今年8月での退団を発表した
雪組トップコンビの
壮一帆さん・愛加あゆさんが揃って主演する宝塚歌劇雪組シアター・ドラマシティ公演
『心中・恋の大和路』。
初日に先駆けて公開された舞台稽古の模様を、写真付き速報レポにてお届けいたします!
人形浄瑠璃、そして歌舞伎で繰り返し上演され続けている
忠兵衛と
梅川の悲恋物語。
大阪の飛脚問屋・亀屋の養子に入り若旦那として差配をふるう
忠兵衛(壮一帆さん)が、遊女・
梅川(愛加あゆさん)と出会ったことから恋に身を焦がし、やがて道を外していく…というストーリーはご存じの方も多いはず。
男女の愛、そして親子の愛、男同士の友情など、様々な形で
“人の情け” を感じさせるこの作品は、近松門左衛門の
『冥途の飛脚』を原案に、昭和54年に
瀬戸内美八さん主演で初演され、その後も上演が重ねられてきた宝塚歌劇の名作のひとつです。
今回の雪組公演もまた
芝居巧者が揃い踏み。それぞれの役の関係性、心情をじっくりとみせてくれる
“演技” が見どころとなりました。

壮一帆さん×愛加あゆさん
雪組トップスターコンビが “近松門左衛門の世界” を体現!
「梅川のことが愛しくてたまらない」 そんな想いを体中から感じさせる忠兵衛を演じるのは、もちろん雪組トップスターの
壮一帆さん。
二枚目の若旦那らしい柔らかな大阪言葉が心地よく耳に響き、退団を発表してからよりいっそう研ぎ澄まされた感のあるすっきりとした舞台姿は、梅川でなくても惚れ惚れとする美しさ。
店の手代・与平(月城かなとさん)が、花魁・かもん太夫(大湖せしるさん)に寄せる思慕には、年長者らしい理解と思いやりを示し、粋なはからいをする一方で、自分と梅川の事になると善悪の見境もつかなくなる…。
そんなアンバランスな忠兵衛役を、壮さんらしい飄々と軽やかな存在感と苦悩の表情を絶妙に織り交ぜて演じます。物語の終盤、
梅川に向ける笑顔の切ない優しさは絶品!
その忠兵衛を一心に慕う梅川を演じるのは、壮一帆さんとの同時退団を決めた
愛加あゆさん。悲恋物語ということで終始伏し目がちな梅川ですが、それでも陰らない美しさはさすが忠兵衛が惚れ込んだ女っぷり。
「舞台上のどこにいても忠兵衛を目で追っている」 そんな印象をうけるほどに一途で健気な遊女・梅川になりきるその姿に、トップコンビの絆を重ねあわせることができるのも宝塚歌劇ならでは。
“今” を精一杯愛しぬきたい……そんな梅川の心に心が震えます。
雪組きっての実力派・
未涼亜希さんが演じるのは、忠兵衛の友人・八右衛門。恋に狂い、道を踏みはずそうとしている親友のためにとった行動、それゆえに歯車がずれていく運命…。
壮一帆さんと
未涼亜希さんだからこそ出せる二人の関係性を、その目にしっかりと焼き付けましょう!
そして未涼亜希さんといえば、心に深く響くその
歌唱力。物語のクライマックスでは、その歌声を八右衛門の男気とともにたっぷりと聴かせてくれます。舞台美術、主演コンビの演技とともに胸に迫るこのシーン。その美しさはぜひ劇場でご覧ください!

梅川の姉貴分の花魁・かもん太夫を演じる大湖せしるさん(写真右)
郭の女として最上級の幸せをつかんだ花魁かもん太夫と、追われる身となる梅川。
愛加あゆさんと
大湖せしるさんが、対照的なふたりの運命を鮮やかにみせる遊郭の場面。
透水さらささん、
桃花ひなさんらと舞い踊る場面の華やかさにも乞うご期待!踊りながらも、それぞれの役の心の中を感じさせる梅川と太夫。どちらからも目が離せなくなる名場面です。
複雑な親心をみせる忠兵衛の実父・孫右衛門(汝鳥伶さん)と、正体を明かさずに会話を交わす梅川。こちらも、短いながら物語に深みを与える名場面!罪を犯した息子、そのきっかけとなった女への怒り、それでも生きていてほしいと願う親の心……。専科より出演の
汝鳥伶さんの芝居力が物語の悲劇性をよりいっそう深めます。
現代の郵便局と銀行の送金システムをあわせたような役割を担っていた
飛脚問屋。自分のものではない金に手を付けることは無論ご法度、しかし恋に狂った忠兵衛は……と、あまりにも有名なそのストーリー。そこに宝塚らしいアレンジが加わり、よりいっそう
人間の弱さや
悲しみを感じられる作品になっている
『心中・恋の大和路』。「歌舞伎や人情浄瑠璃に馴染みがない」という方でも、近松門左衛門が描き出した普遍的な人間の姿、その生きざまに胸を打たれるのではないでしょうか。
飛脚問屋仲間を演じる
香綾しずるさんが笑いを誘う小芝居シーンや、
久城あすさんの腰を落とした踊りなど、その他の出演者にも持ち味に応じた見せ場あり。うぶな手代・与平を演じる
月城かなとさんのソロ歌唱や、番頭役に挑戦する
帆風成海さんの堅実な演技など、若手注目株の活躍も見逃せません!
「軽やかさのある二枚目」という壮一帆さんらしい役柄でありながら、恋ゆえに破滅していく忠兵衛。「封印切」に至る忠兵衛の心の動きをきっちりとみせるその演技はさすが “芝居の雪組” のトップスター!恋に狂った男の悲しい運命を細やかに、そして濃厚にみせる “芝居力” に注目です!
OG公演をふくめて7度目の再演となるこの公演。初演で八右衛門を演じた
峰さを理さんこと西崎峰さんが振付として参加しているのも話題のひとつです。同じく初演から番頭の伊兵衛役を演じてきた、
立ともみさんも演技指導として参加。先輩から後輩へと受け継がれ進化していく名作
『心中・恋の大和路』梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演は3月24日まで上演中です。
壮一帆さん、そして
愛加あゆさん。悲恋の中でよりいっそう輝くその舞台姿を、お見逃しなく!!
※西崎峰さんの「崎」は正しくは旧字体の崎(たつざき)です。
一部閲覧環境では正しく表示されない場合があるため記事中は「西崎」と記載しています。
おけぴ取材班:mamiko(文/撮影) 監修:おけぴ管理人