ミュージカル『人生のピース』木村花代さん&藤森慎吾さん対談 プチ稽古場レポ♪

 8月8日より東京芸術劇場シアターウエストにて上演されるミュージカル『人生のピース』にご出演の木村花代さん藤森慎吾さん(オリエンタルラジオ)にお話をうかがいました。



藤森慎吾さん、木村花代さん

 朝比奈あすかさんの同名小説をミュージカル化した本作。いわゆる“婚活ストーリー”なのですが、それだけではない主人公の潤子の細やかで赤裸々な心理描写が時に興味深く、時に共感を呼ぶ物語。脚本・演出を手掛けるのは横山清崇さん、音楽は小澤時史さんによる書き下ろしです!


【初共演!】


──藤森さんは本作が初めてのミュージカル、一方、木村さんはミュージカル界で確かなキャリアを積んでいらっしゃいます。そんなお二人が今回初共演ということになります。

木村:この共演が決まってすぐにSNSでメッセージをいただいて、なんて律儀な方なんだろうと思いました。そして、何度かやり取りをしている中で、お時間を作って私が出演した『キューティ・ブロンド』を観に来てくださいました。

藤森:そこで初めて花代さんの舞台を拝見し、圧巻の歌と芝居でもう興奮しっぱなしでした。観劇後に楽屋で初対面を果たし直接ご挨拶したのですが、その時は「この方と共演できるんだ……」という緊張とワクワクの入り交じった気持ちでしたね。

木村:あの時の役……なかなかインパクトがありましたしね(笑)。


【あれ、これは私の話かな】


──確かに(笑)。続いては作品についてうかがいます。原作や台本を読んだ印象は。



木村:自分が潤子を演じるという目線で読みましたが、「あれ、これは私の話かな」と思いました。潤子の考え方や心境の揺れ動きにわかる!わかる!というところがたくさんあって。割と流されがちな彼女の“曖昧さ”が私にもぴったりはまりました。終始、我がことのように読み進めました。

藤森:男性から見ると、1つは女性って……(言葉に詰まる)、ここの言葉選びが大事になりますよね。つまりそういうことです(笑)。本の帯に「これを人生の参考書にさせてもらいます」と書かせていただきましたが、そのくらい女性心理をより深く知ることができる本です。それと同時に、現代を舞台にリアルな日常を描いた作品であるところにも面白さを感じあっという間に読んでしまいました。

木村:誰かの人生を垣間見るようなリアリティと面白さがありますよね。

──そんな物語がミュージカルとして舞台化されます。実際にお稽古が始まりましたが、初ミュージカルの藤森さん、ミュージカルはいかがですか。




この後「あまりチャラくなりすぎないように」との横山さんの言葉で稽古場に笑いが!

藤森:まだまだ語れるほどできていないのですが、稽古の序盤は芝居を中心に、最近は歌という流れで稽古が進んでいますが、僕はただただみなさんについていくのに必死です。ただ、昨日初めてみなさんと一緒に歌いながら芝居から歌、振りもつけてシーンをやってみたのですが、その時、ふと華やかな舞台に自分が立っている感覚がしたんです。そこはシンプルに楽しかったですね。キラキラしてる!って(笑)。まだそのくらいしかお話できなくて……。

──それはミュージカルの大きな魅力ですよね。

木村:そうですよね。逆に私はミュージカル一本でやってきているので、それが普通になってしまっていて。藤森さんの感覚は新鮮で、私にとっても気づきになります。お芝居から歌へ、しゃべり言葉が歌になっていくので、曲に合わせて台詞も言わなくてはいけない。そこに慣れるのには時間がかかりますし、そこに戸惑っていらっしゃるのを見て、「大丈夫です、誰もが通る道ですから」とお話したんです。

藤森:アドバイス、とてもありがたかったです。メチャクチャ戸惑いますよ。あれあれ、何だっけ?って。一か所つまずいたら、そこから真っ白。実際、自分でもびっくりするくらい反復練習して、よし絶対大丈夫!と思って臨んでもそうなってしまうんです。これは慣れていくしかないんですかね。




木村:慣れていくことと、あとは気持ちの繋げ方。歌になると、どうしてもカリカチュアしなくてはいけない部分もあるので、気持ちもそこにもっていかなくてはならないんです。そのために台詞から徐々に気持ちも上げていくような逆算も必要になってくるんです。特に、これは私自身も課題にしているのですが、この作品はここで一曲ドーン!という作りのショー寄りのミュージカルではなく、リアルな日常を描いたお芝居寄りの歌い方を求められる作品です。ただ、曲がポップだったり、ぶっ飛んでいたり(笑)、テンションは上げていかなくてはならない。そのバランスについては私も模索中です。

藤森:勉強になります。

木村:そのためのお稽古期間ですから!一緒に頑張りましょう!


【役者の呼吸に合った音楽】


──今、話題に出た楽曲ですが小澤さんの書き下ろしということでとても楽しみです。



金子役をダブルキャストで演じるのは三宅祐輔さん


木村:とても耳馴染みがいい素敵で楽しい楽曲ぞろいですよ。演出の横山さんがイメージを伝え、それを小澤さんが紡いだ音楽。これまでにも小澤さんの作品をご覧になった方には、「このフレーズ小澤さんだよね」というところもあるので、そこも楽しみにしていてください。

──木村さんも小澤さんとご一緒される機会はこれまでにも何作かありました。

木村:今回、小澤さんが音楽を手掛けられると聞きとても心強かったです。さらに今回は生演奏のバンドも小澤さんご自身が率いてくださるので、小澤さんの音楽の魅力である役者の呼吸に合わせて作られた音楽を、役者の呼吸に合わせて弾いてくださる。それによって役者も自然に芝居し歌うことができますし、お客様も歌と芝居のギャップの違和感なく楽しんでいただけると思います。絶大な信頼を寄せる音楽家さんです。

藤森:僕はミュージカルというと、男性はヒロインの手を取りバラードを朗々と歌い上げるというイメージを持っていましたのでメチャメチャアップテンポのポップな曲が多くてビックリしました。それはたぶん、それがキャラクターの心情や物語を伝える上で一番適しているからなんですね。僕が演じる金子さんの曲も楽しく元気なポジティブな曲、こういうタイプのミュージカルもあるんだという発見にもワクワクしています。


【等身大のキャラクター】


──ここからはそれぞれの役について。今、名前が飛び出した藤森さん演じる金子さん、そして潤子さんはどんな人物ですか。

藤森:金子さんは真面目で恥ずかしがり屋な30代、独身男子。普段の藤森とは真逆なキャラクターではありますが、普段のTVの藤森をチャラ男というキャラクターの芝居だとして、そんなチャラ男の外皮を全部はぎ取っていったらその中に金子さんがいた!そうなったら面白いなという勝手な楽しみ方をしています。

木村:潤子さんは大手食品メーカーの広報部で働く30代女性です。出世欲とかはあまりないのですが、能力を買われて仕事を任され、結果として出世していく。とは言え、基本的にどこにでもいる“一般女性”です。

──木村さんの“一般女性”、逆にレアかもしれませんね。


木村:そうなんです。魔法使いでも、外国人でもなく、現代日本で生活している等身大の女性。演じていてもいつもとちょっとちがう感覚があります。自分自身の人生経験の引き出しからピックアップするところがいつも以上に多い気がします。ですので、両親や友人が見たら「花代そのものだ」と言われそう(笑)。別の人格になり切るというより飾らない等身大の自分でいることは怖いことでもありますが、それが必要になる役。ただそれ故に、稽古が終わり帰宅しても意識的にスイッチをOFFに切り替えないと、思考のラインが一緒なのでずっと潤子を引きずってしまうところもあります。そのくらい自分の延長と捉えられるキャラクターです。


【芝居のキャッチボールを楽しむ】


──ここからお稽古は後半戦に突入です。

藤森:すべてが未体験なので、ここからどうなっていくんですか。

木村:ここからはおそらくシーン毎に芝居を掘り下げたり、通した時の流れを見たり、衣裳や音響、各セクションが加わってきます。そうそう!稽古場にバンドさんも入ります。今回、なんと6人編成。

──小劇場でのミュージカル、生演奏というだけでも贅沢だと思っていたらさらに!!

木村:日常での出来事を描いているので、巻き起こる事柄はそこまでの大事件ではないんです。でも、だからこそ繊細な心理描写が必要。それを音としても表現したいという意向で6人編成になったそうです。しかも、6人の中には2人の潤子と同じ30代の独身女性がいらっしゃいます。それによって主人公の心理に寄り添い、引っ張るような音楽になるのではという小澤さんの試みも!そんな音楽の化学反応も楽しみにしていください。

藤森:深い!僕は、今の小澤さんのピアノだけですごく楽しいんですよ。それがバンドになったら、きっとたまらないですね。

──お稽古を通して、お互いをどう見ていますか。


アンサンブルのみなさんも歌にダンスに八面六臂の大活躍!

木村:「そんなに早く台本を離さないでくださいよ~」という感じです。お忙しくされている中で、すごく真摯に向き合っていらっしゃる姿勢が印象的です。稽古場の空き時間もずっと練習されていますよね。

藤森:ただただ必死なんです。みなさんと雑談もしたいのですが、だめ……、まったく余裕がありません。みなさんやっぱりすごいんですよ。この中で初めてのミュージカルをやらせていただけることはとても光栄ですし、貴重な経験です。そのために自分にできることをやるだけです。歌も僕は2曲ほどでヒーヒー言っていますが、座長(木村さん)は台詞も歌も全てが半端ない分量なんです。

木村:ここまで出ずっぱりというのは久しぶりです。

藤森:そこに取り組む姿に、僕だけでなくみんなが引っ張ってもらっています。あとは今更花代さんにこんなことを言う人もいないかもしれませんが……、声がきれい。

木村:わーい!褒められた!(笑)

藤森:だから稽古をしていても花代さんの歌の場面になると「花代さんの歌が聴ける!」とお客さんのように楽しんでいます。

──本番に向けて!



藤森:演じ、歌っていて気持ちが乗る瞬間があったら楽しいだろうと思うのですが、もっともっと稽古をしないとその境地にはたどり着けません。稽古の一日一日を大事にするのみです。もうね、久しぶりにこんなに真面目にやっています(笑)。普段のお仕事で“練習”ってあまりないんです。積み重ねていくという意味で近いのはマラソンをやっていたときの気持ちですね。積み重ねていってゴールした時、気持ちいんだよな!それを信じて、日々緊張感を持って稽古していこうと思います。

木村:最終的に舞台の上で自由に生きたいと思っています。ミュージカルだからこうしなくてはいけないというのを外していきたい。演出の横山さんも「その時に生まれた感情で」とおっしゃってくれるので、それを楽しみたいと思います。もちろん決まりごともありますが、その中で毎回新鮮にイキイキ演じられたらと。実際は固めたほうが楽なんですよね、自由であることは怖さもありますし。でも、その瞬間に起こることを楽しみながら、会話や歌、その自由な表現を追求したいと思います。藤森さんをはじめ、みなさんとどんな芝居のキャッチボールになるのか、どんな球が来ても受け止め、投げ返せるようにしたいと思います。

藤森:暴投しないように……。

木村:それも覚悟しています(笑)。お稽古をしていても、たぶん経験したことのないような球種も飛んでくるのかなって。でも、それも含めて魅力となる作品だと思っています。

藤森:心強いです。よろしくお願いします!

木村:こちらこそ!


【お稽古の様子】


 見学したのは潤子と金子の出会いの場面などお二人のシーンを中心に。潤子が婚活パーティーで出会うのが酒屋を営む実直で一本気な金子。原作を読まれた方には、あっ、あのシーンだとピンときますよね。潤子の率直すぎる心の声を交えながら進むシーン。木村さんの絶妙な台詞の間で笑いが生まれます。ほかにも商品であるお酒への愛情を歌う金子のポップな場面なども、活字で読んだあのシーンがこう舞台に立ちあがるんだ!とても自然に芝居に、歌になっています。素敵なオリジナルミュージカル誕生の瞬間をお見逃しなく。



演出の横山清崇さんと子役のみなさん(ダブルキャストでのご出演となります)

 こちら↓の2枚は同じシーンを金子さん違い(ダブルキャスト)で!ご覧の通り、それぞれ自由度のある動きです。ダンスシーンも、藤森さんと二代目花柳輔蔵の名で日本舞踊家としても活動されている三宅祐輔さん、それぞれの個性を活かした振りも取り入れています!両金子さんの違いを楽しむのもアリ、そしてそれによって潤子がどう見えるのか。ダブルキャストの妙も楽しめそうですよ。




【公演情報】
ミュージカル『人生のピース』
2019年8月8日(木)~12日(祝・月)@東京芸術劇場 シアターウエスト

原作 朝比奈あすか 作品 「人生のピース」(双葉社)

脚本・演出:横山清崇
作曲・音楽監督:小澤時史

<キャスト>
潤子:木村花代
金子:藤森慎吾(オリエンタルラジオ)(W)・三宅祐輔(W)
みさ緒:五十嵐可絵
礼香:青山郁代
真知子:遠山景織子初雁 弘中麻紀
葛西:友石竜也
河北:斎藤准一郎(W)・福留瞬(Candy Boy)(W)
江里菜:吉田萌美
有馬聡一朗 / 吉良茉由子 / 琴音和葉 / 竹村球斗 / 月那春陽 / 保々あず美
少女:小野島凜(W)・鳥居佐和(W)・林歩美(W)・山口陽愛(W)
※(W)の記載はダブルキャストとなります。

<バンドメンバー>
Keyboard 小澤時史/Guitar 成尾憲治/Bass 室屋研吾
Drums 森拓也/Reed 野澤美香/Cello 石貝梨華

公演HPはこちらから

おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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