【南座 新開場!】高麗屋三代襲名披露「吉例顔見世興行」新・松本幸四郎さんインタビュー



 耐震補強大規模改修工事、劇場内の客席や舞台機構のリニューアルを経て、11月1日に新開場する南座

 その幕開けとなる「吉例顔見世興行」は、松本幸四郎改め 二代目松本白鸚さん、市川染五郎改め 十代目松本幸四郎さん、松本金太郎改め 八代目市川染五郎さん、高麗屋三世代そろっての襲名披露を兼ねた公演となります。

 憧れの役だったという『勧進帳』武蔵坊弁慶のほか、染五郎さんと親子で踊る『連獅子』、『雁のたより』初役の若旦那万屋金之助と、異なる魅力の三役に挑む松本幸四郎さんにお話を聞きました。








──1月の歌舞伎座以来となる三世代揃っての襲名披露。『勧進帳』では白鸚さんの富樫、染五郎さんの義経、そして幸四郎さんの弁慶です。

 親、子、孫の三代で『勧進帳』の三役をつとめるのは、おそらく歌舞伎が始まって以来のこと。襲名披露ということで、ありがたいチャンスをいただきました。
 弁慶は曽祖父の七代目松本幸四郎から代々が当り役にしてきた、高麗屋にとってゆかりのある大切な役。襲名披露で勤める幸せをあらためて感じています。


──今回で4度目となる弁慶役。回数を重ねて、感じることは?

 やればやるほど大変な役。その“大変さ”をやっと実感し始めたところです。初めて弁慶を勤めたのは4年前。そのときよりも今年1月の歌舞伎座での襲名披露のほうが大変でした。そして7月の大阪松竹座はもっと大変だった。
 もとより大役であることは間違いないのですが、その“大変さ”を実感するにも時間がかかる。演じれば演じるほど“大変さ”がわかってくる。そんなお役だと思います。


──“大変さ”というのは、体力的なことでしょうか。

 心身ともに、ですね。弁慶役はしゃべるだけでも体力を使います。セリフの強弱、緩急…ひとことひとことに、たくさんのものが詰まっていますので、それをこなすだけの精神力と体力が必要です。
 憧れの役でしたから最初は半分夢見心地でしたが、ニ度目、三度目となると…できなかったことを克服していく、それがどんどん増えていく…ほんとうに“大変”だな、と。


──1月は中村吉右衛門さん、7月は片岡仁左衛門さんの富樫、そして今回は4年前と同じ白鸚さん(当時は幸四郎)の富樫です。やはり相手が変わると演技も変わってくるものでしょうか。

 僕の弁慶は基本的には父に教わったもの。とはいえ、毎回ひとつの芝居を上演するわけですので、お客様が感じるものも舞台ごとに変わるのかもしれません。1月は叔父(吉右衛門さん)に細かく教えていただきましたし、7月の大阪松竹座では松嶋屋のおじさま(仁左衛門さん)に「型はいろいろあるが、自分が教わったものはこうだった」と、毎日たくさんのことを教えていただきました。
 

──演じていくうちに、幸四郎さんならではの弁慶が生まれてくる?

 今は「自分なりの弁慶」ということは全く考えていません。よく回数を演じるごとに「その人なりの役になってくる」などと言いますが、弁慶については、どれだけ父がやってきたことをそのままお見せできるか。父、そして祖父、曽祖父がやってきたことを、いかに自分の体を通して、いま同じ時代を生きているみなさまにお伝えするか。それが自分の役目だと思っています。


──使命感、ですね。

 そうですね。とはいえ「義務感」ではないんです。なんといっても憧れの役であり、目指してきた役ですので、それを自分の体を通してお見せしたい、やってみたいという思いです。




──今回はさらにその先の世代、新・染五郎さんと三代での襲名披露となります。

 息子は13歳ですが、体もデカイですし(笑)、声変わりも始まって、もう子役ができる年齢ではなくなりました。これからは大人の役ができないと歌舞伎の芝居に出ることはできない。そのタイミングで襲名披露というチャンスをいただいた。これがほんとうの意味での始まりだと思って、しっかり勤めてもらいたいですね。
 この年齢で義経役を1ヶ月できるなんて普通だったらありえないこと。無理で、無謀なことですが、大きなチャンスです。うまく演じようなどと思わず、いまの自分が持っている力だけでは太刀打ちできない役だと実感してほしい。義経しかり、連獅子しかり、次にこの役を自分の力でつかめる日が一日でも早く来るように、いまはその“大変さ”を実感するときじゃないかなと思います。


──同じ役者同士として、幸四郎さんから見た染五郎さんについては?

 芝居が好きでやっている、その思いを感じることはありますね。けれども役者は知識だけではなく、実際に自分の体を通して表現するのが役割です。これからは芝居への思いを、体を動かして実践していくとき。失敗することもあるでしょう。それを恐れず、とにかく稽古をすること。そのときの精一杯で舞台をつとめていくことが大切だと思います。


──夜の部の最後は、笑いどころもたくさんある『雁のたより』。弁慶のあとに上方の若旦那役で出てくるのがおもしろいですね。関西弁でのセリフも楽しみです。

 芝居全体については鴈治郎のおじさまに教えていただくとしても、この役そのものは誰かに教えてもらって「一生懸命にやりました!」という役ではないんです。力を入れてストーリーを追うのではなく、上方の雰囲気を楽しんでもらうのが一番というタイプの芝居です。演じる方にとってはそれが逆にむずかしいところでもあるんですよ。上方の役者ではない僕がこの世界にどれだけ馴染んでいられるか…むずかしいですが、楽しみですね。
 作者の金沢龍玉というのは、三世中村歌右衛門のペンネーム。役者さんが書いた芝居なんです。演じている人間がどれだけ楽しんでやれるか。それがこの芝居の大事なところだと思います。とにかく「上方の芝居が好き」、その思いでやるほかないですね。


──見る側も、最後が柔らかい上方狂言でほっとできそうです。

 さまざまな演目を一度に見られるのが歌舞伎の魅力でもありますので、料理のフルコースのように、前菜、メイン、箸休め、そしてデザートと、たくさんの味を楽しんでいただければと思います。

 


──それでは最後に、新開場となる南座への思いを聞かせてください。

 歌舞伎発祥の地で400年の歴史がある劇場。その南座が新しく生まれ変わり、さまざまな試みができる劇場になりました。新たなものへの挑戦というのが、とても京都らしいと思います。京都というと保守的なイメージがあるかもしれませんが、僕の考える京都はどちらかというと“破壊的”(笑)。良い意味でとてもパンクな場所だと思っているんです。歴史を大事にしながら新しいことを生んでいく。もともと南座って企画物や新作がたくさんかかる劇場なんです。これからも新しいものがつぎつぎに発信されていく場所になるのではないでしょうか。もちろんその土台には歌舞伎発祥の地だからこその歴史がある。根が生えた強さ、底力を感じることのできる場所です。その南座の新開場を、歌舞伎の財産ともいえる傑作で幕を開けることができる。こんなに嬉しいことはありません。
 11月は京都の街を楽しむにも絶好の季節。劇場の中でも外でも、そのときにしかない景色を感じていただければと思います。





 『勧進帳』『連獅子』『雁のたより』のほか、『毛抜』『寿曽我対面』『封印切』、そして白鸚さんが幡随院長兵衛に扮する『御存鈴ヶ森』と、歌舞伎鑑賞ビギナーにも馴染みのある演目がずらりと並んだ、南座吉例顔見世興行」は、11月1日に初日を迎えます。


南座新開場! 2018-2019公演ラインナップ発表会の模様はこちら
(幸四郎さんと、南座公式キャラクター・みなみーなのツーショット写真♪)

南座 新開場記念 MOVIX京都にてシネマ歌舞伎特集上映 開催決定!
(幸四郎さん(当時は染五郎さん)ご出演『野田版 研辰の討たれ』『歌舞伎NEXT 阿弖流為』も♪)
 


<取材こぼれ話♪>
 京都での1ヶ月興行に出演するのは久しぶりという幸四郎さん。お芝居以外で楽しみにされていることをお聞きしました。

幸四郎さん:飲みに行くこと! …これは京都に限らないか(笑)
 
──昼夜たくさんの出番で忙しい舞台出演、出かける時間はありそうですか…? 

幸四郎さん:意外と大丈夫なんですよね。時間は作るものなので(笑)。南座に1ヶ月出るのは久しぶりですが、他の仕事で京都に来たときに必ず行くのは、八坂さんの近くにある矢場(園山大弓射場)。誰でも入れるんです。矢が10本あって、あたるとだんだん的が小さくなっていく。何ヶ月かはその記録を残しておいてくれるので、次に行ったときはまたそこから始める。集中して時間を過ごす、気分転換ができる場所です。


<こぼれ話 その2♪>
 南座新開場にあわせて劇場内に2つのお店が新オープン! 喫茶も楽しめる「とらや」(限定メニュー「きな粉あんみつ」、南座限定パッケージの小形羊羹も♪)と、「なだ万茶寮」(幕間の食事やお弁当販売など)。幕間のお楽しみがまた増えそうです。


京都四條 南座


南座発祥四百年 南座新開場記念
京の年中行事 當る亥歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎

二代目 松本白鸚     
十代目 松本幸四郎 襲名披露
八代目 市川染五郎 

京都四條 南座
平成30年11月1日(木)~25日(日)

公演情報詳細(歌舞伎美人)

おけぴ取材班:mamiko, おけぴ管理人(撮影)

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