リーディングドラマ『シスター』橋本淳さんインタビュー



 「姉」と「弟」の、とてもプライベートな会話で構成されるリーディングドラマ『シスター』が2018年晩夏に博品館劇場にて上演。

 本作は、鈴木勝秀さんが2013年に書き下ろし、篠井英介さんと千葉雅子さんのタッグで上演されたリーディング『シスターズ』をもとに誕生しました。「姉」と「妹」の物語を「姉」と「弟」として再構築した『シスター』は、2人の出演者、その組み合わせによって異なる表情を見せ、そこから受け取るメッセージもさまざま。今シーズンも、どんな化学反応が起こるのか、ワクワクする組み合わせがたくさんあります!

 9月2日19時公演にご出演される橋本淳さんにお話をうかがいました。相手役「姉」は篠井英介さんです!



橋本淳さん


【今は作品の中をひとり彷徨っている感じ】


──前回(「姉」役は彩吹真央さん)に続いてのご出演です。まずは、前回を振り返って。

 スズカツさん(鈴木勝秀さん)からは、自分たちのフィーリングを大切にして、感じたままにやってくださいと言われました。それによって自由にできる面白さ、それと同時に怖さや難しさも感じました。稽古も1回読んで終わりでしたので、本番は緊張もしましたが、「姉」役の彩吹さんとの純粋なやりとりを楽しむことができました。

──噂には聞いていましたが、本当にお稽古も1回なのですね。ほどよい緊張感の中でのリーディングは音楽セッションのようでもありますね。



 そう、セッションですね。発する声、というか音についても、事前にあまり作り込まず、相手役の音を聞くことで、自然にそこに乗っかるような音になるんです。そういう流れのある本になっています。もちろん本を読み込み、自分なりの役作りはしますが、本番ではそれを手放し、隣に座る相手役を信頼しやりとりをする。そんな作品です。

──「弟」という役についてはいかがですか。

 今、お話した通り、役者に委ねられる部分が大きかっただけに、「弟」役には「橋本淳」成分が多かったような気もします(笑)。読んでいて、彼が感じている孤独についても共感しました。
 僕は役に向き合うとき、まず、この人は何を欲していたのだろうかと考えるんです。この「弟」からは、愛されたい、認められたい、求められたい、そういった願望を強く感じました。それと同時に、まだ世間を知らない子の言葉だなということも。なんだか切ないですね。

──今回、改めてこの本と向き合っていかがですか。



 面白いことに、今読むと、また違ったイメージが膨らみます。一年という年月が経ち、僕自身が変わったのかもしれませんが、それだけでなく、そのときの状態、身体の疲れ具合や気持ちがポジティブかネガティブかによって、日々読み方が変わります。読みながら、感じたことをメモしているのですが、翌日には「その解釈はいらないな」と思うことも。何度読んでも掴みきれない、今は作品の中をひとり彷徨っている感じです。それがどこか「弟」の孤独とリンクするような気もします。
 こうして考えるだけ考えて、本番では手放す。そうやって思考から離れることで全く新しい響きが生まれることもある。本番はいったいどうなるんだろう。その日、朝起きたときの感覚、その日の自分を受け入れることから始まるような気がします。僕自身もどうなるのかわからないところが、この作品の魅力だと思います。

──それゆえに、受け取る側(観客)にも、さまざまな印象を残す作品です。

 「こういう解釈が正解!」という作品ではなく、お客様ご自身がイメージして解釈していく作品。自由に想像してください。


【英介さんの「姉」は楽しみ過ぎて、むしろ観たいくらい(笑)】



──今回の「姉」は篠井英介さんです。確か、昨年の公演をご覧になっていたかと。

 そうなんですよ!『シスター』の前にスズカツさんが演出された作品に英介さんや彩吹さんがご出演されていた縁で観に来てくださって。終演後「楽しかったー」と、あの優しい笑顔でおっしゃってくださいました。まさかその英介さんと、この作品でご一緒することになるとは!

──篠井さんとはこれまでには。

 柿喰う客の『世迷言』(2014年)での共演以来、仲良くしていただいています。すでに絶大な信頼を寄せています。どんな風に登場するのか、舞台上に現れる、そのときすでに「姉」を纏っていそうですよね。そして、どんな球が飛んでくるのか楽しみです。楽しみ過ぎて、むしろ観たいくらい(笑)。刺激的な時間になりそうだな。


【悩んだら……歯を磨いて寝る!】



──「弟」は悩み多き青年。橋本さんが深く悩んだとき、乗り越えるためにどうされますか。

 悩み始めるとネガティブに陥りがちですが、そういうときはたいてい体調が悪いんです。だから、以前は、お酒を飲んだり、友達に会ったりしていましたが、今はとにかく歯を磨いて寝る!それですっきり(笑)。
 あと、最近は昔ほど悩まなくなりました。なるようにしかならないというか、理想も抱きつつ、現実も認めることができるようになってきたのかな。

──人間としての体力がついてきたような感じでしょうか。

 持久力はつきました。こういう仕事をしていると、どうしても比べられたりして、焦ってしまいがち。親戚に会うと「いつテレビに出るの」とか(笑)。舞台はどうしても……。よし、頑張ろう!自分のなすべきことを、コツコツと続けていくことに集中しようと。

──たくさんの作家、演出家の作品をご経験され、素晴らしい軌跡だと思います。

 ありがたいことに多くの出会いに恵まれ、その都度、必死でやっていただけ。気づいたらそれが積み重なっていた感じです。

──この先、役者として思い描く未来は。



 役者は受け身の仕事です。まずは求められ続けることですね。気を抜くと停滞してしまう。現状維持といっても、それは実質落ちていることになります。作品に関わるときは常に、自分自身と向き合い、120%だとどこかで壊れてしまいそうなので、ほどほど必死に(笑)やっていきたいと思います。未来のことはうっすらとはありますが、考えて考えて、でも、それに囚われることないように意識の外に置いておこうかなと思っています。

──最後に楽しみにされているみなさんへのメッセージを!

 一度きりの公演、僕と英介さんにしかできない『シスター』になればいいなと思います。「ちょっと時間が空いたな」という感じで、ふらっと観に来ていただいて、その後、銀座でご飯でもなんて流れもいいですよね。きっと生きることの糧になるような作品、事前準備なしで、自然体で観ていただければと思います。



 とてもいい感じに肩の力が抜け自然体の橋本さん。これまでにもおけぴレポコーナーの稽古場レポートには多数ご登場いただいていましたが(本レポラストでご紹介)、お話をうかがったのは、実ははじめてでした。作品や役に向き合い、深く考え抜く誠実さと、最後にすべて手放す潔さ。それが観るたびごとに新鮮な印象を与えるのですね。
 前回は「透明感」と「孤独」が印象的だった橋本さんの「弟」。今回は新たなシスターとの化学反応でどんな「弟」になるのか、楽しみです。

 すでに『シスター』をご覧のみなさんへ、お話の核心に触れたネタバレコメントを【公演情報】の下に記載してあります。前回ご覧になった方、または今回のご観劇後などにお読みいただければと思います!


【公演情報】
リーディングドラマ『シスター』
2018年8月29日(水)~9月2日(日)@博品館劇場

作・演出:鈴木勝秀

出演
8月29日(水)19:00:安藤聖、山田ジェームス武
8月30日(木)14:00: 森口瑤子、鈴木勝吾/19:00:朴璐美、猪塚健太
8月31日(金)19:00:木﨑ゆりあ、納谷健
9月1日(土)13:00:三倉茉奈、三倉佳奈
9月2日(日)13:00:木村花代、荒牧慶彦/19:00:篠井英介、橋本淳

公演HPはこちらから

【シスターの存在……】


──彼にとってのシスターって……。

 「弟」が自ら死を選びながらも、それを引き留めてほしい、生きたいという願望。それが具現化して現れたものがシスターなのかな。自分の内面との対話。今日、感じていることはそんなことです。ただ、「チベットの死者の書」も本の中に出てきますし、死生観の話でもあります。そこでの“シスター”は霊的な存在と彼自身の意識の中の存在、どちらにも解釈できる。「僕はこういう解釈でやります!」というより、そこは受け取った方のイマジネーションに委ねようと思っています。果たして本番ではどうなるのか。そして、ご覧になった方にはどう響くのか。楽しみです。



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おけぴ取材班:chiaki(インタビュー・文・撮影) 監修:おけぴ管理人

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