【南座「吉例顔見世興行」出演中】片岡千之助さんインタビュー


2000年(平成12年)生まれの18歳! 父は片岡孝太郎さん、祖父は片岡仁左衛門さん。
【片岡千之助さん】が初めての南座で、初めての大役に挑みます!


 11月に華々しく新開場した南座。11月から2ヶ月連続となる「吉例顔見世興行」が上演中。今月は、片岡仁左衛門さん、片岡孝太郎さん、そして片岡千之助さんの松嶋屋親子孫三世代揃っての出演が話題です。

 夜の部の『義経千本桜』「木の実」「小金吾討死」で主馬小金吾を演じ、『三社祭』で中村鷹之資さんと二人で踊る片岡千之助さんは、現在18歳の大学1年生。

 初めての南座で、初めての大役に挑む千之助さんに、初日を迎えて数日経った頃にお話を聞くことができました。




舞台の上でも、それ以外でも「欲張り」という千之助さん。その思いをお届けいたします!





──まず出演が決まった時の気持ちを教えてください。

 まさかこの大きなお役を、しかも顔見世でさせていただけるのかと驚きました。もちろん、いつかは祖父や父と一緒に顔見世に出演することが一つの大きな夢でしたので、嬉しい気持ちもありましたが、やはり緊張の方が大きかったです。

──初日から一週間ほど経ちました。そろそろ緊張だけではなく舞台に立つ楽しみも出てきたのではないでしょうか?

  今はまだ、この大きなお役を精一杯させていただく、そのことに全てを傾けている状態です。少しずつ慣れてきたとは思いますが、そのぶん増える課題も見えてくる。先が見えれば見えるほど課題も同じだけ増えてくるんです……おそらく一か月間ずっとその勝負だと思います。




──その大きなお役、小金吾について聞かせてください。

 元服前の前髪のある役で、おそらくいまの自分と同じ18、19歳くらいの役です。(役を演じる上で)大切にしているのは、父が演じている若葉の内侍と若君に対する“気持ち”ですね。とにかくこのお二人をお守りするという立場の役なので、その気持ちの強さの表現も大切ですし、大きな立廻りのある役なので、心の強さだけではなく肉体的にも強く見せなくてはならない。そのことを踏まえた上で、いかに役の気持ちを理解して演じられるかが一番大切だと思います。

──主人のために命を投げ出す小金吾、今の常識とはちがう主従関係が根底にある役です。現代の若者である千之助さんはその“気持ち”をどのように捉えていらっしゃいますか?

 実はさっき祖父とも話をしていたのですが、古典というのは、現代を生きている自分たちと同じ気持ちで演じることはできない。ある意味、自分自身もタイムスリップしたつもりで役の気持ちを感じる必要があるんです。そこがとても難しいところですよね。とにかく今はもっと経験を積んで、役の立場や気持ちを少しでも感じられるように勉強するしかないと思っています。

──おじいさま(仁左衛門さん)からはよくアドバイスを?

 はい。今回の稽古も祖父からつけてもらいました。10月の歌舞伎座では祖父と同じ楽屋でしたので、その頃から少しずつ教えてもらい、11月は祖父が南座に出演していたので、学校が休みの週末に京都に通いました。

──教わったことで特に印象的なことは?

 先ほどの答えと同じになりますが、祖父からは「役の気持ちを理解するほど、さらに見えてくる気持ちがある。それがわかれば役の動きが変わってくる」とずっと言われています。とにかく役の気持ちを少しでも理解することだと。

──気持ちを大事にする一方、小金吾役は肉体的にも大変そうな大立廻りがありますね。

 とにかく綺麗に決めるところは決める。でもそれだけではなく「相手を倒すんだ」という気持ちを持って挑むことが大事だと思います。とはいえ、こんなに大きな立廻りを、しかも舞台の真ん中でさせていただけるなんて、なにもかも初めての体験ですので、やはり緊張の連続です。

──捕り縄を使ったアクロバティックな動きも印象的でした。ある意味、宙乗りよりもスリルがありそう…と感じました。

 もうあそこは周りのお兄さんたちを信じて、ぱっと縄の網の上に乗るだけです(笑)。とにかく皆さん頼りになるので、安心して身を任せています。

── 体力的にはいかがですか?

  体力的にはどちらかと言うと『三社祭』の方が大変です(笑)。

──その『三社祭』は夜の部の最後の演目。18歳の千之助さんと19歳の鷹之資さん、同学年のお二人が平成最後の「吉例顔見世興行」を締めくくることになります。

 出演を聞いた時はこの大きな舞台で「まさか僕たちが」という気持ちでした。実は数年前に祖父から、中村屋の勘九郎お兄ちゃまと七之助お兄ちゃまの『三社祭』のDVD を渡されて、「いつか大ちゃん(鷹之資さん)とやれることがあるかもしれないから、見ておきなさい」と言われてはいたんです。でもこんな急に来るとは思っていなかったので、「まさか、まさか!」という感じで本当に驚きましたね。

──お二人の息の合った動きが見ものとなる踊りですね。

 この振りを合わせるのが本当に大変で。大ちゃんと何度も稽古をして、「ここはこのタイミングで」と動きを合わせていきました。とにかく二人一緒に稽古をしなくちゃ始まらないので、もうずーーーっと、一緒にいて(笑)、とにかく稽古しました。

──善悪のお面をつけて踊るところは、まるでアニメのキャラクターのようで日本舞踊に馴染みがなくても楽しめそうです。

 あの場面、おもしろいですよね! 映画館の予告編で出てくる「NO MORE 映画泥棒」みたいだねってよく言われるんです(笑)。もしかしてあのキャラクターの動きも歌舞伎から繋がってるのかな、なんて考えましたね。ちょっとコミカルな動きで「なんだこの生き物は」と言いたくなるおもしろさ。明確なストーリーがある踊りとも違って、その場その場の歌に合わせての動きで、単純に見ていておもしろい。ちょっと不思議な…摩訶不思議な踊り(笑)。楽しんでいただきたいと思います。

──一緒に踊る鷹之資さんは、千之助さんにとってどんな存在でしょうか?

 大ちゃんのような同学年の友だち、役者としての同志と言いますか、仲間がいて本当にありがたいと思っています。僕たち二人だけで南座の大きな舞台に立たせていただけるなんて、これもまたありがたい気持ちでいっぱい。ほんとうに嬉しいです。出番以外ではずっとお互いの楽屋を行き来しておしゃべりしていますね(笑)。だいたい大ちゃんが僕の楽屋に来ることが多いかな。話す内容は舞台のこと以外にも、学校とか友だちのこととか……もうほんとうに普通の大学生の会話です(笑)。




── 初めての南座出演ですが、京都の街にはもう慣れましたか?

 実は1ヶ月の地方公演も初めてなんです。せっかくなので街の雰囲気も楽しみたいのですが、今は朝起きてからほぼずっと劇場にいるので、まだ舞台以外を楽しむ余裕はないのが正直なところです。

──東京生まれ、東京育ちの千之助さん。上方の芸に対してはどんな思いをお持ちですか?

 祖父だけでなく、松嶋屋の代々が守ってきた家の芸ですので、今回この南座での顔見世興行に出させていただくことで、さらに何かを吸収できればと思っています。舞台の上だけでなく、京都や大阪の街でも時間を過ごして上方の空気を感じるのが理想ですが、今はまだ劇場以外で過ごす時間はなかなか……。これから少しずつ馴染んでいきたいと思います。

──大学1年生ということで、学業と芝居の両立は大変なのでは。

 今のところなんとか学校には通えています(笑)。青山学院の幼稚園時代から小学校、中学、高校と、周りの友人にも助けてもらいながら進学させていただき、今は大学の教授とも相談しながら芝居との両立ができていると思います。大学への進学を選んだのは、さまざまな人と触れ合うことで自分の視野が広がると思ったからです。同世代の友人たちの物事の捉え方、考え方を知りたい、歌舞伎の世界だけでなく自分以外の人の生き方を知ることも大事だなと思ったので進学を選択しました。歌舞伎もやりたい、歌舞伎以外の世界も知りたい……ひとことで言うと、欲張りなんですね、僕。

──18歳というと歌舞伎の世界以外でも、これからの進路や未来を考える年頃です。歌舞伎俳優としての千之助さんはこれから立役と女方、どちらを選択されるのでしょうか。

 今はまだはっきりどちらとも決めていませんが、やはり小さい頃から憧れていたのは祖父の芝居でしたので、これからやりたい役というと立役が多いです。でもその一方で、踊りに関しては『道成寺』や『鏡獅子』の弥生をやってみたくて、やっぱり女方も、と。うん、やっぱり欲張りですね(笑)。

──美しい女方も、おじいさまのDNAを引き継いだかっこいい立役もどちらも楽しみです。今回の顔見世興行でご自分の役以外で「いつか演じてみたい」と注目している役はありますか?

 今月、愛之助のお兄さんが演じている弁天小僧なんてやってみたいですね。やらせていただける機会があったらほんとうに嬉しい! あとは祖父が演じている『ぢいさんばあさん』の伊織もいつかは。

──千之助さんの弁天小僧、花形歌舞伎かなにかで近いうちに出会えたら嬉しいです! 年齢を重ねた演技がポイントの伊織役もまだまだこれから先の楽しみがありますね。

 『寺子屋』にもまだ出たことがありませんし、ほんとうに何もかもこれから。この先いただくお役、全てが勉強です。
 
──欲張りな役者として、これからどんな顔を見せてくださるか楽しみにしています。では最後に「役者・片岡千之助」に自分でキャッチコピーをつけるとしたら?

 わあ、なんだろう。難しいですね。いまの自分はまだ「こうです!」と言えるものはないかもしれませんが、目指す役者像はやはり祖父や父に言われているように「必要とされる役者」ですね。お客様にも、まわりの役者にも必要とされる役者。……必要とされる役者って、どんな役者か。それは一つの形だけではなくて、この人が出ているから劇場に行く、この人が出るなら共演したい、と思ってもらえる役者。そのためには……うーん、やっぱり難しいです。次にまた取材していただける機会があるまでに、「自分はこういう役者である」と言えるようになっていたい、そう思います。





 同世代のお友だちを歌舞伎に誘うときは、「あらすじを読んだりして内容を予習してくると、さらに楽しめるよ」と伝えているという千之助さん。よく知られている演目を中心に、通常の公演よりたっぷりとみせてくれる顔見世興行は、歌舞伎鑑賞初心者にもうってつけです。
 
 昼の部は、芝翫さんが松王丸を演じる『菅原伝授手習鑑』「寺子屋」、梅玉さんと孝太郎さんが江戸男と京女の悲恋をみせる『鳥辺山心中』、仁左衛門さんと時蔵さんの夫婦愛に心打たれる『ぢいさんばあさん』、そして藤十郎さん、鴈治郎さん、扇雀さんの親子共演『恋飛脚大和往来』「新口村」で劇場中が雪景色に。

 夜の部は、仁左衛門さんのいがみの権太必見・松嶋屋三代共演の『義経千本桜』「木の実」「小金吾討死」「すし屋」、鴈治郎さんが歌舞伎で初めてつとめる可愛らしい踊り「面かぶり」、愛之助さんが弁天小僧に扮する『弁天娘女男白浪』で名台詞に酔ったあとは、鷹之資さん&千之助さんが踊る『三社祭』で若々しく!

 南座「吉例顔見世興行」は、12月26日まで上演中です。


公演情報詳細(歌舞伎美人)
師走の京の風物詩「吉例顔見世興行」が南座で開幕(歌舞伎美人)


<取材こぼれ話♪>

 俳優業と学業の両立で忙しい日々を過ごす千之助さん。息抜きタイムに何をしているのかお聞きしました。

千之助さん:映画を見ること、音楽を聴くこと、サッカーをすること、これが僕の息抜きタイムです。

おけぴ:映画は、役者としてのお仕事スイッチが入ったりしませんか?

千之助さん:邦画の場合は「この役やりたい!」と仕事目線になることもあります。でも洋画を見るときは完全に観客モード。この前も『ボヘミアン・ラプソディ』を見に行って大興奮でした! もう最後のライブ・エイドのシーンなんて最高にテンションが上がって、映画館だから声は出せなかったけど、拳を突き上げて一緒に歌いたいくらいでした。

おけぴ:フレディのあの存在感、ちょっと歌舞伎俳優っぽいところもありますよね! でもクイーンって千之助さん世代とはだいぶ離れている気が……

千之助さん:僕、クイーンとかマイケル・ジャクソンとか、ちょっと前の時代の音楽を聴くのが好きなんです。もちろん米津玄師さんとか今っぽいものも好きですが、B'zとか椎名林檎さんとか、あとは学校の先輩でもある尾崎豊さんとかも聴きます。これも…欲張りだからですかね(笑)。




南座発祥四百年 南座新開場記念
白井松次郎 大谷竹次郎 追善
京の年中行事 當る亥歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎

京都四條 南座
平成30年12月1日(土)~26日(水)

公演情報詳細(歌舞伎美人)
 
おけぴ取材班:mamiko 監修:おけぴ管理人

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