大貫祐一郎 ピアノコンサート『アナリーゼのために 第三楽章』レポート

街にクリスマスイルミネーションがきらめき始めた12月1日、サントリーホール・ブルーローズにて大貫祐一郎 ピアノコンサート『アナリーゼのために 第三楽章』~ピアニスト大貫祐一郎 楽曲分析で導く新たな音楽の世界~が開催されました。“第三楽章”というタイトルの通り、2021年12月、2022年3月の開催に続いて、3回目を迎える人気コンサートシリーズです。



大貫祐一郎さん


ピアニストの大貫祐一郎さんが、毎回趣向を凝らしてお届けするコンサートの一曲目はもちろんこの曲、オリジナルテーマソング♪アナリーゼのために。目くるめく音楽の時間の幕開けにふさわしい、ピアノ演奏のあんなこんなそんな楽しさをギュギュっと詰めこんだ贅沢な一曲です!

こうして始まった第三楽章。最初のアナリーゼは“エチュード・アナリーゼ”、ピアノ練習曲の分析です。まず、ピアノ演奏の筋トレ!とも例えられる「ハノン」。「この場所で本気でハノンを弾くピアニストって……」と大貫さんご自身もおっしゃっていましたが、なかなかレアなひとときでした。それにしても長い指がよく動くことといったら。シンプルな音の遷移も、その指の華麗な遷移を見ながらだとなんだか心地よく、ずっと弾いて~とすら思えてきます(あくまでも聴いているぶんには)。しかしながら、この「ハノン」には「音楽性」はなく、そこから少し発展しやや「音楽性」を帯びたものとして紹介されたのが「ツェルニー」。そしてさらに音楽性が高められたのが「ショパン」のエチュードです。ショパンは前回も披露された♪エオリアン・ハープに続いて♪大洋を演奏。この“エチュード・アナリーゼ”では、大貫さんの学びし日々の思い出も語られ、「名ピアニスト一日にしてならず」を改めて感じたのでした。



手元を映し出す映像も! この手元は!!

そうそう、「指の遷移を見ながら」というのは、このコンサートはピアノ演奏をじっくりたっぷりと味わうために大貫さんの指先を映し出すカメラもセットされ、会場正面スクリーンに映し出された指先映像を見ることができるのです。スクリーンにはほかにもアナリーゼのタイトルやテーマ、押さえておきたいポイントなどなどが映し出され、コンサートでありながら講義のような充実感。こんな音楽の授業だったら……との思いがよぎります!また、コンサートの模様は配信でもお楽しみいただけるので、会場には複数のカメラがあり、あらゆる角度からの映像を見られます。

続いては、“セッション・アナリーゼ”。登場したのはお一人目のゲスト、ベーシストの川崎哲平さんです。ここからは川崎さんとともにジャズのセッションをアナリーゼ。




川崎哲平さん

まずはチャップリンの名曲♪Smileのジャズセッションをぶっつけ本番で披露してくださいましたが、なんとその過程までも公開という大サービス。ミュージシャン同士のセッション、要するにアドリブ合戦のようなものなのですが、お互いに共有するのはメロディとコードが書かれただけのシンプルな楽譜。そこから「先に〇小節、僕がソロで。次は川崎さんが〇小節ソロ、そこからは二人で…」という調子で本当にざっくりとした打ち合わせでスタート!これがいいんですよ。その瞬間に生まれたものであり、確かに♪Smileでもある。お互いの呼吸を感じながらの対話のようなセッション。ライブの醍醐味です! さらにお二人による、ものすごいアレンジの誰も聴いたことのない♪大きな古時計や♪From Withinの演奏も披露してくださり、会場の熱気も高まるとともに、音楽・演奏の豊かさに感嘆のため息ももれます。この日、川崎さんがテーマとして挙げられていた「ベーシストとして、低音の豊かさと音楽を支える魅力・やりがい、そしてそれだけじゃないベース、コントラバスの魅力を伝える」、まさにそれを感じるひとときでした。

ここで、スペシャルゲスト田代万里生さんがMYスレイベル(しかもかなりの鈴の量)のシャンシャンシャンという音とともに登場!その手にはひと足早いクリスマスプレゼント! きっと大荷物で会場入りされたのだろうなぁと、その仕込みの徹底ぶりに、田代さんのこの日にかける意気込みを感じました。が!! 準備されていたのはモノだけでなく……。そのすごさをまもなく目の当たりにする観客なのでした。



田代万里生さん

田代さんをお迎えしてお届けするのは、その名も“マリオーゼ”♪ 今回はシューベルトの「魔王」を徹底分析です。まずは田代さんが旅したシューベルトゆかりの地、生家やお墓のスナップを見て作曲家について学びます。フランツ・シューベルトはウィーンの作曲家で、父はフランツ、母はエリザベートというからびっくり! そんな豆知識も交えながらマリオーゼは進み、『ファウスト』で有名な文豪ゲーテの詩に触発されてシューベルトが作曲した「魔王」を田代さんご自身の訳詞で歌唱。先ほど感じた「講義のような」という感覚、この時には「講義だ」に変わっていました(笑)。
この綿密な準備には(ちなみにこのコーナーでは田代さんはシューベルト風の眼鏡を装着という徹底ぶり)、大貫さんも思わず「万里生さん、僕を超えてくるのはやめてください(笑)!」と漏らしました。とは言え、そうコメントしつつも大貫さんも満面の笑みで“マリオーゼ”をお楽しみの様子。


そんな大貫さんが「万里生さん、せっかくなので連弾しませんか」と持ち出したのは鍵盤ハーモニカ、すると田代さんは様々なエフェクトを付けられるハイテクな鍵盤ハーモニカをご持参! またまた超えてくる田代さんですが、どうやらそれはプリンスからの激励・指令(⁉)を受けてのことのようです(笑)。責任感! もちろんそれだけでなく、先ほどご紹介したブログにも綴られているように大貫さんの音色と重ならず、かつ奏でる音楽が重厚になるようにという心配りの表れなのです! さすが!



お二人で演奏するのは……このご時世、「カ・ン・キ」が大切ということで♪歓喜の歌で「歓喜タイム」を演出。なんて贅沢なのでしょう。みなさんオープンハートで風通し抜群の心地よさでした。




それだけでは終わりません。続いてはピアノの連弾で大貫さん作曲、井上芳雄さんのオリジナル曲♪幸せのピース。これがアクロバティックというかなんと言うか。立ち位置(座り位置⁉)もめまぐるしく変わり、まるで“なにか”を奪い合っているかのようでいて、奏でる音楽は見事な調和。アレンジも演奏も最高に楽しいのです。音楽って素敵♪ お二人の「いっぱい練習しました」の言葉にも納得です。

ここからはもう止まりませんっ!
第二楽章の♪俺たちの高球(ハイボール)(作詞:佐藤隆紀さん、作曲:大貫さん)に続いて、今回もオリジナル楽曲が披露されました。田代さんが楽曲に込めた思い「誰かといるときの自分がすごく好きだなということ、ありますよね……」という導入に、迂闊にも、「素敵な感覚だな。今回はしっとりほっこり系のラブソングかな」と、うっとりしてしまったおけぴスタッフ。そのタイトル♪プリンセス・ハートに、ちょっとした違和感、いやいや、大きな期待を抱いて耳と心を傾けると。

あれ、これはもしや……と思うのが先か、思わず笑ってしまうのが先か、ココにはいらっしゃらないあの方を歌うラブソングではないですか! こうしてミュージカル界きっての美声の持ち主・田代万里生さんがプリンスへの愛を高らかに歌い上げた夜となりました。会場は心からの笑顔と、割れんばかりの拍手に包まれ、配信で楽しまれたみなさんも含め、名曲誕生の瞬間に立ち会った一体感が生まれたのではないでしょうか。大貫さんも「by MYSELF, by MYSELF」のコーラスだけでなく、一瞬ボーカルも!



♪プリンセス・ハート(作詞:田代万里生 作曲:大貫祐一郎)名曲誕生!

<お知らせ:田代万里生さんのオフィシャルブログ Mario Capriccioにて♪プリンセス・ハートの歌詞が公開されています! >


こうして歓喜と怒涛のゲストタイムは終わり、いよいよコンサートの最後の一曲。ぐっと落ち着いた雰囲気で♪いつまでも…を大貫さんの演奏で。これは2021年1月に配信された井上芳雄 by MYSELF Presents オリジナル配信ミュージカル「箱の中のオルゲル」のために大貫さんが書き下ろした楽曲です。




アンコールには封印される予定だったアレが!(やっぱりこれがないとね!)
助手のマリマリックさんも登場し大盛り上がりのマジックタイムとなりました。ここで川崎さんも再登場され三人での♪ともに描いた夢~別れの曲~を演奏。実はこの曲もショパンのエチュードの中の一曲。アナリーゼ、構成が心憎いです。 そしてアンコール最後の一曲は♪The Christmas Song、この時期にピッタリの一曲で夢のようなひとときは終幕。
音楽を通して人を楽しませる、幸せな気持ちにさせる、そのためにたくさん準備をしてくださったみなさんに心からありがとうとお伝えしたいです。そしてなによりも演奏するみなさんが楽しそうで、それを分かち合うような素敵なコンサートでした。これもひと足早いクリスマスプレゼント!

そしてコンサートの最後には……次回予告が!!


【2台のピアノが奏でる「音楽」 それは「心地良い」空間】大貫祐一郎×扇谷研人 2台ピアノコンサート「Mysig Music (ミューシグ ミュージック)」開催決定! ゲストは中川晃教♪


写真提供:TBSグロウディア
おけぴ取材班:chiaki(取材・文)監修:おけぴ管理人

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