梅田芸術劇場と英国チャリングクロス劇場が共同で演劇作品を企画・制作・上演するという意欲作! 演出家と演出コンセプトはそのままに「英国キャスト版」(2019年)と「日本キャスト版」(2020年)を各国それぞれの劇場で上演したミュージカル『VIOLET』。2024年、新キャストを迎えた待望の再演がいよいよ始動! 4月7日の開幕に先立ち、制作発表会見が行われました。
制作発表は歌唱パフォーマンスからスタート。音楽監督・ピアノコンダクターの江草啓太さんのピアノ演奏に乗せて、“不安を捨て去り、この先に待っている未来への期待を込めた旅立ち、決意の楽曲♪マイ・ウェイ”がオールキャストによる特別バージョンで披露されました。
2人のヴァイオレットが登場
メインビジュアルに同じく三浦透子さんは菫色、屋比久知奈さんは橙色の衣裳
互いを見つめ、感じ合うようなディレクション
多彩な色の声の重なりの美しさと力強さ
旅の始まりの高揚感、心の躍動が伝わる楽曲!
東啓介さん
spiさん、立石俊樹さん
saraさん、若林星弥さん
樹里咲穂さん、森山大輔さん
谷口ゆうなさん、原田優一さん
水谷優月さん、生田志守葉さん、嘉村咲良さん
【製作発表会見】
会見では、演出のポイントや役をどう捉えているかなど2024年の公演が楽しみになるお話を聞くことができました。
▶2024年版演出のポイント演出:藤田俊太郎さん)
一番大きな変更は舞台上に設けた32席のオンステージシート。近い距離で音楽も一緒に感じていただきながら、15人目のバスの乗客として一緒に旅をしていただきたいと思います。これはロンドン版から継続している設えです。
また、この作品の中には、差別が融和する瞬間や人と人が交流し優しい気持ちが生まれる瞬間、心の傷がなくなる瞬間がたくさん訪れます。それを積み重ねることで、最後にお客様と一緒に優しい光、未来を見ることができればと思っています。
▶演じるキャラクターをどう捉えているかまずは顔に大きな傷を負いながらも自らの人生を切り開く為バスの旅に出る主人公ヴァイオレットの三浦透子さんと屋比久知奈さんから。
三浦さん)
ヴァイオレットはいろんな方法で自分の心を守って生きてきた女性だと感じています。人との接し方、言葉の選び方が強くなるのも彼女なりの生きる術ではないか。そんなヴァイオレットが友達と出会って柔らかくなっていく瞬間を舞台上で作れたらいいなと思っています。
屋比久さん)
世界を斜めに見ているけれど根はピュアで真っ直ぐ、いろんな思いを抱えた多面的なキャラクターなので、こうでなければという一つに縛られないようにと心掛けています。旅の中で出会う人との関わり方から見えてくるヴァイオレットの人間性やその変化をしっかりと伝えるために、私自身も感度を上げて大切にヴァイオレット像を捜していきたいと思います。
続いては、ヴァイオレットが運命の出会いを果たす二人の男性、黒人兵士フリック役の東啓介さん、白人兵士モンティ役の立石俊樹さんです。
東さん)
フリックがずっと受けてきた差別、ヴァイオレットと出会うことによる成長、モンティとの関係も掘り下げながら、彼の懐の深さが滲みだすように役を深めていきたいと思います。
立石さん)
モンティとヴァイオレット、モンティとフリック、それぞれの関係性の中で互いの価値観に影響を及ぼします。一見、明るくちょっと品がないようなモンティの振舞いの理由、彼の根底にあるもの―グリーンベレーに行くという決意、モンティの成長―を、稽古を通して深化させていきたいと思います。
こちらはソウルフルな歌声を聴かせるミュージックホール・シンガー役のsaraさん、伝道師のアシスタントを務めるヴァージル役の若林星弥さん、ヴァイオレットが暮すアメリカ南部の片田舎の白人男性リロイの森山大輔さん、ゴスペル聖歌隊ソリストのルーラ役の谷口ゆうなさん。
saraさん)
ミュージックホール・はシンガーが登場するのはヴァイオレットが大きく踏み出す、変化の場面。彼女をしっかりと後押しできるように、力強くかつ自由に音楽を楽しんでいる女性として劇中で出会いたいと思っています。
若林さん)
伝道師様のアシスタントなので、まずは伝道師様とどのような距離感で接しているのかを探っていきたいのと、ヴァイオレットにどう関わっていくのかをより深めていきたいと思います。
森山さん)
リロイは作品冒頭に登場するヴァイオレットの近所に住んでいる白人男性。1960年代のアメリカ南部の空気感を大切にしたいと思っています。
谷口さん)
いくつかの役を演じますが、モーテルの女主人は人種差別の側面が強め、伝道師のところで歌っているルーラはいろいろなことから解放されているキャラクターです。私と東くん、saraちゃんは黒人のキャラクター。子どもの頃に顔に傷を負ったヴァイオレットが抱えるもの、生まれながらに差別的な扱いを受けてきた人、その違いも伝わるように輪郭しっかり目に演じたいと思います。
ヴァイオレットの人生に大きな影響を与える老婦人役の樹里咲穂さん、ヴァイオレットの旅の目的となる、あらゆる傷を癒すという奇跡のテレビ伝道師役の原田優一さん、ヴァイオレットの顔に一生残る傷を作った父親役のspiさんへと続きます。
樹里さん)
私が演じる老婦人は、ヴァイオレットが旅で出会う保守的な考えを持った南部の女性。ちょっとおせっかいで「女性はこう生きるべきなのよ」と熱心に説きます。なかなかわかってもらえないのですが、一生懸命ヴァイオレットに絡んでいきたいと思います(笑)。
原田さん)
今日、衣裳を着てキャストのみなさんの前に出たら「うわぁ、うさんくさい」って言われてしまったのですが、それじゃあいけない! 私の役作りはまだまだだなと思っています。というのも、ヴァイオレットは伝道師に会うためにバスの長旅に出ます。そこまで人を惹きつける、人を熱狂させる、人を信じさせるものとはなんぞや。そこが今回の課題です。また、ヴァイオレットは伝道師を心の拠り所にしていますが、じゃあ伝道師はどう心を保っていたのか。伝道師の“人間味”も考えていきたいと思います。
伝道師さながらに他を制するようなアクションも交えて熱くコメントする原田さんに──
spiさん)原田さんの後ね、めちゃくちゃやりづらいんだよ!
原田さん)どうぞどうぞ、(spiさんは)みんなのパパだからさ!
spiさん)
母親はヴァイオレットが5歳の時に亡くなっているので、男手一つで娘を育てている父親。その娘が13歳の時に斧の刃を事故で飛ばしてしまい彼女の顔に怪我を負わせてしまう。で、父親はどういう人物かって言われると一般男性って答えるんじゃないかな。ポーカーは強いです。あと歌がめちゃくちゃうまい。以上です(笑)。
生田さん)
ヴァイオレットの鏡としてヴァイオレットの旅を優しく見守れたらなって思っています。
嘉村さん)
ヴァイオレットは旅の途中のいろんなところで昔の自分を思い出すんですけど、そこでヤング・ヴァイオレットが出てきます。大人のヴァイオレットが傷を治したい気持ちをちゃんと強く見守るヤング・ヴァイオレットを一生懸命演じたいと思います
水谷さん)
ヴァイオレットの幼少期だなって思ってもらえるように、性格とか台詞の一つひとつの間とかも大人のヴァイオレットに似せて演じたいです。
藤田さん)
ヤング・ヴァイオレットの3人がそれぞれの捉え方をしていたことを、すごく素敵だなと思いました。稽古でもみなさんからたくさんの気づきをいただいています。このメンバーでしか作れないヴァイオレットが誕生しようとしています。それこそが、2019年、20年にご一緒したみなさんに対するリスペクトになるのではないかと思いながら、2024年の現場におります。
▶2人のヴァイオレット藤田さんが語る印象とお二人の衣裳の色合いとマッチしています
藤田さん)
稽古初期に思うことは、三浦透子さんは心の中に強い信念と気持ちの明るさを持ったヴァイオレット、屋比久知奈さんは全身にパワーをみなぎらせたパッションあふれるヴァイオレット。今の段階でも、全然違うキャラクターが生まれつつあります、
▶ヴァイオレットの足跡を辿る旅──ロンドン公演の前、2018年にヴァイオレットが辿ったバスの旅を実際に体験されましたが、それがどう活きていますか。
藤田さん)
一番大きいのはキャストやスタッフのみんなに旅の思い出を語ることができるということ。
どんな町で、どんな風景や人に出会い、どんな差別をされたか。それを話せることがあの旅の価値だと思っています。それをもとにみなさんとディスカッションしています。
谷口さん)
藤田さんが旅の中で撮った写真を見せてくださいました。「バスを降りるとこの風景がありました」、その瞬間の写真から「こういう景色の中にヴァイオレットが暮していたんじゃないかな」という気づきがあります。それは藤田さんが旅に行ってくださったから受け取れるものです。それぞれが受け取ったもの、感情を持って、全員で舞台にしたとき面白いことになると思っています。藤田さんの写真を見た私たちを通して、この作品をお客様にお渡しできると思いますので、ご期待ください!
藤田さん)
写真家になりたかったけど写真家になれなかった。
役者になりたかったけど役者になれなかった。
そんな僕が写真で切り取ったものを役者のみなさんに託しているのが今。ゆうなさんの言葉に感動しています。
▶ヴァイオレット役のお二人が感じる本作音楽の魅力三浦さん)
稽古開始前に、音楽監督の江草さんによる音楽解説の場が設けられ、「物語の展開に合わせて、ここはカントリーミュージック、ここは黒人の方の音楽に変わっていきます」ということを一曲一曲、丁寧にお話してくださいました。本当に一つひとつの音、一つひとつのメロディーに意味があることが改めてわかりました。楽譜にあるヒントを頼りにヴァイオレットの感情がちゃんと最後までたどり着けるよう、すべての音をちゃんと届けたい、歌いたいという気持ちがより一層強まりました。
屋比久さん)
最初の1音を聴くだけで情景が浮かぶ、本当に素敵な楽曲で音楽がお客様を『VIOLET』の世界へ連れていってくれるような印象を持っています。三浦さんがおっしゃったように、一音一音大切に歌うことが、この作品をお客様に伝える一歩になる。演じていても音楽に助けられる部分もありますが、まだ今の段階では音楽に振り回されている自分がいます。音楽と一体になれるようにここから稽古を重ねて参ります。
▶メッセージ三浦さん)
今日の会見からも伝わったかと思いますが、とってもいいチームで稽古ができている実感があります。私自身はたどり着かなくてはならにところまで、まだまだ距離はあると感じていますが、ここから1か月、必ずいい舞台をお見せできるように頑張ります!
屋比久さん)
作品同様に、出会いが人に大きな影響を与えるということを強く感じる稽古です。見てくださる方にとっても、この作品がいい出会いになったらとても嬉しく思います。キャスト全員で一丸となって、楽しみながら頑張ります!
東さん)
2人のヴァイオレットと、それぞれの『VIOLET』をお届けできることを僕も楽しんでいます。藤田さんと前回ご一緒した作品も差別を扱ったものでした。それを遠い話だと思わず、たとえば自分のコンプレックスなどに置き換えてみると、出会いの尊さや助け合うことの素晴らしさ、愛の強さで乗り越えられるものもたくさんあることを感じられるでしょう。劇場で、音楽と僕らの肉声を聴いていただけたらと思います。
立石さん)
本当に毎日が考えることばかりで……、だからこそ有意義な毎日を過ごせています。目的地へ向かうまでに考えてもいなかった出会いがあるのが旅の醍醐味。稽古場でも、素敵なみなさんと一緒に発見を繰り返して最終地点に向かって前向きに進んでいます。楽しみにしていてください。
saraさん)
お客様と一体となり作っていく特別な作品です。私自身も、毎公演毎公演新たな価値観と出会いながら公演期間を過ごしていきたいと思っています。
若林さん)
僕自身、挑戦の日々を送っています。キャストのみなさんの力をお借りして、いいものをお届けできたらいいなと思っております。
森田さん)
本当に仲の良いカンパニーで稽古もやりやすいです。稽古をしている中でも、いい出来になると手ごたえを感じています。ぜひご期待ください!
谷口さん)
私たちにスウィングメンバー2人を加えたキャスト、支えてくれるたくさんのスタッフ、オーケストラのみなさんと一緒に、東京を皮切りに出身地の福岡をはじめ、仙台、大阪にも『VIOLET』をお届けできることを嬉しく思います。各地でもよろしくお願いします!
樹里さん)
私たちはヴァイオレットと出会ういろんなキャラクターを演じます。役ごとに、全然違う顔をお見せできればと、みんなそれぞれが自分が担うキャラクターを工夫して作っています。そちらも楽しみにしていらしてください。
原田さん)
樹里さんがおっしゃったように、私も伝道師としてラスボスのように待ち構えているのですが(笑)、その前にはバスの運転手などを演じます。複数の役を演じながらヴァイオレットとともに旅をすることにも何かの意味があると思っています。『VIOLET』はシンプルなテーマを美しい歌詞や台詞、比喩表現などで届けるシーンの積み重ねで作られる作品。だからこそ、どのシーンも見逃せない、聞き逃せない。役者としてもとても興味深い作品です。自分なりの解読法で演じたいと思っていますので、皆様もぜひご自身の人生経験で読み解いていただければと思います。
spiさん)
パパは作中ではもう死んでいます。フラッシュバックでしか出てきません。全貌を知らない人はいったいどんな話なのかと思うかもしれませんが、パパもめっちゃいいですし、作品も大感動間違いなしです。みなさん、ぜひお越しください。ありがとうございました。
生田さん)
観に来てくれたみなさんと素敵な旅ができるように、思い出に残るようになればいいなと思っています。
嘉村さん)
この作品は見た目ではなく心が大切っていうのを教えてくれる物語だと思います。ヴァイオレットは、まだ私が持っていない複雑な感情をたくさん持っていて、それを表現するのは大変ですが、頑張ります。
水谷さん)
観に来てくれたお客様に、このミュージカルはすごく良かったからもう一回観に来たいなって思ってもらえるように、ヤング・ヴァイオレットの台詞の一つひとつを頑張って考えて、演じていきたいと思っています。
藤田さん)
ラストシーンは劇場中が優しい光に包まれるような舞台をみんなで一緒に作っていきたいと思っております。私たちのカンパニーには2人のヴァイオレット、3人のヤング・ヴァイオレットがいます。衣裳もみんな違います。つまり6バージョンあるということ。ほかのみなさんも6通りのフリック、モンティ……となるでしょう。すべて違う『VIOLET』が、今、立ち上がろうとしています。もし一度ご覧になって気に入っていただけたら、その先にもう5バージョン違う深み、味わいのある『VIOLET』が存在するので、何度も劇場に来ていただけたらと思っております!
STORY
1964年、アメリカ南部の片田舎。
幼い頃、父親による不慮の事故で顔に大きな傷を負ったヴァイオレットは、
25歳の今まで人目を避けて暮らしていた。
しかし今日、彼女は決意の表情でバス停にいる。
あらゆる傷を癒す奇跡のテレビ伝道師に会う為、西へ1500キロ、人生初の旅に出るのだ。
長距離バスに揺られながら、ヴァイオレットは様々な人と多様な価値観に出会い、
少しずつ変化していく。長い旅の先に彼女が辿り着いたのは―。
初出時お名前に誤表記がありました。お詫びして訂正いたします。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人