シンプルな舞台、躍動する男女
生きるエネルギーに満ち溢れたオリジナルミュージカル
“NEW”な『Color of Life』誕生!! 世界初演はオフ・オフ・ブロードウェイの国際演劇祭。そこで最優秀ミュージカル作品賞、最優秀作詞・作曲賞、最優秀演出賞、最優秀主演女優賞の4部門を受賞したNew Musical『Color of Life』の
日本初演は2016年。キラキラと輝くドラマ、心に焼き付く景色に多くの観客が魅了され、2017年に再演。
そして、この春、新しい時代の幕開けに東啓介さんと青野紗穂さんという新たなキャストで上演中!
画題を見失った画家の男と同性の恋人と死別した俳優の女。
二人は惹かれあい、NYの彼女の部屋で一緒に暮らし始める。
期限は、彼の観光ビザが切れるまでの90日間。
二人の出会いと交流を、パレットの上で交り合う絵の具のように描いた物語。 物語も舞台セットもシンプルですが、とても多面的な作品という印象です。孤独の中で出会った二人が互いを理解し、それが自分をも変えていく。和也とレイチェル、二人の人生の交り方は“交り合う絵の具”まさにそれと同様に毎回異なるでしょう。見る角度、見る人、その瞬間ごとに変化していく色。
対面式に配置された客席もとても効果的。劇中の二人が対峙するように、観客も対岸の観客と対峙する。あなたと私、世界の中の私、その1人、1組が和也とレイチェルなのです。そんな劇場空間は社会の縮図。お芝居を見ていると、二人の物語に知らず知らずのうちに引き込まれ、決して誰かの話ではないような感覚が生まれます。彼らのふとした瞬間の横顔が、今の自分のように見える人も、過去の自分に見える人もいるでしょう。
和也を演じる東啓介さんは、みなさんご存知の通りとても背の高い俳優さんです。一方、レイチェル役の青野紗穂さんは小柄な方。見た目は凸凹なお二人ですが、歌や芝居、ステージングの妙でときにピッタリ重なり合ったり離れたり、レイチェルが大きく、和也が小さく感じられたり……。真っ直ぐに発せられるお二人の「声」、出力120%で届けらえる心の叫び、葛藤を吐露する場面や、ぶつかり合う場面は見ている側も苦しくなるような瞬間があります。(圧倒的な近さも作用して!)それでも二人から目が離せないのは、二人が舞台上で懸命に生きているから。和也とレイチェル、東さんと青野さん、これが若さのもつエネルギーというものか。ひと言で言うと、眩しいのです!
1か月近い公演、ここからお二人がどんな進化を見せるのか。その経験が、俳優人生も含めた彼らの人生にどう作用するのか。いろんな意味でこれからが楽しみになります。ただ、この作品に関しては荒削りながらもエネルギー炸裂!のフレッシュな表現をこれからも見せつけてほしいと思うのです。それが、なにか、どこか停滞している誰かの力になる!
そう思えるのは、和也とレイチェルの関係が依存ではないから。孤独であること、互いに惹かれあうこと、ともすれば互いの傷をなめ合い支え合う。それも必要なことですが、彼らは常に自分というものも見失わない。個としての自分、その上での二人の関係を確立させていく、それが両輪となって生まれる推進力は心地よいものです。
目まぐるしいレイチェルの日常、NYのショービジネスの世界で1.5倍速のようなスピードで暮らすことのストレス。彼女の部屋で絵を描く青年。一見、動と静のようですが、内面は二人とも葛藤し、燃え上がっている。劇作家石丸さち子さんと音楽家伊藤靖浩さんが、俳優と画家、異なる表現手法を用いたアーティストに投影した思いはいかに。そんな視点からも興味深い公演です。誰もがそれぞれの人生の表現者。すべての表現者に捧げられたNew Musical 『Color of Life』は5月27日まで、DDD青山クロスシアターにて。
舞台写真提供:ワタナベエンターテインメント シーエイティプロデュース
(撮影:岡千里)
おけぴ取材班:chiaki(文) 監修:おけぴ管理人