエにたどり着いたことへの嬉しさがこみ上げてきました。そんな2つの作品をご覧いただけることも嬉しいですし、前回の無観客上演から今回は有観客、さらに配信もあるということですので、より多くの方にこの新作オリジナルミュージカルを肌で感じていただきたいと思います。そしてもっともっと日本でオリジナルミュージカルが増えたらいいなと思います。
舞台稽古で、早速『わたしを、褒めて』に共感したと語る東さん
確かな相乗効果が生まれています!
東さん)
『DESK』は働く皆様を後押ししてくれるようなお話です。「それ、本当にわかるな」というものが散りばめられています。そして、通し稽古をやりながら、「わたしを、褒めて」と思いました(笑)。和田は結構頑張っているのに、誰も褒めてくれない!そういう時に『わたしを、褒めて』を観ると、ほろりと涙が出てしまう。この“セットで観る”ことによる相乗効果で膨らむ何かもありますので、それを受け取ってください!どちらの作品もお楽しみください。
豊原さん)
和田さんの同僚、(「TERA」制作進行の)上野役を務めます。今回、池田さんをはじめ、みなさんと何もないところから作品を作っていくという作業がとても楽しくて!自分の経験や、今まで感じてきたことがすべて作品の中で活きるような感覚で、とても幸せな稽古期間でした。
豊原さん)
大人になると自分を大事にしたり、自分のためだけの時間を持つことが簡単なようですごく難しい。『DESK』はその大切さに気付かせてくれる作品です。見終わった時、自分に優しくなれる作品、私はそこに救われました。お客様にもそんな温かく優しい気持ちになっていただけたらと思います。
山﨑さん)
『DESK』で制作担当の中原役を演じます。豊原さんがおっしゃっていたように、立ち止まるということを教えてくれる作品だと思います。最初に台本を読んで感じたのがそこで、自分の時間って意外と取れていなかったなと、心の基盤をもう一度取り戻すような印象を受けました。
中原はなんて言うか、信念みたいなものは多分どこかにはあるのでしょうが、学生から流されるように社会の波に漕ぎ出してしまったような人物です。そんな彼が物語をいろいろとかき乱していくのですが……。今の時代、お仕事で忙しく、みなさんもなかなか自分の時間が持てないかと思いますが、この作品を通して「立ち止まってみる」ということを味わっていただきたいと思います。
『DESK』チームのみなさん、山崎さんの衣裳の汚れが気になるようで…
気を取り直してお話される山崎さん!みなさんのいい雰囲気が伝わります
壮さん)
プロデューサーの三浦秋子を演じます。同じプロデューサーでもエリアンナさんと全然違って(笑)。私はヒールも履いていないですしね。
二人の女性プロデューサーという観点から2作品を観るのも面白そう!
壮さん)
会社で共に働く個性的な人たちの中で、没個性にならないように三浦役をしっかりと務めたいと思います。『DESK』は最初に読んだ時、登場人物の設定から面白い、同時に、俳優として自分がどこまでそれを表現できるかが課題だと感じました。これまでいろんな役に挑戦してきた、その一つひとつが自分の中でいい引き出しになっていると思います。お客様に、面白かった、いいものを観られたと感じていただけるように頑張ります。あと、個人的には、こうして同じ舞台に立っているのに、今回は共演が叶わなかった美弥ちゃんと、いつか共演したいと思っています(笑)。
笑顔で応える美弥さん
池田さん)
『DESK』チームはこういったカーキな感じで、『わたしを、褒めて』チームはきらびやかで、見た目は異なりますがお仕事ものというところで共通するところがあります。今回、仕事や家庭、プライベートと社会的なところをテーマにした理由からお話します。コロナ禍にTOHO MUSICAL LAB.の第一弾を配信で観ました。当時は自分の公演ももちろん、本当に数多くの公演が中止となる状況にありましたが、あのような形(配信)で届けてくれたことによって「今でも舞台があるんだ」と強く感じました。その時、今は生活のことを優先させなくてはならないと思いつつも、「もう一度仕事がしたい」、自分のやってきたことや、やりたいことへの思いが溢れてきました。そこで、新しいミュージカルを作るなら、第1弾が届けてくれたもの、そこから受け取ったものを自分なりの形で返せないだろうかというのが出発点です。
そこから、アニメーション会社で働く知人たちの話が結びつきました。日本のアニメーションは大変な力がある、日本でオリジナルミュージカルを作るならその舞台はアニメなのではないか。叫びたいけど叫べなかった人たちの声、彼らの言葉にならない叫びを描こうと執筆したのが『DESK』です。
キャストスタッフのみなさんが素晴らしく、先ほどの通し稽古もすっごい良かったんです!本当に、本当にすごい良くて!毎回、面白さが更新されています。短い期間の中で特別なことが起こっています。劇場や配信で観てくださるみなさんにも、仕事とプライベートっていろいろと頭を抱えることもあると思いますが、それを明るく元気づけられるような作品として届けばいいなと思っています。お楽しみください。
“実験”“新作”というのはなんともワクワクさせる言葉です。それがミュージカルともなればなおさら!
コメントにもある「短い稽古期間」、確かにそうだったようですが、それでもこの顔ぶれですで濃密な意義深い稽古を重ねられたことでしょう。チケットは完売となっていますが、23日16時公演はライブ配信でもお楽しみいただけます(アーカイブ有り)。等身大の登場人物たちの、同時代性を感じさせる2つの短編ミュージカルの誕生をお見逃しなく!また、ここから「TOHO MUSICAL LAB.」がどう発展していくのか、そこも楽しみですね。
TOHO MUSICAL LAB. おけぴ取材会レポート
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人