こまつ座131回公演『きらめく星座』観劇レポート~人間は奇蹟そのもの~



浅草の小さなレコード店、オデオン堂の人々が帰ってきました。



左より)粟野史浩、松岡依都美、久保酎吉、瀬戸さおり、大鷹明良、高橋光臣、木村靖司

 劇作家井上ひさしさんの私戯曲とも言われる音楽劇『きらめく星座』。
 太平洋戦争前夜までの約1年の出来事を描いた、笑いあり、涙あり、怒りありの3時間はあっという間。なんだかとっても勇気づけられる観劇体験でした。


こちらは『きらめく星座』稽古場レポート



ほんの気持ちお母さんの方へ近づくお父さんがツボ!
この時間が続けばいいのに──

 戦争の足音が近づく時代、物質的には決して豊かとは言えず、取り巻く環境も日一日と厳しくなる中でも明るくたくましく生きるオデオン堂の面々。お父さんを演じるのはこれが4度目となる久保酎吉さん。穏やかで優しい、時々かわいらしくも思えるお父さんですが、どんな時も家族を守る強さも垣間見せるのです。後妻としてこの家に嫁いだお母さんには松岡依都美さん。元歌手の華やかさ、ノリの良さと肝っ玉のすわりっぷり、この家の太陽です!あっけらかんとしているようで、その心の奥には様々な葛藤も。




 平和なオデオン堂に物々しい空気が。脱走兵となった長男正一を追って防共隊員の二人と憲兵伍長の権藤がやって来たのです。木村靖司さん演じる権藤さんが、これまたいい味。権力側に居て厳しく取り締まる、職務に邁進する威圧感が前面に表れつつも、「この人、もともとはとてもいい人なんだろうな。みんなでワイワイするのが好きなんだろうな」と感じさせます。権藤のように、登場する人々はそれぞれ一生懸命で真面目に生きています。真っ直ぐすぎるくらいに真っ直ぐな長女のみさを、その夫で戦地で右手を失った源次郎、そして権藤ですら、このオデオン堂の柔らかさの中で変化していきます。

 そして、この家に居候するのは、お父さんと絶妙のコンビネーションを見せる広告文案家の竹田さんと学生のピアノが上手な森本くん。社会や権力を見つめる目の厳しさ、人間を見つめる目の優しさ、それを的確に鋭く「言葉」にする竹田さんは井上さんの思いの代弁者のよう。演じる大鷹明良さんの存在感が作品を支えます!




はつらつとバケツ体操をするお母さんとみさをさん。


 みさをさんとその夫の源次郎さんはこの物語の中で大きく変化します。二人が家族になる、その成長の物語のようでもあります。このように様々な見方のできる作品!ちょっと強面で怖そうな源次郎さんもどんどん愛おしく見えてきます。



竹田さんが配給の列にならび手に入れた貴重な生卵を囲む人々
この1つの卵をどう食すか想像力豊かなみなさん♪

 そして、音楽劇の魅力も忘れてはなりません。「青空」「一杯のコーヒーから」など当時の流行歌もふんだんに盛り込まれています。歌が心の支え、家族の思い出、共通項である。だから誰かが歌い出すと、森本くん(後藤浩明さん)がピアノを弾き、いつの間にかみんなが歌っている。その瞬間に照明も変わり、一種独特の高揚感を得ます。「なにを呑気に」、時代の切迫感に対して緊張感がないとか浮かれているとかバタ臭いとか──、そんな空気はなんのその!皆、明るく歌い踊るのです!

 それでもやがてその日はやってきます。

 

 時々オデオン堂に戻ってきては、各地で見聞きしたことを話す正一。彼が自身の目で見たもの、そこから考えたこと、それを語る正一役の高橋光臣さんの真っ直ぐな声。胸に刺さります。賢く優しいからこそ傷つき、それでも「勉強」し続ける正一。そんな彼を支えているのも音楽、歌。そして、正一の第一声「変わってないな」、逃亡の途中で立ち寄ったオデオン堂でのひと言が今も心に響いています。帰る場所なんですね。(内面的変化とともに、登場ごとに姿を変える外見的変化も見どころ!)


 互いを思い合いながら肩寄せ合って生きている。夜空の星も、浅草の小さなレコード店に暮らすあの家族もきらめいています!そして演劇って素敵だなと感じたのは、それぞれのシーンで目に焼き付く「絵」があること。戯曲を読むことでも素晴らしさを感じられるのですが、それを生身の人間が演じ、言葉を交わし、触れ合う。台詞をしゃべる人物を見つめる視線、気に掛ける素振りから伝わるもの。それを観る、その体験が記憶となって心と頭に刻まれるのです。演出はもちろん栗山民也さんです。



赤紙が来た若者たち、彼らが浅草を離れる時に求めたものは──。

 このシーンのふじさん(松岡さん)の歌声の力強さと言ったら! 日々、不安の中で暮らしている。それでも力強く生きていく。そんな力をくれます。



「ただの美談」では終わらないところも井上戯曲!

 各場の転換の際の暗転、そこでは目の前には星空が広がります。柔らかく光る星もあれば、キラっと輝く星もある。いろんなきらめき方がある!そんな多様な価値観を持った人々の人生が描かれた『きらめく星座』。15日まで上演しています!



【おけぴ過去レポ】

★こまつ座第106回公演『きらめく星座』稽古場レポート(2014年)

★こまつ座第120回記念公演『きらめく星座』稽古場レポート&田代万里生さんインタビュー(2017年)

★こまつ座第120回記念公演『きらめく星座』開幕レポート~栗山民也さん&キャストコメント&舞台写真&感想が届きました~

★こまつ座第120回記念公演『きらめく星座』 井上ひさし誕生日特別トークショーレポート~辻󠄀萬長さん、木場勝己さん、久保酎吉さん、後藤浩明さん~

あらすじ
 昭和 15 年の浅草。小さなレコード店に、四人の家族と、二人の間借り人が仲良く暮らしていた。
 しかし、この平和なオデオン堂に、大事件が起こる。陸軍に入隊していた長男の正一が、脱走したという。「敵前逃亡」は重罰。すぐさま追手がかかって、憲兵伍長「蝮の権藤」がオデオン堂に乗り込んできた。さらにもう一人、堅物の愛国主義者が家族に加わる。長女みさをが、「ハガキの束から選んだ」夫、源次郎。この家の住人たちの、ジャズがかった音楽好きが、傷痍軍人の源次郎にはどうしても許しがたい。こうして、オデオン堂には、ときならぬ大嵐が吹き荒れることとなる。


【スペシャルトークショー】
★終了 3月12日(木)13:00公演後 松岡依都美、久保酎吉、後藤浩明、木村靖司
★3月13日(金) 13:00 公演後 高橋光臣・粟野史浩・瀬戸さおり・大鷹明良
※スペシャルトークショーは、開催日以外の『きらめく星座』のチケットをお持ちの方でもご入場いただけます。 ただし、満席になり次第ご入場を締め切らせていただくことがございます。
※出演者は都合により変更の可能性がございます。


【公演情報】
こまつ座第 131 回公演 『きらめく星座』
2020年3月10日(火)~15日(日)@紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
※3月5日から8日の公演は中止となりました

【スペシャルトークショー】
★終了 3月12日(木)13:00公演後 松岡依都美、久保酎吉、後藤浩明、木村靖司
★3月13日(金) 13:00 公演後 高橋光臣・粟野史浩・瀬戸さおり・大鷹明良

作:井上ひさし
演出:栗山民也

出演
松岡依都美、久保酎吉、高橋光臣、粟野史浩、瀬戸さおり 後藤浩明、髙倉直人、村岡哲至、木村靖司、大鷹明良

※上演時間:3 時間予定(休憩含む)

公演HPはこちらから

舞台写真提供:こまつ座
おけぴ取材班:chiaki 監修:おけぴ管理人

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