本記事に先駆けて公開した
~序章~に続き、
浦井健治さん&伊礼彼方さん スペシャル放談本編をどどーんとお届けいたします。
ミュージカル『エリザベート』ルドルフ役ダブルキャストとして出会ったお二人は、その後、信念に基づきそれぞれの道を歩んできました。それは、まるで俳優武者修行!
そんな
二つの道が再び交わる2016年を、そしてお互いのことを大いに語っていただきました。

浦井健治さん、伊礼彼方さん
スペシャル放談~序章~より続く…
──性格も進むべき方向性も違ったお二人。でも、伊礼さんが「どこか似ているところもある」とおっしゃったように、演劇ファンから観ると、次はどの演出家さんとお仕事されるのか、いつもワクワクする存在という共通点があります。伊礼)
まず、“今しかできないこと、今しか得られないことがある”という考え方は共通しているんじゃないかな。浦井)
そうだね。伊礼)
あと…えーと…。
言葉を選ばないといけないこと言おうとしているんだけど、選べないから言うのやめるわ。浦井)
言ってよ!聞きたい、聞きたい!伊礼)
なんていうのかな。
もちろんいろんな方向性があって当然だし、人それぞれの考え方があっていいんです。
でも、僕が思う一番素敵なポジションの役者さんって、浦井くんのポジションなんです。浦井)
ほぅ!伊礼)
こうやって『あわれ彼女は娼婦』『王家の紋章』では主役をやるでしょ。でも、ほかの作品では2番手も3番手もやれる。それが素晴らしいと思うわけ。
それぞれの作品によって自分の役割を変えながら、でもその作品を通してきちんと自分を見せていく。そういうポジショニングっていうのかな、それを総合的に考えて次の駒を進めているところが非常に魅力的だと思うんだよね。すごく尊敬しています。浦井)
ありがたい言葉です。──そして、お互いを認め合うお二人が、いよいよ舞台上で相まみえることになりました!浦井)
彼方が吸収してきたもの、そしてどんな芝居をするのかを見られるのも楽しみです。
尊敬する大先輩、中嶋しゅうさんから、彼方が小川絵梨子さんの演出を受けたとき(『今は亡きヘンリー・モス』2010年)の話を聞いたんです。徹底的な演出(指導)を受けて、しごかれていく中で、彼方が日々変化していくのを目の当たりにしたと、すごく褒められていて。そんな彼方と、まずストレートプレイで、その後、ミュージカルという流れで一緒に板の上に立てるのがうれしいですね。僕にとって彼方は同世代の俳優というだけじゃない、兄弟みたいな感覚なんですよね。──では、まずは6月の新国立劇場『あわれ彼女は娼婦』のお話から。浦井)
『あわれ彼女は娼婦』で栗山民也さんの演出のもと、きっと彼方は毎回一期一会の芝居をしてくると思うんですよね。そして、二人の間には蒼井優さんがいて。彼方と芝居で向き合えることがすごく楽しみですね。伊礼)
僕はがっつりいきますよ(笑)。
共演できることだけでも楽しみなのに、それが敵対する役ってね。
ここでバチバチにできるんですよ。これまでは、会うとバカな話しかしてなかった僕らが!浦井)
だよね(笑)。伊礼)
じっくりと話し合っていきたいよね。浦井)
芝居の話、いっぱいしたいね!
そうやって本気でぶつかり合う、重量感のある骨太な芝居になるんじゃないかと思います。──司令塔には栗山民也さん、これまでにも演出を受けたことのあるお二人から見た“演出家・栗山民也さん”は。 伊礼)
栗山さんはしっかりとしたビジョンがある方なので、何を言っても微動だにしないんですよ(笑)。僕は、その栗山さんの稽古場で もがくのが好きなんです。
自分が思うプランをとりあえず一回やらせてくださいって!
そしてやらせてもらい、結局戻されるという。浦井)
笑!伊礼)
一度やらせてもらって僕は納得するんです。いつもそういうやり方をさせてもらっているので、今回は浦井くんも巻き込んでね。ガッツリいかせてもらおうと思います。浦井)
巻き込まれるの?そっか、僕も頑張るよ!──浦井さんのスタイルは。浦井)
僕は逆に、とりあえず従ってやってみるというスタンスですね。
もちろん自分なりのアプローチは考えていきますし、自分の引き出しを用意して役にあてがってやってみますが、演出家さんのビジョンがあるなら、まずは一度乗ってみる。
そして、そこで生まれる新しい発見を大事にして自分なりの芝居を作っていく感じですね。浦井)
栗山さんは、まず、作品に対して絶対的な愛がある。2015年に上演した『デスノート』でダブルキャストの柿澤くんバージョンを栗山さんの隣で見た時「あ、そうくるか」「そういう芝居をするんだよなー」「そうだよなー」ってぼそぼそつぶやいていて(笑)。そのひと言ひと言に、役者への愛が溢れているんです。そして作品を楽しんで作られていらっしゃるのがわかるんです。もちろん、役のひとつひとつへのアプローチへも愛がある。
それは、決して作品を、役者を見放さないということに繋がって、必ず最終的にはわれわれ役者の尻をぬぐってくれると思えるような、懐が深く、頼りになるまるで大きな船のような演出家さんです。
そこにどんどんぶつかっていくのは、彼方らしいね(笑)。
彼方が栗山さんのビジョンをどう切り崩しにいくか、きっとそこで化学反応が生まれて作品がより魅力的になるんだろうな。栗山さんもワクワクしていると思うよ。伊礼)
本当に楽しみだよね。しゅうさんも一緒だし!!作品の魅力、栗山演出の魅力などをうかがった『あわれ彼女は娼婦』浦井健治さん&蒼井優さんインタビューはこちら──そして8月には連続共演となるミュージカル『王家の紋章』が控えています。浦井)
今年は連載開始から40周年を迎え、今なお続いている作品です。原作ファンの方が本当にたくさんいらして、単行本も60巻まで出ていて、累計4000万部ですよ。伊礼)
ちょっとお金に換算してみる?浦井)
何でそういうこと言うの!伊礼)
たまにはそういうエグイ話をする浦井健治を出していかない?真っ白いイメージを覆すような (笑)。浦井)
そういうの大丈夫だから!!(笑)伊礼)
あ、そうですか(笑)──お話を戻しますと(笑)、こちらの原作はご存知でしたか。浦井)
知ってはいました。
彼方は?伊礼)
うん、タイトルは知ってた。
読んだことはなかったけど、絵も知ってたよ。──その『王家の紋章』がミュージカルになるのですね!浦井)
そうなんですよね。40周年のメモリアルイヤーに初舞台化。それが東宝ミュージカルで、演出が荻田浩一さん、作曲がシルヴェスター・リーヴァイさん、そしてわれわれがそのキャラクターを演じさせていただけるのは大変光栄なことです。
原作ファンのみなさんにも納得していただけるものでありながら、演劇的な楽しみ方、ミュージカルならではというものを目指していけたらと思います。ワクワクします。伊礼)
浦井くんがメンフィスで、僕がライアンお兄ちゃんなんだよね。実際、芝居で絡むかは…僕は現代人なんでね。浦井)
時空の狭間から彼方の声が聞こえるのかな(笑)。──各キャラクターへの思い入れも含め、非常に有名な原作のある作品に挑むのはどんな感覚ですか。やりにくさなど特別な感覚はありますか。伊礼)
漫画原作にはあまりやりにくさは感じないのですが、オリジナルがあるものとしては、2014年に出演した『朝日のような夕日をつれて』のときに苦労したことが思い出されますね。
1982年に生まれた、ちょうど僕らと同い年くらいの作品で、作品ファンが作品と共に歳を重ねてきた層なんですよね。つまり、台詞とか劇中の詩とかを覚えている人たちがいっぱいに見にくる…。まぁ、あんなに血を吐くような稽古をしたのは初めてでしたね。
本番が始まってからも無言のプレッシャーは続き、精神的につらかったです。あんなに舞台袖に捌けたくない、出るならずっと出ていたいと思う作品は初めてでした。袖に捌けると恐怖心が甦るし、いろいろ考えちゃうから。浦井)
それ、相当だね。作品がそれだけ愛されているってことでもあるんだけど、それはかなりのプレッシャーだったんだね。──浦井さんも熱狂的ファンがたくさんいる『デスノート The Musical』で主人公の夜神月(ライト)を演じられましたよね。浦井)
自分も原作ファンだったので、“月”や“L”に対する強いイメージを持っていました。なので、原作ファンの方に失礼がないようにという思いはありました。でも、それと同時に栗山さんが目指す演劇、そしてワイルドホーンさんとのタッグで立ち上げられる『デスノート The musical』の中での夜神月を作りあげなくてはならないと思っていました。
それは今回の作品でも一緒で、まず、このチラシにあるようなグラフィックを含め、作品のイメージは大事にしないといけないなと思っています。この作品が大好きで、ミュージカルに興味を持っていただいた方が見たときにがっかりさせないように、ヴィジュアルも大切にしていきたい。ミュージカルなので、リーヴァイさんがどんな曲を作ってくるのかも楽しみですし、山口祐一郎さんや濱田めぐみさんをはじめとするみなさんと一緒にミュージカルとして立ち上げていくことへの期待も大きいです。今回集まった共演者のみなさんとだからこそできる『王家の紋章』を目指す!そのトライアルも楽しみです。──伊礼さんは漫画原作にはやりにくさは感じないとおっしゃっていましたが。伊礼)
原作には忠実にやらなくてはいけないと思っていますよ。ここで自分はこういう考えだから、こう遊んでやろうなんて思うと、さっき浦井くんが言ったように原作ファンはお怒りになりますよね。原作を尊重して『王家の紋章』の世界を生きることを考えていこうと思います。黒髪でね!──ヴィジュアルも含め、どんなミュージカル作品が立ち上がるのか楽しみです!
さて、お話の尽きないお二人ですがそろそろ楽しい対談も終わりのお時間が…。
2016年はどんな年になりそうですか。浦井)
ストレートプレイもミュージカルも、そしてほかの媒体にもチャレンジをしながら、自分の人生をも楽しんでいる、同世代として意識してきた彼方と8年越しの共演の夢が叶う2016年。
二人にとって新たな挑戦も含んでいる2つの作品でガッツリタッグを組めるのは幸せなことです。それを僕らの第二章のスタートにして、今度は自分たち発信でなにかをしたり、これはあの二人でと僕らに振ってもらえるような企画が生まれるようになったら素敵ですよね。これからも、お互いの個性を活かして挑戦し続けられるような二人になっていけたらいいなと思います。伊礼)
そうだね。長年夢見てきた共演、やっぱりあの時に彼が歩んでいこうとする方向性と違う方向性に行ったからこそ叶ったことだと思うんです。
もし似たような方向性だったらなかなか共演とはならないですよね。僕はこの人とやりたいなと思ったら、その人がやっていないこと、違う道から攻めていこうというタイプなんです。
一見、遠回りに見えるかもしれないけど、そのほうが実は近道だったりするんじゃないかなと。まあ、8年かかりましたけど(笑)。浦井)
彼方がやっていることって、ほかの人はあんまりやっていないんですよ。伊礼)
ん?僕は何をやっているの(笑)?浦井)
たまにミュージカルに出ていない年とかあるよね。伊礼)
ああ、そこ。2年間ミュージカルをやっていなかった。浦井)
面白いよね。伊礼)
ミュージカル辞めたのかって言われたりしたよ(笑)。浦井)
むしろ役者としてはそういうことがあってもいいよね。 伊礼)
そういう経験が成長させてくれることも絶対にあると思うんです。
自分でも驚いたんだけど、芝居を2年やったことで発声が変わっていて。長台詞を言うためには丹田に力を入れてぐわーっとやらないといけないでしょ。でも、それは歌だけを練習している時にはできなかったんだよね。
そんな風に、芝居での経験はミュージカルに出る上でも何一つ無駄にはなっていないと思う。
そう言えば、僕ら村井(國夫)さんに良く言われていたよね、「日本語を喋れ」って。それも芝居をやっていく中でわかってきた気がする。浦井)
そうそう。ちょっと補足すると、ちゃんとした“ことば”としての日本語、文章をということです。
今でも、そしてこれからもずっと課題として考えていかなくてはならないことだと思いますが、その台詞が何を意味しているのか。いわゆる行間というものも含めて。伊礼)
台本の読み込みが浅かったんだよね。それを未熟な僕らに言い続けてくれる村井さんのような先輩は宝物なんです。浦井)
人にものを教えるのはとてもエネルギーを使うから。人との出会いにも恵まれているよね、僕ら。伊礼)
さっき浦井くんの話にもあったけど、僕が小川さんにけちょんけちょんに言われたこともすごくプラスに働いたし。それをきっかけにお芝居に没頭したんだよね。浦井)
小川さんといえば、僕、小川さんに台本を4回取り上げられたんだよ。(『星ノ数ホド』2014年)伊礼)
4回取り上げられた?どういうこと?浦井)
初日一週間前くらいから台本持っていなかったの。「台本に答えはない」「はい!」って(笑)。
実際、そのころになると台本がなくても台詞はきちんと入っているんだよね、台本はお守りでしかない。伊礼)
そうだよね、確かに。浦井)
「また見てる!それは目の前で起こっていることじゃない!」って4回取り上げられて。それで公演が終わったときに卒業証書のように4冊ポンと渡されて。
え、今?みたいな(笑)。伊礼)
僕は逆。3週間ずーっと本読みだった。一日一頁進むか進まないかってくらい。浦井)
それは稽古始まってから?伊礼)
そう(笑)。「あの、すみませんけど、立たなくていいんですか」「大丈夫、台本を離したら、やることは決まっているから!」って。
確かに、読み続けていると、気づいたら台詞は入っているんだよね。そして動ける。
いやぁ、お互いいろいろ経験してきたんだね。
そして何よりもお互い8年前と背負っている責任も違うからね。あの時は勢いで芝居して楽しかったけど、今はひとつひとつちゃんと形にしていかないといけないと思うんだよね。しかも、一緒にモノを作れる時間も限られているんだって、最近よく思うよ。でも、それだけにより濃密な時間にはなると思うんだけど。
そう思うと、あの頃は無限に時間があるような気がしていたよね。浦井)
そうだったね。ものすごく贅沢な時間だったよね。伊礼)
そう、贅沢だった。浦井)
あと、8年前は仕事が終わった後に二人でご飯とかよく行ったよね。
あれが美味しかったこれが美味しかった、あれが安いこれが安いっていろいろ見つけて(笑)。伊礼)
そうそう、まぁ、今の浦井健治はもう霜降りのお肉しか食べないんでしょ、やっぱり(笑)。浦井)
なんなの、それ!
あのね、最近は焼き肉行っても胃がもたれるんだよ(笑)!伊礼)
うわぁ、わかるわかる!!あ~そう、やっぱり!
ということは、もしや、カルビより…。浦井)
ハラミ!伊礼)
だよね!伊礼)
8年経つとね、そういう変化もあるんですよ(笑)。伊礼)
そのあたりも含めて、2016年の二人をお楽しみに!浦井)
そこも含めるの?まあいいけど(笑)。
なんか今日は同窓会みたいだったね。結局、最後もくだらない話になっちゃったけど(笑)。伊礼)
結局、お互いに根本は変わっていないってことかな(笑)。
でも、今日話をして思ったけど、役を掘り下げ掴んでいく過程とか、それに対する情熱は同じだなって。今年、楽しくなりそうだね。よろしく!浦井)
こちらこそ!──素敵なお話をありがとうございました。お二人のお話は尽きることがなさそうですね(笑)。舞台上でどのような演技バトルを見せてくださるのか、今年もお二人からは目が離せません! 続いては、サービス精神旺盛なお二人ならではのおまけコーナー(2つもあります!!)
【おまけ1】「子役のルドルフくんが!!」
──お二人がルドルフ役をされていたころに子役のルドルフだった石川新太さんが、大人の俳優さんとして『GEM CLUB』や『ジャージー・ボーイズ』にご出演されるんですよ!伊礼)
いるいる!新太くん、もう16歳か。浦井)
しっかりした顔立ちで、もうすっかり大人だね。
伊礼)あ、阿部兄もいる!カッコイイね~!こんな感じ。 浦井)
『ジャージー・ボーイズ』、ニューヨークで見たなー。これ、面白いよ!
浦井)ねぇねぇ、僕たちが持つべきはこっちじゃない? その場にいる全員)笑!!!
【おまけ2】 「彼方へ」、そして「健治へ」
──そういえば、2006年に発売された浦井さんのファースト写真集が「彼方へ」ですよね。浦井)
彼方に出会う前に、はるか彼方までこれからも縁を繋いでいこう、道を歩んでいこう!そういったいろいろな意味を込めて、大島ミチルさんに同タイトルの楽曲も作っていただいての「彼方へ」だったんです。
それが、ある日、劇場ロビーでその写真集の横に彼方のグッズが置かれていて…まるでTo 伊礼彼方みたいな。どんだけ好きなんだという…(笑)。伊礼)
だから僕もね、いつか「健治へ」って写真集を作ろうと思ったんですけど、そのあと僕の路線が変わって写真集とか作る感じじゃなくなっちゃってさ(笑)。
でも、今回はありかな、「健治へ」。浦井)
ありでしょ!写真集じゃなくても!!伊礼)
(浦井さんに手を差し伸べて)じゃあ、こうしているやつを!浦井)
あの…念のためもう一度言っておきますが、僕の写真集はその意味じゃないです!!伊礼)
笑!!★8/3追記★伊礼彼方さん渾身の1曲(歌・演奏・作詞・作曲)、「健治へ」の発売が決定いたしました!
浦井健治さんとの8年越しの帝劇初共演を記念し8/3より『王家の紋章』公演期間限定販売!
劇場ロビーでお買い求めいただけます。1,000円(税込)詳細は
こちらから♪
ヘアメイク/山下由花
スタイリスト/宮崎智子[浦井] 小田優士(Creative GUILD)[伊礼]
衣裳/Karaln(03-6231-9091)[伊礼]
おけぴ取材班:chiaki(インタビュー・文) おけぴ管理人(撮影)