『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャン役でおなじみ、この夏~秋は『ジャージー・ボーイズ』ニック・マッシ役として感動を届けた
福井晶一さん。12月には座・高円寺レパートリー「ピアノと物語」~ピアノの名曲の生演奏と俳優によるリーディング『アメリカン・ラプソディ』にご出演、2019年1月30日に2ndアルバム『Voce』発売、2月には、それを記念したコンサートを三都市で開催。その後は、みなさんお待ちかねのミュージカル『レ・ミゼラブル』ジャン・バルジャン役が控える、今後の活動からも目が離せない福井さんにインタビュー!確かなキャリアを積み重ねた今もなお、挑戦を続ける福井さんのこれから、故郷への思い、そして、先日大千穐楽を迎えた『ジャージー・ボーイズ』再演についてもうかがいました。
【仲間を深く愛し、作品を深く愛することができた『ジャージー・ボーイズ』再演】
──ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』、2018年の公演を終えたとき、率直に、どのような心境でしたか。 終わってしまったさみしさもどこかにありながら、清々しさのほうが勝っているような感じでした。
──“『ジャージー・ボーイズ』ロス”に陥ることは。 ないですね……、まだ(笑)。12月12日のFNS歌謡祭に向けてのリハーサルで再会しても、懐かしさより、ついこの間までやっていた公演の続きのような感覚です。音楽監督も島健さんですし、バンドメンバーにも一緒に公演を作りあげた顔がちらほら見えますので。でも、終わったんですね。
──2018年の『ジャージー・ボーイズ』を振り返って。 この作品、ニック・マッシという役に、もう一度チャレンジできたことを心から嬉しく思っています。
再演というものは難しいものです。ましてや初演がみなさんに愛され、また、数多くの賞を受賞するという形でも評価を受けた作品ですから、あまり考えないようにしていたものの、どこかで初演を超えなくてはならないというプレッシャーもありました。実際、一つひとつのシーンを、さらに磨き上げていくことは容易なことではありませんでした。でも、芝居面でも音楽面でも、初演ではたどり着けなかったところへ、ようやくたどり着けたという実感を持つことができた再演でした。それは、僕一人でというのはなく、チームホワイトだったからこそ成し得たことです。
初演は、まさに生みの苦しみのなかで、がむしゃらにやっていたところがあります。正直、みなさんにどう受け止められるのか、果たして受け入れてもらえるのか、僕らも確信がないまま初日を迎えました。それが、実際に開幕すると、お客様の大変な熱狂と支持に、僕らのほうが驚いたようなところがありました。そんな勢いに乗って終わった初演。あのときは、“まだ途中”という感覚でした。今回は、千穐楽を迎えた今、仲間を深く愛し、作品を深く愛することができたと、自信をもって言えます。それが、僕が再演で得た全てであり、僕の宝です。
──シアタークリエでの開幕時から、チームホワイトの進化・深化には驚かされました。今年はツアー公演もあり、さらにチーム、カンパニーとしての結束が深まったようですね。 ツアー公演では、メンバーと一緒に過ごす時間も長く、改めてお互いをよく知ることができました。プライベートを一緒に過ごすことが、絆を深めるのに必要不可欠だとは思いませんが、この作品に関しては、劇中で描かれるツアー公演と僕ら自身が重なるようなところがあり、それによってチームの絆が深まりました。各都市での公演は、それぞれがスペシャルな経験となりました。
──特に印象的だったのは。 ツアー最初の公演の地、秋田の大舘公演ですね。演者がこういうことを口にするのはどうかとも思いますが……、ひと言で言うなら、奇跡の公演でした。大詰めのロックの殿堂入りを果たしたシーン、トミーが「この賞を与えてくれるのは一般大衆だからだ」と言ったとき、お客様が僕らへ心からの拍手をしてくださったんです。そんなことは初めてで、その瞬間に僕らみんなグッときてしまって。その後は、胸にこみ上げてくるものをこらえるのに必死でした。あの瞬間を共有できたこと、そうやってツアー公演のスタートを切れたことは大きな幸せでした。
応援してくださるお客様に支えられ、育てられ、みなさんも作品の一員だということを謳っている『ジャージー・ボーイズ』の真髄がそこにありました。
『ジャージー・ボーイズ』は、これから先も上演され続ける作品だと思います。全国各地、もっともっといろんなところで上演してほしいと思います。僕の故郷の北海道へも、まだ未上陸ですしね(笑)。
── 本当に、一人でも多くの方に体感していただきたい作品ですね。
【二人の俳優がガーシュインという人物について語ることで浮かび上がる人物像。その視点が面白い!】
続いて、12月20日からは座・高円寺にて行われる『アメリカン・ラプソディ』にご出演です。先日、お稽古の様子を見学させていただきましたが、二人の男女が読み交わす往復書簡と楽曲で、アメリカ音楽の父とも呼ばれる作曲家ジョージ・ガーシュインの生涯を紡ぐ、上質なリーディング公演です。ガーシュインの公私にわたるパートナー女性作曲家ケイ・スフィウトに土居裕子さん、20世紀を代表するバイオリニストの一人ヤッシャ・ハイフェッツを福井さんが演じます。 土居さんがご出演された前回の公演を拝見し、とても素敵な作品だという印象をもっていました。そのときは、まさか自分が出演するとは思っていませんでしたが、今回こうしてお話をいただいたときは、「やらせてください!」と即答しました。
──意外にも、リーディング公演は初めてとのこと。お稽古をしてみていかがですか。 事前に上演台本を一人で読んでいたのですが、やはり相手がいると違いますね(笑)。土居さんが発してくださるものをきちんとキャッチすることで見えてくるものがたくさんあります。ただ、稽古回数が少なくて。そこには即興的な空気を大切にしたいという演出家の佐藤信さんの意向があります。僕も、その必要性は十分に理解しているのですが、ガッツリ稽古を積みたいタイプなので、内心ドキドキです。
──それに加えて、憧れの土居さんとの共演というのもドキドキですね。 作品では初共演。僕にとっては……大事件です(笑)。ただ、板の上に立つ以上は対等でありたいという思いもあります。そのためにもしっかりと準備し、土居さんが発するものを受け止め、僕からもいろいろと投げかけていきたいと思います。
──作品の内容についても少し聞かせてください。ガーシュインはミュージカルにも縁のある作曲家です。 『クレイジー・フォー・ユー』や『巴里のアメリカ人』、オペラ『ポギーとベス』のサマータイムなどは、もはやスタンダードナンバーですね。この曲もガーシュインだったのかと、勉強にもなります。劇構造としては、ピアニストの佐藤允彦さんがガーシュインとして存在しますが、物語としては俳優二人がガーシュインという人物や楽曲の誕生過程を語ることで、その人物像が浮かび上がるような脚本、組み立てになっています。まず、その視点が面白いですよね。
──今回は、福井さん仕様ということで、男性キャストも歌うことになったそうですね。写真左は演出家の佐藤信さん
座・高円寺の人気のレパートリーですので、毎年ご覧になっている方もいる中、「今年の目玉は男性キャストも歌うことにしたい」とおっしゃっていただいたことは、大変光栄なことです。
──そうやって公演を重ねていくことで生まれる作品の新しい一面、オリジナルだからこそですね。
作品も成長していくんですよね。今年の『アメリカン・ラプソディ』を楽しんでいただけるように、全力を尽くします!リーディングといっても椅子に座りっぱなしで読むというのではなく、動きもあります。さらに音楽も入るので、今年初めてご覧になる方はどのような舞台になるのかお楽しみに。
──お稽古を見学していても、お二人の声のハーモニーは心地よく、耳も心も喜んでいるような時間でした。描かれている物語も、ガーシュインという人物、彼が生きた時代背景なども含めて大変興味深く。本番が楽しみです。
続いては……といきたいところですが、前編はここまで♪ 2019年の活動、1月30日に発売される2ndアルバム『Voce』、コンサート、そして『レ・ミゼラブル』については後編をお楽しみに~!!
(12/10追記)後編を公開いたしました。
こちらより!!
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人