ミュージカル『グレート・ギャツビー』製作発表記者会見レポート

突然現れた一人の美しき大富豪。
全てを手に入れた男が、
ただひとつ手に出来なかったのは愛──。





 20世紀の文学史における最高傑作の一つとされ、これまでにも幾度か映画化されてきた名作『グレート・ギャツビー』(F・スコット・フィッツジェラルド作)。宝塚歌劇団で初のミュージカル化に成功した小池修一郎さんが脚本・演出を一新して挑む本作で、主人公ギャツビーを演じるのは井上芳雄さん

 東京藝術大学在学中に、小池さんに見いだされ、ミュージカル『エリザベート』初演のルドルフ皇太子役でデビュー、以後の活躍は申し上げるまでもない井上さん。小池×井上の最強タッグで挑む、初の“翻訳ものでない”新作!これは否が応でも期待は高まります。さらには、音楽は『BANDSTAND』でブロードウェイデビューを果たす気鋭の作曲家リチャード・オベラッカーによる全曲書下ろし!!

 日米ミュージカル界の才能のコラボレーションが話題を呼ぶ、日生劇場5月公演『グレート・ギャツビー』製作発表の様子をレポートいたします。


【小池修一郎さんごあいさつ】



脚本・演出:小池修一郎さん

「私が演出家デビューして5年後の1991年、念願かなって『華麗なるギャツビー』(杜けあきさん主演)を手掛けることができました。そのとき、第17回菊田一夫演劇賞をいただき、それが、私がこのように宝塚以外でも仕事をさせていただいていることのひとつのきっかけになったと思います。

 今回のプロダクションで、ある意味一番プレッシャーを感じるのは“井上芳雄という存在”です。デビュー以来、俳優として確固たる地位を築き、ミュージカル、ストレートプレイのいずれにおいても、若手俳優では本数、質的充実度ともに、彼ほど着実に歩み、達成している俳優はいません。その人がやって成立するというのは、どういうギャツビーなのか…、そこに非常に悩みながら、その展開を考えているところです。

 また、新たに創り上げるにあたり、アメリカを代表する物語の音楽をアメリカの方に書いていただくのはどうかというアイデアが浮かびました。そして、候補者の中から選ばれたのは、リチャード・オベラッカーさんというこれからの作曲家です。彼が書くのは、オーソドックスで、ノスタルジックな曲です。
 彼の音楽と、このフレッシュなメンバーで、どんなギャツビーになるのかを私自身楽しみにしています」


「(このメンバー)フレッシュと申し上げてよろしいですよね」

 1986年の演出家デビューのときから、手掛けることを夢見ていた『グレート・ギャツビー』への小池さんの想いがあふれるごあいさつ全文は、レポ終盤にてご紹介いたします。


【ジェイ・ギャツビー役:井上芳雄さん】



ジェイ・ギャツビー役:井上芳雄さん
毎夜、パーティーを主催する謎めいた大富豪

「小池先生の作品への想いと、僕への身に余るコメントをうかがっていて、とても光栄であるとともに、怖いなという気もしています。初舞台から今まで、何とか舞台を続けさせていただいた、その経験は、このギャツビーのためだったんだと思える作品にしたいと思います。

 ギャツビーという役は、男優ならば、宝塚もいれれば女優だって、誰もがやりたいと思う素晴らしい役です。そこにはプレッシャーしかありませんが(笑)、全てを受け止めながら、このフレッシュなメンバーで新しい作品を作れればと思います」

 ふと、井上さんがファイナル『モーツァルト!』初日カーテンコールでの小池さんとの12年越しのハグ、その思いなどを語ったおけぴインタビューのことを思い出しました。



「打ち合わせでは、ひとりひとりのコメントは1、2分ということでしたが、小池先生のお話をうかがっていて、同じだけしゃべらなければならないのかと、プレッシャーを感じていました(笑)」


「最後に、今回素晴らしいチラシを撮ってくださった、韓国のカメラマンのChagoonさん。
だいぶ盛ってくださって(笑)、僕自身、「あれ、これ誰だろう」と思いました。舞台をご覧になった方に「チラシの人、最後まで出てこなかったね」と言われないよう、チラシに負けないように外見も中身も充実させて頑張りたいと思います」


【デイジー・ブキャナン役:夢咲ねねさん】



デイジー・ブキャナン役:夢咲ねねさん
イースト・エッグに住む美しい人妻。ギャツビーの昔の恋人

「宝塚在団中に小池先生の『グレート・ギャツビー』(2008年)を見たのをきっかけに、小説や映画などを見て、どんどん作品への出演意欲が高まっていきました。在団中はご縁がありませんでしたが、こうして、卒業してご縁をいただきうれしく思っています。
 (作品については)華やかなパーティーの場面もあるのですが、そこでの人々の浮かれようなどに、どこか退廃的な印象を受けました。デイジーは誰かに支えてもらわないと生きていけないような、ちょっと弱さのあるヒロイン。彼女の揺れる女心を出せればと思います。フレッシュに頑張ります」


【トム・ブキャナン役:広瀬友祐さん】



トム・ブキャナン役:広瀬友祐さん
デイジーの夫。ニックの級友。

「この作品に出演できること、小池先生のもとで、井上芳雄さんをはじめ素晴らしいキャストの方々と舞台に立てることを幸せにうれしく思っています。初日を迎えるまで、乗り越えなければいけない壁はたくさんあると思いますが、フレッシュに頑張ります!


【ジョージ・ウィルソン役:畠中洋さん】



ジョージ・ウィルソン役:畠中洋さん
マートルの夫。ガソリンスタンドを経営している。

「一人だけ、こんな格好ですみません。衣裳です(笑)。
 小池先生とも20年ぶりぐらい、素敵なキャストの方々と一緒にできることを非常に幸せに光栄に思っております。
 僕が演じるジョージは、映画を見た印象では、一生懸命働いて、働いて、働いて、でも妻に浮気されて…、ギリギリな人物です。そのギリギリが狂気に変わり、一歩を踏み出してしまう。そこをすごく上手く演じていたので、真似るわけではないですが、それ目指して役を深め、演じていきたいと思います」


【マートル・ウィルソン役:蒼乃夕妃さん】



マートル・ウィルソン役:蒼乃夕妃さん
トムの愛人

「小池先生とお仕事をさせていただくのは、『スカーレット・ピンパーネル』のお披露目公演以来、7年ぶり。正直、今からとても怖いんです。(小池先生の中の)イメージを打ち破っていけるように、頑張っていこうと思います。
 作品の印象は退廃的で毒々しいけれど、そこに生きている人々の上昇志向、野望を強く感じました。マートルは自分の生きる環境で、できるだけおしゃれに、できるだけイカした自分でいたいと必死だった。上流階級の洗練された女性への憧れ、それが彼女の生きる原動力。その心の中で渦巻いているギラギラした野望を隠さずに表現していこうと思います。宝塚も卒業したので、とてつもなく女らしく演じられたらと思っています」


【ジョーダン・ベイカー役:AKANE LIVさん】



ジョーダン・ベイカー役:AKANE LIVさん
デイジーの親友。プロゴルファー。

「原作を読み返すと、アメリカのバブルの時代、上流階級の人々はパーティーをして楽しみながらも、ひとりひとりは満たされない部分を抱えていた。まるで仮面を被っているように感じました。そして、その仮面の奥を、ニックを通して見せていく展開が面白いと思いました。
 私が演じる、あの時代に女性プロゴルファーとして活躍していたジョーダンという女性は、とても賢くて、プライドが高く、気が強い女性なのかなというイメージがありました。でも、シーンによっては、繊細な部分も持ちあわせている女性だと思えてきました。
 小池先生とは、2011年の『MITSUKO~愛は国境を越えて~』以来なので、私も(蒼乃さんと)同じく怖くもあり、ドキドキもしています」


【ニック・キャラウェイ役:田代万里生さん】



「ニッキュ…?!」ご自身もびっくりの(笑)、いきなり名前を噛んでしまうという事態から始まった田代さんのコメント。井上さんがスルーしてくれるはずはなく…(笑)。


ワンモアチャンス!


ニック・キャラウェイ役:田代万里生さん
ギャツビーの隣人で、作家志望の青年。デイジーはいとこ。

「とてつもなく大きな役を任されたなと、大きな責任を感じております。
 原作では、物語はニックの語りで始まり、ニックの語りで終わります。そこに、かつて演じた『サンセット大通り』のジョー役との共通点を感じています。その経験が活かせればと思っています。また、この物語の登場人物たちはニックにだけ本音を吐露するシーンもたくさんあります。つまり、ニックを介して彼らの心情がお客様に伝わるのです。そういうところも丁寧に演じようと思っております」

 『エリザベート』ルドルフ、フランツ、コンサートバージョンの『MITSUKO』で小池さんの演出を受けてきたものの、本格的に新作をご一緒するのは初めてという田代さん。フランツ役をオファーされたときの小池さんとのエピソードは、こちらのおけぴインタビューにて!


【質疑】


──原作、舞台、映画から感じる、作品やご自身が演じられる役についての印象をお聞かせください。


井上さん)
 最初に見たのが宝塚の『華麗なるギャツビー』初演の映像です。杜さんの大きな背中、そしてその背中が語るなぁという印象が強く残っています。
 ギャツビーについては、男性の象徴、男性のロマンティックなエキスをギュッと集めたらギャツビーになるんじゃないかという気がしています」


お隣にいらっしゃるのにこういうことを言うのはなんですが(笑)

井上さん)
 「小池先生はすごいロマンティスト、だから先生の作品はすべてロマンティックなんですよね。そしてギャツビーもロマンティスト。自分の想いのためだけに、ものすごいエネルギーを使ってバカな嘘をつく。少しでも賢く生きたいと思いながらも、僕ら男性はもがいているんですよね。それに対して、女性は賢い(笑)。
 そんなロマンティストを自分がどう演じられるかはわからないのですが、今は、ギャツビーという男をそんな風に思っています」


広瀬さん)
「作品の印象は、どこにベクトルを向けているのかにも変わってきますが、井上さんもおっしゃったようにとてもロマンティックだと感じました。
 また、僕が演じるトムは本当に傲慢でふてぶてしい、好色で、イヤなヤツ。僕自身はすごく真面目で、すごくイイ人なので、なかなか共通点は見つからないのですが…」


「ごめん突っ込んだほうがよかったよね!」(井上さん)
「先輩お願いします」(広瀬さん)


「そういうムードがわからなかったから。ニッキュとか言うし、このままただのイイ人と自分を肯定して終わっちゃうところだったね」(井上さん)
「ありがとうございます」(広瀬さん)


「(イイ人だなんて)そんなことないよ!(笑)」(井上さん)
「という印象です(笑)」(広瀬さん)



田代さん)
「戦争、結婚、恋愛、禁酒法、自らの過去…、この作品からはそれぞれの“解放されたい”という思いを強く感じました。アメリカの盛隆と衰退の両方が混じり合った時代ゆえに、衣裳もこのように印象的なものになっています。そして、ジャズ・エイジ、音楽も変化していった時代ですので、ミュージカルにうってつけだと思います。
 僕が演じるニックは、ほかのアクの強い登場人物たちにくらべ、マイルドな役だと感じていました。でも、原作を読み進めると、それだけではなく、皮肉っぽいことを言ったり、恋愛にたじたじ、すごく優柔不断だったり、人間的な魅力にあふれるキャラクターだと思っています」

 いつもながら田代さんのコメントは興味深いですね。しかし…着席にての回答だったにもかかわらず、突如、立ち上がってお話を始める田代さんに、またもや井上さんからツッコミが入るという一幕も。この日は、全体的に田代さんのチャーミングが炸裂していました。


──オベラッカーさんの楽曲の印象は。


井上さん)
「これから僕だけが歌わされる?…いえいえ、代表して歌わせていただくのですが、小池先生がおっしゃっていた通り、壮大な楽曲という印象です。披露する曲のほかにも、様々な曲調の歌がありますが、どのジャンルの楽曲でも安定した心地よさがある。偉そうな言い方になりますが、レベルが高いというか。

 そして、その素敵なメロディに、自分たちの感情と物語の中で歌う意味を強く打ち出して、楽曲ははじめて完成するのだと思います。ただ出来上がったものをいただいてやるというのではなく、場合によっては「これじゃあ歌えない!」と突き返したり…絶対しませんけど(笑)。気持ちとしては喧々諤々しながら一緒に創るということがエポックになると思います


【楽曲披露:夜明けの約束】

 裏の顔を持ち、闇の世界で生きてきたギャツビーが、デイジーに再会したことで裏社会とは決別し、新しい人生を歩もうと決意を歌う曲。オベラッカーさん作曲による、本邦初披露となるナンバー。(ピアノ演奏:國井雅美さん、太田健さん)


ギャツビー役:井上芳雄さん


 ギャツビーの心の景色が浮かぶような楽曲です。大海原への出航、押し寄せる波のような迫力のある歌唱、そうかとおもえばさざ波のような心の揺れも…とてもミュージカルらしいドラマ性を感じました。とはいえ、百聞は一見に如かず!動画でどうぞ。



最後は井上さんからのメッセージです!


井上さん)
「今、お聞きいただいた歌も、本番は5割増しでいいと思うので(笑)、劇場にお越しいただけるとうれしいです。日米の才能がコラボレーションして全く新しいものを作る、日本のミュージカル界にとって、とても重要な作品になると思います。ゆくゆくは『レ・ミゼラブル』や『エリザベート』のように、「また4か月もやるんだ」と言われるような(笑)、日本ミュージカル界を支えるような大きな作品になれば!という意気込みでやりますので、ぜひ応援をよろしくお願いします」




【小池さん挨拶全文】

 高校生のころに、『夢淡き青春』というタイトルに惹かれて、翻訳本を読んだのが、この作品との出会いです。一部、文字だけではピンと来なかったものが、映画を観ることで、ローリング・トゥエンティ(狂騒の20年代)の表現はとても華やかで、思っていたより現代的だなという印象を持つようになりました。

 その頃から、こういう物語をミュージカルというか、舞台に乗せたいという気持ちを持っておりました。宝塚で1986年に演出家デビューいたしましたが、そのときも“ギャツビー”と“ヴァレンチノ”というサイレント映画を候補にしましたが、“ギャツビー”は著作権の問題もあり見送りとなりました。それから5年後、念願かなって『華麗なるギャツビー』をやらせていただきました。思い起こせば26年前のことになります。
 その時の公演はご好評いただき、菊田一夫演劇賞をいただきました。これが、私がこうして宝塚以外でも仕事をさせていただいていることの、ひとつのきっかけになったと思います。

 そして、今から9年前の2008年に、今回と同じ日生劇場で上演させていただきました。それは本公演、組単位の全員が出るものではなく、40人ぐらいの出演者で2幕ものとしてやりました。大劇場版をベースに手を加えて上演しましたが、この物語をやや小ぶりにして、且つ長くすることが大変な作業だったことを記憶しています。難しさを感じる公演でした。

 今般、これを井上くん主演でやらないかとお声がけいただきましたが、それを企画されたのは、池田重役の中に91年東京宝塚劇場でご覧になったときのイメージがあったのかと。

 また、打ち合わせをする中で、アメリカを代表する物語の音楽をアメリカの方に書いていただくのはどうかというアイデアが浮かびました。そして、何人かの作曲家が手を挙げてくださいました。その中で、この人ならと思ったのがリチャード・オベラッカーというこれからブロードウェイデビューする、新しい作曲家です。それをベースにし、劇中でどう使うかを再検討して、台本を作っていく、今はその作業の最中です。


 『グレート・ギャツビー』を新たに井上くんを中心とした、割とフレッシュな…。
(井上さん:フレッシュです!)
 顔合わせとしては割と新しいかなと思うんだけど…。
(井上さん:かなりフレッシュです!)
 井上くん、共演経験があるのは田代君ぐらいでしょ。

 このように、私にとってリメイクとしては、2度目の挑戦ということになる今回、ある意味一番プレッシャーを感じるのは井上芳雄という存在です。

 それはどういうことかというと、私は2000年に『エリザベート』、2002年に『モーツァルト!』をやって以来、彼と新作をやっていません。15年経て、2015年の『エリザベート』は3度目のリメイク、そこで彼はトートを演じましたが、私にとっては「帰ってきた」という印象。未知のことを一緒にやっているという感覚はありませんでした。

 私が記憶している井上くんは2002年の『モーツァルト!』で止まっているのです。もちろん、それから再演を重ねるごとに大きく成長していったのは、みなさんよくご存じだと思うのですが。ヴォルフガングの若い頃から亡くなる30代まで、多分15年ぐらいを描いていた物語の中を、彼自身がちょうど歩んでいるところだったので、あまり変化を感じなかったんです。当然、とても上手くなっていきましたが、見た目も変わりませんし、老けたわけでもなく、同じ衣装で同じカツラでしたし。

 しかし、改めて今の彼を見ると、見事なまでに俳優として確固たる地位を築いています。ミュージカルでもストレートプレイでもかなりの難役をやり遂げています。若手俳優としては異例、日本の演劇界を見渡しても、これだけキャリアを重ねている人もいないのではないかと思います。つまり、みなさん映像などと合わせていろいろとやっていますが、本数にしても質的充実度にしても、彼ほど着実に歩み、達成している俳優さんはいない。その人だと思うと、「おっと、この人がやって成立するというのは、どういうギャツビーなのか…」、そこに非常に悩んでおります。

 果たしてどうなるのか、前出のオベラッカー氏の音楽は、基本的にはスケールが大きくオーソドックスな音楽です。候補となった中には、オフ・ブロードウェイらしい、ソンドハイムの遺伝子を持ったような曲を書くような方などいろいろなタイプの作曲家がいました。その中で一番オーソドックスな、いい意味でノスタルジックな曲を書く方がオベラッカー氏です。その音楽と井上芳雄くん、そしてこのフレッシュなメンバーでどんなギャツビーになるのかを、私自身、楽しみにしています。それと同時に、ちょっと恐れと慄きもございます。
 みなさんお楽しみに!と申し上げたいですが、私自身ちょっと怖いのです。5月、日生劇場で開幕を迎えるころ、どうなっているかな。スリルと興奮を覚えています。
 劇場にお運びいただければと思います。


【作曲:リチャード・オベラッカー氏から届いたメッセージ】

 人生には、夢が巡り巡ってくる瞬間があります。
 私にとってはこのプロダクションこそが、まさにその瞬間なのです。小学生で初めてこの小説を読んだ時、自分のミュージカル第1作目はこれにしよう、と心に決めました。そして長い時間を費やして、登場人物たちの様々な声を、音符とリズムにのせる作業に熱中しました。しかし、残念ながら私の未熟さのせいでしょう、著作権法の勉強には時間を費やさなかったのです。後に、この小説の舞台化権は入手できないということを知りました。けれども私はこのミュージカルを創るという夢を、決してあきらめませんでした。そして自分が作曲したそれらのメロディも、決して忘れませんでした。

 今回の機会が訪れた時は、まるで夢が舞い戻ってきたような気がしました。この小説には、夢を実現する前に、その前進を阻まれてしまうといったテーマがいくつも登場します。そして私は今まさに、そうしたテーマを実現しつつあるのです。

 大勢の才能豊かなアーティストやプロデューサーとの共同作業は、素晴らしく光栄なものです。この本は、アメリカでもっとも偉大な小説としばしば評される作品です。このチームが物語の中に新たなアイデアを見い出して、それを舞台作品として作り上げていることに、深く感動しています。ある文化を、異なる文化のプリズムを通して見ることで、初めて最も普遍的な真実を提示できる場合もあるのです。

 私はそれらの真実を描くのに相応しいメロディを生み出そうと努力して参りました。そして今回コラボレートする皆様のご協力によって、1920年代の音楽と、コンテンポラリーなサウンド、そして現代のミュージカル音楽の表現、これらの要素を、ひとつに組み合わせる方法を見つけることができました。この物語には、時代を超える不朽の教訓が描かれています。それが観客の皆様のお耳に届き、心に残ることを願っています。もしも私の音楽がそれに貢献できるとしたら、その時こそが、遥か昔に生まれた私の夢が本当に実現する瞬間なのです。

リチャード・オベラッカー(指揮者・作曲家・作詞家・台本作家)
 シルク・ドゥ・ソレイユ「KA(カー)」ラスベガス公演のミュージカル・ディレクターを務める。また、シルク・ドゥ・ソレイユ「ドラリオン」世回公演では指揮と編曲を担当し、楽曲も提供している。今年3月31日よりプレビュー、4月26日より開幕する「バンドスタンド」でブロードウェイデビューを果たす。



【公演情報】
ミュージカル『グレート・ギャツビー』
2017年5月8日(月)~29日(月)@日生劇場(map)
2017年6月3日(土)~15日(木)@中日劇場 ( map )
2017年7月4日(火)~16日(日)@梅田芸術劇場メインホール( map )
2017年7月20日(木)~25日(火)@博多座 ( map )

<スタッフ>
原作:F・スコット・フィッツジェラルド
音楽:リチャード・オベラッカー
脚本/演出:小池修一郎

<キャスト>
ジェイ・ギャツビー:井上芳雄
デイジー・ブキャナン:夢咲ねね
トム・ブキャナン:広瀬友祐
ジョージ・ウィルソン:畠中洋
マートル・ウィルソン:蒼乃夕妃
ジョーダン・ベイカー:AKANE LIV
ニック・キャラウェイ:田代万里生

マイヤー・ウルフシャイム役(暗黒街を取り仕切る男):本間ひとし
エリザベス・フェイ役(デイジーの母):渚あき
ヘンリー・C・ギャッツ役(ギャツビーの父):イ・ギトン
キャサリン役(マートルの妹):音花ゆり

朝隈濯朗/安倍康律/荒田至法/石川新太/石川剛/乾直樹
榎本成志/川口大地/木内健人/後藤晋彦/田中秀哉/宮河愛一郎
池谷祐子/井出恵理子/岩﨑亜希子/碓井菜央/内田このみ
樺島麻美/七瀬りりこ/花岡麻里名/松島蘭/山田裕美子
※一部キャストのお名前に誤りがありました。お詫びいたします。

<ストーリー>
作家志望のニックがニューヨークで居を構えたのは、毎夜のように豪華絢爛なパーティーを開く謎の大富豪ジェイ・ギャツビーの豪邸の隣。
ニックはある夜、ひとり佇み湾の向こう岸の灯りを見つめるギャツビーの姿を目にする。
そこにあるのはニックのいとこデイジーとその夫トムの邸宅。
ニックは、ギャツビーに興味を抱き始める。
そして遂にギャツビーのパーティーに足を踏み入れたニックは、デイジーの友人ジョーダンとの出会いを通じ、ギャツビーの過去を知る…。
やがて、ギャツビー、デイジー、トム、そしてトムの愛人マートルとその夫のジョージ、それぞれの想いが交錯していき、物語は悲劇へと進んでいく――

公演HPはこちらから

おけぴ取材班:chiaki(取材・文・撮影) おけぴ管理人(撮影)

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