2014/04/08 劇団スタジオライフ『トーマの心臓』製作発表会見レポート

日本が誇る “少女漫画界の神様” 萩尾望都さんの初期代表作『トーマの心臓』

ドイツの全寮制男子校を舞台に、少年たちが “自己” と “愛” に目覚めていく様子を繊細に描き、いまもなお読み継がれる不朽の名作・・・その舞台版、8度目の上演が決定です!!

この作品を舞台化することで、その後の方向性が決定されたと言っても過言ではない劇団スタジオライフ

初演から18年を経て、5-6月・東京紀伊国屋ホール、7月・大阪梅田芸術劇場シアター・ドラマシティでの上演が決定した舞台『トーマの心臓』製作発表会見の模様をお届けいたします。

謎の遺書を残し自ら命を断った少年・トーマ
その死から半月後に転校してきた、トーマに瓜二つの容姿を持つエーリク
そして心に何かを秘めた優等生・ユリスモール、彼を見守るオスカー・・・etc。

魅力的なキャラクターたち、そして繊細な物語世界を、原作に忠実に再現したスタジオライフ版『トーマの心臓』。

今回の製作発表会も、作中で描かれる「ヤコブ館のお茶会」を彷彿とさせるティーパーティ形式という凝った趣向で開催されました。
(進行役を務めた石飛幸治さん&松本慎也さんによると「ヤコブ館のお茶会で使われているとのと同じ茶葉を使用しております」とのこと♪)



寄宿学校=シュロッターベッツ校の制服に身を包んだ俳優たちがお茶を振る舞うという凝った趣向に、
すっかり “お茶会に招かれた下級生” 気分!

まずは演出家・倉田淳さんと、原作者・萩尾望都さんのトークセッションの模様からどうぞ。


少女漫画界の伝説“花の24年組”としてデビュー。
今もなお精力的に作品を生み出している萩尾望都先生です!

倉田:
「今年は1974年の『トーマの心臓』連載開始から40年、東京公演の会場となる紀伊国屋ホールが開館50周年、そしてスタジオライフも創立29年で30周年まであと一歩ということで(笑)、またこの作品を上演できることを嬉しく思っています。なにかを “続けていく” ということはほんとうに大変なことで、40年前にこの作品を生み出した萩尾先生はどんな心境でいらしたのかと」

萩尾:
「“長期の連載を” と声をかけてもらい描き始めたんですけれど、実際に連載が始まってみたら読者アンケートの結果が最下位だったんです。それで1週目で “もう、やめましょう” って言われたの。
月刊誌から週刊誌に移って初めての連載でしたから “なんとかあと1週、もう1週” って編集の方を騙し騙し(笑)、続けました。いただいたファンレターにも “手紙はいいからアンケートに投票して” ってお返事して(笑)。
ちょうどその頃『ポーの一族』の単行本が出て、それが即日完売したんです。それで編集部内で “もう少し様子を見よう” という声が出て、なんとか最後まで連載することができました。
当時、編集の方からは “読者は小学生なんですよ!” と言われましたね(笑)。でも自分が小学生の頃はこれくらいの(内容の)ものは読んでいたな、と思って。この話がおもしろいかどうかなんて周りの人には聞かないんです。自分がおもしろいと思っているから

倉田:
「いま世界中で日本のマンガ文化が広がってきています。先生の作品も英語やフランス語、ポルトガルにも翻訳されていて出版されている。昨年ロサンゼルスの書店で英語版の『トーマの心臓』を手に入れたんですけれど、売り場の女性が “これは本当に良い本よ!いいものを買ったわね” と絶賛していました。イギリスでこの作品を舞台化していると話した時にも、向こうの演劇人から大変興味を持たれまして。マンガというと西洋の文化では子供のものという認識ですけれど、日本のマンガから彼らの概念を超えるものに出会えたというわけなんですね」


萩尾:
「海外には本当にコアなファンが多いですね。いまのうちに日本文化をどんどん輸出して、世界をマンガ漬けにしたいですね」

倉田:
「本当に精力的に活動されていて。いまも新しい挑戦である歴史物『王妃マルゴ』を連載されていますね」

萩尾
「描く意識は変わらなくても体力は衰えてくるんです。お休みを取ると手が(描くという)記憶を失ってしまうんですよ。バイオリニストやバレリーナのようなもので、3日休んだら取り戻すのが大変。ですから描けるうちは連続的に仕事を続けていこうと思っています。首から肩まで全部をつかって描くので体力がいるんですね。筋力がないと短い線しか描けなくなる。装着するとバシーっと描けるハイブリッドな腕とか筋肉増強剤とか欲しいくらい(笑)。これからは筋力と眼力が強い漫画家が残るのではないでしょうか(笑)

倉田:
「描くということは、肉体を使うアスリートのようなものなのですね。最後に8度目になる今回の『トーマの心臓』上演にむけてメッセージをいただけますか?」

萩尾:
「『トーマの心臓』はスタジオライフに出会って開花した幸せな作品だと思っています。発表から40年も経つと読者も次第に離れていくものなのに、8度も上演していただいて。スタジオライフのファンとしても嬉しいし、原作者としてもこんなに幸福なことはないと思っています」

続いて、劇団代表の河内喜一朗さんとキャストからのコメントが。

河内:
「初演の頃、出演者たちは20代前半でした。再演を重ねるごとに(劇中の少年たちとの)年齢の差がどんどん大きくなり・・・ “トウのたったトーマの心臓だな” なんて(笑)。
でも芝居が始まると彼らが10代の少年にみえてくるわけです。この作品のテーマである “レゾンデートル=自己の存在意義” に向かって、役者たちは余計なものをそぎ落として邁進する。その姿が作中の登場人物と重なり、まるで少年のようにみえる。スタジオライフにとっていつの時代も取り組むべきテーマ、作品だと思っています」

97年から断続的にユリスモールを演じてきた山本芳樹さん
山本:
「まさか、またユリスモールを演じることができるとは思っていませんでした。『トーマの心臓』は自分にとってほんとうに大事な作品です。いかに新鮮に演じられるか、どんな可能性を見つけられるか。いい仕上がりで皆さまにおみせできるよう、大切に演じたいです」


ダブルキャストでユリスモール役に挑む松本慎也さん
松本:
「自分がユリスモールを演じる日が来るとは夢にも思っていなかったので、最初は驚きと不安でいっぱいでした。いまちょうど入団10年なのですが、そのすべてをかけて最高の『トーマの心臓』にしたいです。
これまで演じていたエーリク役は、人に対してまっすぐで愛をたくさん持っている役だったので、演じていると僕自身も人に優しくなれました。でも今回は苦悩するユリスモール役。先輩方によるとこの役は「ものすごく苦しい!」ということなので、ちょっと怖いですけれど(笑)。ついていけるようにがんばります」

“永遠の少女” と呼びたくなる可憐さの及川健さん。

入団2年足らずの新人・久保優二さん&田中俊裕さんとのトリプルキャストも話題です!
及川:
「スタジオライフとして4年ぶりの『トーマの心臓』で、私としては11年ぶりのエーリク役を演じます。
・・・11年ぶりです!(一同笑) 
この作品に出会えたことで劇団を取り巻く環境も変化しました。僕自身もエーリクという役を通して人間として大切なものを学んだ気がしています。
とにかく若々しく、これが最後だと思ってがんばります!」

作品の前日譚『訪問者』に引き続きオスカー役を演じる岩崎大さん
岩崎:
「これまでサイフリート役やトーマのお母さんなど、毎回違う役を演じてきました。さまざまな角度からこの物語をみてきたと思っています。
『訪問者』でオスカーを演じた経験を活かし、先輩方の胸を借りて一所懸命に努めたいと思っています」

同じくオスカー役に挑む仲原裕之さん
仲原:
「憧れであるオスカー役をいただき、興奮とプレッシャーと半々です。オスカーは大人でドライなところもあれば、すごくナイーブな部分もあって。でもそれはすべて自分以外の誰かを想っているからこそなんです。
(オスカー役の先輩である)笠原浩夫さんからは、オスカーの少年時代を描いた『訪問者』を擦り切れるまで読め、と言われています。想いにあふれたオスカーを目指してがんばります」

秘密を知る少年・レドヴィ役をシングルキャストで務める関戸博一さん
関戸:
「4年ぶりにこの制服に袖を通し、ボウタイを結びました。この格好をするだけですごく気持ちが引き締まるというか、たとえて言うならば日の丸を背負った五輪選手のような・・・あ、ちがいますね(笑)。でもなにかを背負う、そんな気がします。
レドヴィは物語の最初から、トーマの気持ちに寄り添う役。それはつまりこの物語に寄り添う役なんだなと。4年前は自分のことで精一杯でしたが、今回はもっともっと作品に寄り添っていきたいと思います」

前回ユリスモールを演じた青木隆敏さん。
今回はなんと悪魔的な暴力性を持つサイフリート役です!
青木:
「『トーマの心臓』で初舞台を踏み、4年前にはユリスモール役を演じさせていただきました。劇中に “トーマに惹かれる良い種子と、サイフリートに惹かれる悪い種子” というような台詞があるんです。今回僕はサイフリート役ということで・・・多分この4年の間に僕の中で悪い種子が育ってしまったんだなと(笑)
自分自身の心の堕落をしっかりと受け止めて、舞台上に悪の華を咲かせたいと思います」



スタジオライフならではのキャストの取り合わせの妙や、『LILIES』に引き続きライフ作品参加となる乗峯雅寛さんによる新たな舞台美術も楽しみな舞台版『トーマの心臓』は、2014年5月24日から東京・紀伊国屋ホールにて、7月11日から大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演予定です。

ベテラン・新人一丸となって、さらなる深淵を目指すスタジオライフの挑戦をお見逃しなく!!


【公演情報】
Studio Life 公演『トーマの心臓』
東京公演:2014年5月24日(土)~6月22日(日) 紀伊国屋ホール
大阪公演:2014年7月11日(金)~7月13日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

<スタッフ>
原作:萩尾望都『トーマの心臓』(小学館文庫©萩尾望都)
脚本/演出:倉田淳
宣伝イラスト:東逸子

<キャスト>
山本芳樹、及川健、岩﨑大、松本慎也、仲原裕之、青木隆敏 他 
詳細は公演公式サイトをご確認ください

<ストーリー>
ドイツのギムジナウム(高等中学校)と寄宿舎生活を舞台にくり広げられる物語。
冬の終わりの土曜日の朝、一人の少年が自殺した。
彼の名はトーマ・ヴェルナー。
そして月曜日、一通の手紙がユリスモールのもとに配達される。
「これが僕の愛、これが僕の心臓・・・」
トーマからの遺書だった。その半月後に現れた転入生エーリク。
彼はトーマに生き写しだった。
人の心を弄ぶはずだった茶番劇。しかし、その裏側には思いがけない真実が秘されていた。

劇団Studio Life 公式サイト
公演特設サイト

おけぴ取材班:hase(取材/撮影) mamiko(文)  監修:おけぴ管理人

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