シネマ歌舞伎『スーパー歌舞伎 ヤマトタケル』市川團子さんトークイベントレポート~スーパー歌舞伎は僕の導(しるべ)~

 映画館で歌舞伎作品を毎月楽しめる≪月イチ歌舞伎≫、10月はスーパー歌舞伎の原点となった『ヤマトタケル』を上映中(~24日まで、東劇のみ31日まで)。上映を記念して、本作で初舞台を踏んだ市川團子さんによるトークイベントが開催されました。初舞台から約7年、スーパー歌舞伎への深い思い、無茶ぶり?!にも快く応えるサービス精神、團子さんの魅力あふれるひとときとなりました。



市川團子さん

『スーパー歌舞伎 ヤマトタケル』(HPより)

 哲学者 梅原猛が三代目市川猿之助(二代目猿翁)のために書き下ろし、神話のヤマトタケルの波瀾の半生を雄大なドラマに仕立てた本作は、昭和六十一年に初演され、"スーパー歌舞伎"という新ジャンルを築き上げた歴史的作品です。

 新橋演舞場における、猿之助の二代目市川猿翁、亀治郎の四代目市川猿之助、香川照之の九代目市川中車 襲名、中車の子息 五代目市川團子の初舞台で上演され、日本中を席巻した『ヤマトタケル』がふたたび映像でよみがえります。

 手に汗握る冒険、親子の確執、姫君たちとのロマンスが、早替りや、立ち廻り、宙乗りなど、舞台上で所狭しとくり広げられるスペクタクルとともにドラマティックに描かれます。



超満員のお客様の拍手に迎えられ團子さん登場!

──本作は2012年(平成24年)6月に上演されました。当時8歳、初舞台でしたが、公演時を振り返ると。



 まず家で猿四郎さんに、その後で稽古場でおじいさま(猿翁さん)にお稽古をつけていただきました。(劇中の)「お父様」という台詞、最初はただ叫んでいたのですが、じいじに「ご先祖様に届くように、遠くに言いなさい」と教えられました。それによって遠くに言う意識ができ、技術が身につきました。

──「お父様~」、どんな感じで。



ここで?


お父様~

(拍手)

 さらにここで当時のバックステージ特別映像が。

 まず画面に登場したのはお父様である中車さん。「歌舞伎の舞台に初めて参加させていただいている……」、画面から溢れる緊張感!一方で、團子少年は「パパ、遊びまくっていること言ってもイイ?」と無邪気。そして「幕が開く瞬間まで遊びほうけていて、緊張感0%なんです。頑張ります」と余裕のコメント。

 これにはお客様爆笑、團子さんもはにかみ笑顔でした。

──映像をご覧になって、いかがですか。



 冒頭(お父様のドアップ)に一番びっくりしました(笑)。それにしても、こんなに失礼な少年だったんですね。確かに、緊張感がなかったとは言いませんが、ガチガチではなかったかな。口上前も幕が開くまで横の人と遊んでいました。幕が開くと涼しい空気が入ってきて、それで(気持ちが)切り替わるというイメージでした。そして横(で頭を下げている父)を見ると、1分間に30滴くらい汗が垂れていて。すごく緊張しているなと思ったことを思い出しました。

──團子さんは、今も緊張はされないのですか。

 1か月公演の初日は緊張しますが、2日目くらいからは慣れて緊張はあまりしなくなります。ただ、1回限りの公演となる踊りの会などは緊張します。

──初舞台、実際に舞台に立っての思い出は。

 初日に「お父様~」という台詞を言ったとき、お客様の向こうでおじいさまや、ひいおじいさまも見てくれていると感じました。稽古場では感じたことのない感覚で。それによってすごく安心しました。

──初舞台から7年、心境の変化は。

 おじいさまの本に「歌舞伎はどの時代においても変化に対応してきたから残っている」という言葉がありました。その言葉によって歌舞伎をやっていきたいという思いが強くなり、今年の八月納涼歌舞伎では自発的にお稽古をしたいと思うことが増えました。これからの時代(における歌舞伎)のことはまだまだ勉強しなくてはいけないのですが、(これからの時代にも)ついていけたらと思います。

──今回、シネマ歌舞伎で上映されている『ヤマトタケル』が上演されたときは、新しいものを作ろうと誕生した『スーパー歌舞伎 ヤマトタケル』が30年かけて古典になった瞬間でもありました。それを猿之助さんが引き継がれ、来年にはステージアラウンド東京へ劇場空間を移して上演されます。どんな場所でやってもそれに耐えられる普遍的な強さがある、それが古典。作品への思いは。



 自分が初めて出演させていただいた作品。スーパー歌舞伎へはほかとは違う思いがあります。自分の中でアイデアを膨らましたり、こういう俳優でありたいという1つの導(しるべ)になっています。

──團子さんもいずれは新しいものを作るというところに向かっていくことになるでしょう。目指す俳優像についてお聞かせください。また、作品作りへの興味は。

 あります。現代の発展していく技術と歌舞伎のいいところが組み合わさった作品を作りたいと思っています。今は、派手な動きでは宙乗りや早替えがありますが、ほかに何か新しい見せ場を作れたら。でも、まだまだ自分ができていないことがたくさんありますので、そんなことを言う段階ではないのですが。お客様が歌舞伎を見ているときは、空想の世界、楽しい場にいると感じ、そこにずっといたいと思ってくださるような役者になりたいです。

──『ヤマトタケル』の魅力は。

 主人公ヤマトタケルは、自分の兄を庇うことで父に嫌われてしまい、父から過酷な命令を下されます。それに対しても新しい手柄(を立てる機会)をくださったと、いつもポジティブに捉えます。ようやく認められるのは最期のとき。前向きに進んでいればいつかは報われるというメッセージの込めらているところが魅力だと感じています。

──最後にひと言。



 これからもたくさん精進して、皆様を感動させるような役者になりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。



 ひと言ひと言、誠実に語る團子さん。時々「じいじ」と言ってしまうような素の15歳に会場の雰囲気もほっこりしました。しかし、今を、その先を見据えた目には力強さも。これからのご活躍も楽しみです。




 そして、『ヤマトタケル』主演の市川猿之助さんは、現在、新橋演舞場でスーパー歌舞伎Ⅱ<セカンド>『新版 オグリ』ご出演中!!まさに新時代を切り開いています!!


シネマ歌舞伎『スーパー歌舞伎 ヤマトタケル』
上映日程:2019年10月18日(金)から24日(木)、東劇のみ31日(木)まで
※劇中にて、「市川猿之助 市川中車 襲名披露口上」もございます。

収録公演:2012 年 6 月新橋演舞場公演 本編尺:220 分(休憩 2 回)

作:梅原猛
脚本・演出:市川猿翁
出演:市川猿之助、市川中車、市川團子、市川右團次、市川笑也、市川猿弥、市川春猿、市川寿猿、 市川弘太郎、市川月乃助、市川笑三郎、市川門之助、坂東竹三郎、坂東彌十郎 ほか 
※出演者名は上演当時の表記です。

あらすじ
 大和の国の皇子 小碓命は、双子の兄 大碓命の謀反をいさめようとして誤って殺してしまい、父帝の怒りを買って大和に従わない熊襲の征伐にたった一人で向かわされます。小碓命は父の許しを得たい一心で、見事に熊襲兄弟を討ち果たし、ヤマトタケルと名乗ることとなります。しかし、父帝の怒りは治まらず、新たな戦の命を下されたタケルには次々と試練が訪れます。それでも、父とまだ見ぬ息子ワカタケルに会うために、タケルは故郷を目指すのですが...。

公式サイト

おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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