新国立劇場2024/2025シーズン 演劇 ラインアップ説明会レポート

新国立劇場2024/2025シーズン 演劇のラインアップが発表会見が行われました。登壇された小川絵梨子芸術監督より作品の紹介、そこに込めた思いが語られ、個々の作品への興味とともに、シリーズとして楽しめる企画、シーズン全体を貫くテーマ、挑戦など来シーズンへの期待が高まった会見の様子をレポートいたします。



小川絵梨子芸術監督

このラインアップを企画したのはロシアのウクライナ侵攻が始まった頃、恐怖や不安の中でも生きることや未来への希望を求め葛藤する人々を丁寧に描く物語が多く集まりました。



2024年10月 『ピローマン』
成河、亀田佳明

シーズンの幕開けはマーティン・マクドナー作『ピローマン』。私が演出させていただきます。10年ほど前に別のプロダクションで演出をした作品ですが、今回はキャスト・コンセプトを一新した形でお届けします。ある架空の国を舞台とし、理不尽な状況下での「物語」「物語を生み出す作り手」の役割や意義、責任、そして物語が紡ぐべき希望について問う作品になればと考えています。マクドナーは「スリー・ビルボード」や「イニシェリン島の精霊」など、映画監督としても活躍されているのでそちらでご存じの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

コロナ禍で活動が止まったときに、「物語」の意義、私たちの場合は「舞台芸術」とも言えますが、やはりそこに意義があるのではないか。そして作り手はどんな責務を感じながら物語を作るべきなのかについて考えました。世の中が苦しく、不安定であるほど物語の意義が問われるということを感じているので、10年ほど前に上演したときよりその視点が色濃くなるでしょう。この作品の主人公である作家のカトゥリアンは傲慢なところもある人物ですが、彼が物語を紡ぐ必要性を知っていく、それを物語る作品です。また、虐待されるこどもたちというところも描かれる作品で、それをガラリと変えてしまうということはありませんが、彼らの歴史としてそこも描きながら、それを超えて生まれてきたほうがよかったと思ってもらうために物語があったというところに演出の軸を据えたいと考えています。
(気になるワード:理不尽 物語 希望)



2024年11月『テーバイ』
上段)植本純米、加藤理恵、今井朋彦
下段)久保酎吉、池田有希子、木戸邑弥

11月は新作の『テーバイ』、上演台本・演出は新国立劇場初登場の船岩祐太さんです。作品を育てていく「こつこつプロジェクト ―ディベロップメント―」(第二期)からの上演です。オイディプスやクレオンの物語、ギリシア悲劇三作品を再構築して現代的要素を加えた作品となります。よき為政者になろうとしながらも、不安や迷い、自己欺瞞と葛藤し、困難を経験しながらテーバイという地で生きていこうとする為政者、人々を描きます。小劇場で一度試演会をしておりますが、さらにアップデートさせていきます。多くのキャストがこつこつプロジェクトからの参加となります。
(為政者 再構築 現代的要素 (こつこつ))



2024年12月『白衛軍 The White Guard』
上段)村井良大、前田亜季
下段)上山竜治、大場泰正、大鷹明良

12月は日本初演の『白衛軍』です。20世紀ロシアを代表する作家ミハイル・ブルガーコフの小説をもとに、オーストラリアの劇作家アンドリュー・アプトンにより戯曲化されたアプトン版に基づいた上演となります。
ロシア革命直後、ソヴィエト政権が誕生するもまだ内戦が続くウクライナのキーウのある一家の物語です。戦争、侵略、あらゆる正義の名のもとに行われる破壊活動は、個人、家族の生き方、もちろん命を潰してしまう。まさに今に繋がる物語です。中劇場の上演で、演出は上村聡史さんです。
(戦争 正義 キーウ)



2025年4月こつこつプロジェクト Studio公演『夜の道づれ』
上段)石橋徹郎、金子岳憲
下段)林田航平、峰 一作、滝沢花野

2025年4月にはこつこつプロジェクトStudio公演と題して『夜の道づれ』をお届けします。日本を代表する劇作家、三好十郎さんによるもともとはラジオドラマとして書かれた作品です。主人公の二人が戦後日本の夜の甲州街道をずっと歩き続けるという話で、この「歩み」というのが象徴的であり、物語の軸となります。日本が、どのように歩んできたのか、そしてどのような道を選択して歩んでいくべきかを問いかける作品となっています。演出は新国立劇場初登場の柳沼昭徳さんです。
(戦後 歩く 選択 (こつこつ)

こちらもこつこつプロジェクトからの作品です。Studio公演というのは普段の公演よりも舞台上の美術などを少し簡素にした代わりにチケット代を抑えた公演になります。低価格にすることで、たくさんのお客様に見ていただき、お客様とのセッションなども行い作品の強度を上げていく。こつこつプロジェクトの延長という形での新しい試みとなります。そして、お客様と共に作品を練り上げていくような作品創りの場をさらに開拓していこうと考えています。


ここからはシリーズ「光景―ここから先へと―」の3作品となります。
3作品ともに登場人物はほぼ家族のみとなります。社会の最小単位とも言われる家族が織りなす光景を通して今の日本、世界、社会のありさまを映し出し、それを手掛かりにみんなで考えたり、もう一度出会ったりしていこうという意図のシリーズです。

シリーズタイトルについては、家族という一見ありふれた光景の中に現代の世相が詰まっている。それを通して今の社会、我々が抱えている問題ともう一度出会っていく、そこからさらに未来に向けて何を考えるかということをテーマにしています。今を知り、未来に向けて選択していく責任があることを意図しお届けするシリーズです。現代では血の繋がりだけでなく、もっと豊かな、新しい家族の形があるので、家族と題するならもっと多様な形を描く必要があると考えています。今回はその切り口ではないのでシリーズタイトルに家族という言葉は入れませんでした。



『母』舞台写真 提供:ブルノ国立劇場

2025年5~6月シリーズ「光景―ここから先へと―」Vol.1 海外招聘公演『母』

シリーズの第一作目はカレル・チャペックの『母』。チェコ共和国・ブルノ国立劇場からの招聘作品です。先日、ブルノ国立劇場に行き作品も拝見し、芸術監督、演出家とお話することもできました。『母』はブルノ国立劇場のレパートリー作品のひとつで、昨年、ハマスによる攻撃の直後にテレアビブで上演した際に観客から「今の自分たちの話だ」との反応があったという話も聞かせてくれました。とても有意義な訪問でした。『母』上演時にはお二人もいらっしゃる予定ですので、公演だけでなく、お話を伺うような国際交流の場も設けます。
本作では、戦時下において出兵する息子たちとその母を描き、戦争という大きな暴力の中で個人の悲劇と人間性への葛藤が語られます。
(息子 母 (国際交流))


2025年6月、シリーズ第二作目はスティーヴン・キャラム作の『ザ・ヒューマンズー人間たち』。ちょっと不思議な作品です。家族の日常会話から、家族であろうと共有しえない、打ち明けられない個人が抱えるそこはかとない不安や果てしない恐怖がこぼれだしていくようなどこか現代的な怪談噺のような要素を持っている作品です。そしてそこから出口に向かおうとしている人々の話でもあります。アメリカで高い評価を得て、トニー賞受賞後の21年に映画製作・配給会社「A24」によって映画化もされています。演出は桑原裕子さんです。
(家族 個人 恐怖)


2025年7月、シリーズの最後は蓬莱竜太さんが劇場に書き下ろした作品、『消えていくなら朝』。蓬莱さんご自身の演出、フルオーディションでの公演となります。今、たくさんの役者さんのご協力を得ながら、オーディションを進めています。この作品は、宗教二世の問題にも斬り込んだ作品で、2020年代となった今、さらに鮮明で身近な物語として我々に響くのではないかと考えております。
(宗教二世 現代 (フルオーディション))

以上がラインアップとなりますが、ほかにもこつこつプロジェクトも第3期がスタートし、新しい演出家の方にご参加いただきます。また、ギャラリープロジェクトも継続し、そのほか、ギャラリープロジェクトも続いて参ります。視聴覚に障がいのある方にも作品を楽しんでいただけるような公演、観劇サポートにも取り組んで参ります。



最後に簡単なまとめとなりますが、これまでの稲葉賀恵さんや五戸真理枝さんのように、2024/2025シーズンのラインナップには船岩祐太さん、柳沼昭徳さんが初登場します。この先も新確立劇場は新しい、そして若手の方々に作品を作っていただく機会を積極的に設けていきたいと考えております。また、フルオーディションやこつこつプロジェクトに加え、新しい試みとしてStudio公演を行います。さらにプレビュー公演を設けることで、様々な演劇の作り方や演劇の創造の場をさらに模索開拓していきたいと考えています。

そしてこれまでにもフランスの国立オデオン劇場や、国立ではございませんが英国のロイヤルコート劇場と繋がりを持って参りましたが、それに続いてチェコのブルノ国立劇場との新しい出会い、繋がりから来シーズンに『母』の招聘公演を行うことが叶いました。まだ表立った企画としてはお伝えできないものものありますが、今後も英国ナショナル・シアターなど世界の国立劇場との繋がりを通して演劇的、文化的な国際交流を積極的に行っていきたいと思います。



直感的に気になるワードを書き出してみましたが、それだけを見るとちょっと怯んでしまいそうな並びのものもありますね。でも、もちろんそれだけの話ではなく、いずれの作品にも通じるのはそれを「問う」作品であるということ。自分自身が、演劇からなにを問われ、なにを思うのか。2024/2025シーズンの新国立劇場にも、そんな楽しみがいっぱいありそうです。


【新国立劇場2024/2025シーズン 演劇 ラインアップ】
2024年10月『ピローマン』
2024年11月『テーバイ』
2024年12月『白衛軍 The White Guard』
2025年4月こつこつプロジェクト Studio公演『夜の道づれ』
2025年5~6月シリーズ「光景―ここから先へと―」Vol.1 海外招聘公演『母』
2025年6月シリーズ「光景―ここから先へと―」Vol.2『ザ・ヒューマンズ─人間たち』
2025年7月シリーズ「光景―ここから先へと―」Vol.3『消えていくなら朝』
こつこつプロジェクト第三期

<ウェブサイト>
https://www.nntt.jac.go.jp/play/news/detail/13_027077.html

おけぴ取材班:chiaki(会見撮影・文)監修:おけぴ管理人

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