【まもなく開幕】新国立劇場『デカローグ 1~10』亀田佳明さんインタビュー

『デカローグ』@新国立劇場小劇場
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ポーランド出身の世界的映画監督クシシュトフ・キェシロフスキによる20世紀の傑作を新国立劇場が完全舞台化! 2024年4月~7月にかけて全十篇を上演するという壮大な企画『デカローグ 1~10』がいよいよ幕を開けます。

旧約聖書の十戒をモチーフに1980年代のポーランド、ワルシャワのとある団地に住む人々を描いた本作。オムニバス形式で綴られ、それぞれが独立した作品でありながら、緩やかにリンクし、実はひそかなつながりを持っている十篇の物語のすべてに登場する「男」役を演じる亀田佳明さんにお話を伺いました。



──亀田さんは『デカローグ』全篇にご出演されますが、現在、お稽古はどのように進められているのでしょうか。

今は、小川絵梨子さんが演出するプログラムA(第一話、第三話)と上村聡史さんが演出するプログラムB(第二話、第四話)で稽古場が分かれていて、僕は二つの稽古場を行き来しています。

──ということは4つの物語を同時に作っていることになりますね。

4つの物語ではありますが、大きくとらえれば『デカローグ』というひとつの作品ですので、違和感なく、混乱することもなく取り組めています。身体は忙しいですが(笑)。

──そもそも『デカローグ』全十篇の舞台化、そのすべてに登場する天使のような存在と呼ばれる「男」役のオファーがあったときの率直なお気持ちは。

この映像作品を見たことはなかったのですが、ずいぶん前に雑談の中で小川さんから『デカローグ』を上演したいという話を聞いていたので、まずはこの企画が実現してよかったなと思いました。天使という役どころについては、「今のところしゃべらないだろう」「全話に出てきて登場人物たちが人生の岐路に差し掛かったときに存在している」という説明から、なんだか面白そうだからやりますと、あまりこだわりを持たずにお返事した記憶があります。

──お二人から出演への口説き文句と言うか、亀田さんのここに期待をしていますというお話はありましたか。

いやいや、特にないですよ(笑)。ただ、「しゃべらないのだけれど、とても重要な役どころを担ってほしい」ということは言っていただきました。この「しゃべらない」ということが僕にとっては大きく、物語に対して今までとは違う関わり方になる、そこに興味を持ちました。

──実際にお稽古が始まり、俳優さんとして「しゃべらない」というのはいかがですか。

どうしても僕は台詞にとらわれてしまうので、そうではない形で舞台に居るという、新たな視点や立ち位置で物語に関わっていくのはとても面白いです。今はとにかく舞台空間で行われていること、俳優さんを見て、その状況の中に身を置くということに徹しています。

──進んでいく物語に介入はせず、でも確かに存在する。天使の居方の極意は。

介入しないというのはすごく大事なポイントになります。(天使が)ひと言発すれば、(登場人物は)そこの不幸に落ちていかないだろうという瞬間でも何も言わず、ちょっと導いてあげれば人生が変わるような瞬間でも何もしない。そこを基軸に考えていこうと。存在感についてはどうなんでしょう。僕には、まだわかりませんね(笑)。

──演出家のお二人から言われていることは。

「見る」「聞く」ということをより具体的にやっていく、ストーリーの中で際立たせるポイントを見つけていく。お二人が求める方向性は一緒です。

──天使とはなんぞや……とても謎めいた存在です。

『デカローグ』自体、天使のみならずほかの登場人物についても説明はかなり省かれています。そこがお客様の想像を刺激する方向に作用すればいいなと。観て、自由に受け取ってください。

──稽古場で天使として4つの物語を見ている中で感じる『デカローグ』の魅力は。

「物語の舞台は1980年代のポーランド」と聞くと、遠い話のように思えるかもしれません。ポーランドの体制が変化した直後の社会の状況や宗教、人種、歴史などの要素も当然散りばめられているのですが、それを超えた“人の心の機微”が語られているところが魅力ではないでしょうか。舞台化するにあたって、演出家の二人が、我々にも通じる人の悩みや葛藤、心の揺らぎをとても丁寧に拾い上げています。映像とはまた違う立体感、目の前で繰り広げられる生のコミュニケーションによって、お客様の心にすっと入っていくような作品になればいいなと思っています。

──須貝英さんが手掛けられた上演台本からも、とても身近な物語だという印象を受けました。

いわゆる翻訳劇のように、舞台の戯曲として他言語で書かれたものを日本語に翻訳するのとはまた違う、須貝さんの言葉で上演台本が再構築されているので会話にも無理がないのだと感じています。

※久山宏一さんが翻訳された、原作のクシシュトフ・キェシロフスキ/クシシュトフ・ピェシェヴィチによるシナリオ、そして二人が手掛けた小説版と映像作品をもとに須貝英さんが上演台本を執筆されました。

──親しみやすさを覚えるとともに、どの物語もなんとも言葉にしがたい余韻を残して終わります。

十篇それぞれが何色とも言えない、白と黒の間のグレーに赤や青が入ったような再現不可能な色合いで終わりますが、それが人の心の中の説明のつかなさなのでしょう。この作品に心惹かれる理由もその辺りにあるのだと思います。

──十篇の中で亀田さんが好きな物語は。

印象的だったのは、笑いながら観ていたら、最後は痛々しさもありつつ……というちょっとコミカルなところもあるデカローグ6の「ある愛に関する物語」。好きな物語はきっと観る人の年代によっても変わってくると思いますし、僕自身も何度か観るうちにそれぞれの物語の印象も変わっていくという気もしています。

──十篇の物語が同じ空間、同じセットを用いて上演される。とある団地が舞台という共通項はありながら、いろんな場所に展開する物語をどのように表現するのかというのも気になるところです。

やや抽象的なセットで、お芝居によってそこが団地の一室や公園、病院などに自在に変容していく。観客の想像力を信じる、演劇ならではのセット、演出になっています。

──小川さんや上村さんとはこれまでにもお仕事をされていますが、どんな演出家さんですか。

戯曲を大きな解釈によって違う方向に持っていくことはせず、そこに書いてあること、今回だったら人間の内面にある葛藤や苦しみを大切に積み上げていくという意味で、二人には共通するところがあるのかなと思います。見せ方はそれぞれ違いますが、そこはぜひ劇場で味わってください。



──2月に行われたトークイベントで小川さんが「上村さんとは“頼りにする役者さん”が結構同じ」とお話されていましたが、そのときに私が思い浮かんだのは亀田さんです。亀田さんご自身が思う俳優としての強みや大切にされていることは。

自分の強み……それは難しいな……正直あまりわかりません(笑)。大切にしているのは関わる人です。僕は人とのつながりでこうして俳優としても一人の人間としても人生を送れているので、出会う人とは丁寧に向き合っていきたいと思っています。

──ちなみに俳優を職業にしていこうと決意されたのは。

職業にしようと思えているかは、未だにはっきりとは言えないというのが正直なところです。もちろんこれからもずっと続けていくつもりですが(笑)。

──では、演劇との関わりや始めたきっかけは。

姉が俳優をしているので演劇を観る機会はありましたが、自分が俳優をやるとはまったく想像していませんでした。もともとそんなに前に出るタイプでもなく、学芸会ではお芝居をしたくなくてビクビクしていた記憶があります。演劇を始めたのは20歳を過ぎた頃、教師になりたくて大学へ通っていたのですが、それが嫌になり後先考えずに大学をやめてしまったんです。さてどうしようかと思ったときに、近くにあった演劇に手を伸ばした。最初は逃げ道みたいな感じでした。そこから人とのつながりでここまで続けてくることができています。

──根っからの俳優さんという印象ですので、ちょっと意外な気もします! 亀田さんがお芝居をしていて幸せを感じるのは。

芝居で空気が変わる瞬間に立ち会えたとき。稽古場や舞台上、俳優同士で感じることもありますし、客席の空気が変わる瞬間もありますよね。それを他者、共演者やお客様と共有できた瞬間のなんとも言語化できないあの感覚! 幸せを感じます。

──これまでにも多くの公演にご出演されている新国立劇場の印象は。

毎回、とても恵まれた環境で創作させていただいています。今回の天使役のようにがっぷり四つに組んだり、ときにはチャレンジングな役を与えてもらったり。僕の演劇人生において長く関わり、たくさんの経験をさせてもらえる場所です。

──昨年上演された『終わりよければすべてよし』のペーローレス役も強烈なインパクトでした。

そうですよね(笑)。プロデューサーにとってあのキャスティングは大冒険だったと思うんです。ただあの役を亀田に!と起用していただいた以上は、全力で応えたいと思う。そんな挑戦をさせてもらえることをありがたく思います。

──新たな挑戦となる『デカローグ』。作品によってまったく違う印象を残す亀田さんの天使が物語の中でどう存在するのか、とてもワクワクしています。最後に『デカローグ』の開幕を楽しみにされているみなさんにメッセージを!

しっかりとした重みのある作品ですが、稽古を重ねていく中で軽やかさや笑える部分も出てきています。それぞれがとても濃度が高く完結している物語ですが、連なる十篇の物語の色合いの変化を味わうには、やはり全篇ご覧いただきたいです! 十篇観ることで、天使の存在もより立体的に感じられるかもしれませんよ!



『デカローグ』@新国立劇場小劇場
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【公演情報】
『デカローグ 1~10』@新国立劇場 小劇場
公演日程2024年4月13日(土)~7月15日(月・祝)  
デカローグ1~4(プログラムA&B 交互上演):2024年4月13日(土)~5月6日(月・休)
デカローグ5~6(プログラムC):2024年5月18日(土)~6月2日(日)
デカローグ7~10(プログラムD&E 交互上演):2024年6月22日(土)~7月15日(月・祝)

【原作】クシシュトフ・キェシロフスキ/クシシュトフ・ピェシェヴィチ
【翻訳】久山宏一  【上演台本】須貝 英  【演出】小川絵梨子/上村聡史

公式HP:https://www.nntt.jac.go.jp/play/dekalog/

おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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