“生命創造”、神の領域に踏み入れたひとりの天才とその友、家族の愛のドラマ
メインキャスト全員が1人2役を演じるというトリッキーな演劇的作劇
ドラマティックで繊細な楽曲
左から)板垣恭一、相島一之、音月桂、加藤和樹、中川晃教 、柿澤勇人、小西遼生、濱田めぐみ、鈴木壮麻(敬称略)
韓国で生まれた
大作ミュージカル『フランケンシュタイン』、その日本版初演の製作発表が行われました。オリジナルが持つ高いポテンシャルが日本流の解釈と創作手法でさらに高められ我々の前に姿を現すであろう2017年1月が待ち遠しくなる会見レポート、まずはコメント編をお届けいたします。
【物語】
19世紀ヨーロッパ。科学者ビクター・フランケンシュタイン(中川晃教さん/柿澤勇人さん)は戦場でアンリ・デュプレ(加藤和樹さん/小西遼生さん)の命を救ったことで、二人は固い友情で結ばれた。“生命創造”に挑むビクターに感銘を受けたアンリは研究を手伝うが、殺人事件に巻き込まれたビクターを救うため、無実の罪で命を落としてしまう。ビクターはアンリを生き返らせようと、アンリの亡き骸に今こそ自らの研究の成果を注ぎ込む。しかし誕生したのは、アンリの記憶を失った“怪物”だった。そして“怪物”は自らのおぞましい姿を恨み、ビクターに復讐を誓うのだった…。
【潤色演出:板垣恭一さん】~これは古典の新解釈~
「1870年に書かれた小説、素敵な古典『フランケンシュタイン』の新解釈版と位置付けています。どのあたりが新しいかというと、原作小説では怪物はフランケンシュタイン博士が作った人造人間ですが、この作品ではそのもとになったのは彼の友達の肉体というアプローチです。
創造した人(フランケンシュタイン博士)と創造物(怪物)は、原作同様に神と人間、父と子という関係性も持ちながら、そもそもは人間対人間として関係(友情や信頼)を築いていたという点が面白くもあり、演出するにあたっては難しさにもなるでしょう。その関係性の複雑さは潤色においてもポイントになると思います。
人間が人間を改造して違うものをつくり出す。優しい心を持っていた人間が違うものになってしまう悲劇、そこがきれいに腑に落ちるために細かい言葉のニュアンスなどに手を入れているところです。
大まかに申し上げると、愛と憎しみのお話、そこに友情というスパイスが振りかかっている。そう考えていただければと思います」
【ビクター/ジャック:中川晃教さん(ダブルキャスト)】~隣国韓国で制作された作品であることにも魅力を感じた~
<1幕>ビクター・フランケンシュタイン:生命創造の研究に没頭する若き天才科学者
<2幕>ジャック:人間同士を格闘させるギャンブル闘技場を営む悪党
「先日、デビュー15周年コンサートでひと足早くこの作品の楽曲を歌いました。公演前にお客様に楽曲をお届けするというのは僕にとっても特別な体験、時間でした。
とても壮大な音楽、物語。そして、同じアジアの隣国韓国で制作された作品ということにも魅力を感じています。同じアジア人として日本版初演として上演できることが楽しみです」
中川晃教さん デビュー15周年おけぴロングインタビュー【ビクター/ジャック:柿澤勇人さん(ダブルキャスト)】~中川さんは憧れの存在~
「僕、実は中川さんの大ファンで、劇団時代、研究生時代には毎日のように中川さんの歌を聴いていました。なんて歌のうまい人なんだろう、こんなに歌を自在に操れるなら人生楽しいだろうなと思っていました。憧れの存在です。その中川さんと歌稽古をして、隣で中川さんが音をとっている…もう、あの日の記憶ほとんどないんです。
私事ですが、6月の公演(『ラディアント・ベイビー~キース・ヘリングの生涯~』)で足を負傷し、大千穐楽まで役を全うすることができないというすごくつらく悔しい経験をしました。たくさんの人に迷惑をかけ、それと同時にたくさんの人に支えられ、今、かろうじて歩くことができるまでに回復しました。来年の1月には元気な姿で舞台に立ち、みなさんに恩返ししたいと思っていますし、一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします」
アッキー&カッキーコンビで挑むビクター・フランケンシュタイン!
【アンリ・デュプレ/怪物:加藤和樹さん(ダブルキャスト)】~男が見ても惚れるビクターとアンリの関係~
<1幕>アンリ・デュプレ:非業の最期を遂げるビクターの親友
<2幕>怪物:ビクターによって生み出された名もなき創造物
「僕は、韓国へこの作品を観に行きました。そこでは言葉はわからなくとも、何とも言えない気持ちの高ぶりを感じ、自然に涙を流す自分がいました。僕自身、初めての感覚でした。板垣さんがおっしゃったように、愛と憎しみと友情の物語。ビクターとアンリの関係性には、男が見ても惚れるようなものがあり、それを自分が舞台上で体現することに気持ちがたかぶりました。韓国でご覧になった方もいらっしゃると思いますが、このメンバーで、日本でしかできない『フランケンシュタイン』を創り上げたいと思います。楽しみにしていてください」
【アンリ・デュプレ/怪物:小西遼生さん(ダブルキャスト)】~強くならざるを得ない作品~
「僕も韓国で見ましたが、韓国の俳優さんの身体から出てくるエネルギー、生命力、これは何なのだろうと思っていましたが、この作品で1つ見えてきたものがあります。命を扱うこの作品、音楽がとてつもなく壮大であるだけでなく、そこに乗せられる人の声やひとりひとりのキャラクター自体が力強いのです。さらに、陰と陽、演じる2役が真逆のエネルギーを持ちながら核は一緒にも思える。そんな作品をやるにあたってはやはり強い気持ちを持つことが必要で、強くならざるを得ないということです。
振り幅の大きな2役というのは大変ですがやりがいのある役です。命を尊び、この作品をこのメンバーで大切に紡いでいきたいと思います」
【ジュリア/カトリーヌ:音月桂さん】~心の奥底に響くパッション~
<1幕>ジュリア:ビクターを想い続ける婚約者
<2幕>カトリーヌ:怪物にほのかな思いを寄せる闘技場の下女
「この素敵なカンパニーの一員に入れていただき光栄です。
私も韓国に見に行きました。韓国語がわからないので台詞の細かいところまではわかりませんでしたが、俳優さんたちのパッションが本当に心の奥底にまで響きました。この感動を日本のお客様にもお届けできるのかなと思うと、今からワクワクドキドキしています」
【ルンゲ/イゴール:鈴木壮麻さん】~ミステリアスで美しい世界~
<1幕>ルンゲ:ビクターの理解者である執事
<2幕>イゴール:ピエロのようなド派手ないでたちの闘技場の召使い
ミスター執事!!
「素晴らしい楽曲と美しい世界観に彩られた『フランケンシュタイン』日本初演版に出演できることにワクワクしています。1幕と2幕、違う人物になるなんて、休憩時間の楽屋はどんな壮絶なことになっているのかな(笑)。劇場での裏動線が騒がしいことになっているのかな、なんて楽しみにしながら1月を待ちたいなと思います。
日本中をワクワクさせるミステリアスで美しいフランケンシュタイン楽しみにしていてください」
そんなに笑わなくても…
【ステファン/フェルナンド:相島一之さん】~初めて尽くしであります(笑)~
<1幕>ステファン:ジュリアの厳格な父
<2幕>フェルナンド:ギャンブル闘技場に出入りする守銭奴
「相島一之と申します。おじさん枠として混ぜていただきました。相島、30年くらいお芝居をやっていますが、今、とても緊張しています。今回は初めて尽くしであります(笑)。
今日お会いした方々、ほとんど初対面です。これまでにミュージカルも経験しておりますが、全てコメディでございます。それが、今回はカッコイイ、クールで美しいミュージカルに混ぜていただく、初めてでございます。
そして、日生劇場でございます。初めてでございます!僕は30年以上何をやっていたんだ(笑)!こんな衣裳で皆さんの前で製作発表するのも初めてでございます。いつもはラフな格好だったり、おしゃれしてタキシードだったり、こんな格好はありません。
本当に緊張して手も足も震えています。でも、その緊張がとても楽しみです。このみなさんの中で、この愛と憎しみと友情のお芝居に、どう彩りを加えることができるのが、それがとても楽しみです」
あえてここでご紹介!何をやっていたって…大島先生素晴らしかったです!『紙屋町さくらホテル』観劇レポ【エレン/エヴァ:濱田めぐみさん】~ビクターとの距離感に思いをはせる~
<1幕>エレン:ビクターを見守り続ける姉
<2幕>エヴァ:夫のジャックを尻にしき怪物を手なづける闘技場の女主人
「3人目のフランケンシュタイン
※1の濱田めぐみです。こうして、(創作活動の)初日からみなさんと和気あいあいと作っていけることにワクワクしています。
すでに第1日目が始まった感覚で、自分のポジショニングなどを考えながらここに座っていました。
私はビクターの姉エレンを演じますが、彼の小さい頃からの成長を歌で紡いでいくというシーンがあります。彼が神の領域に触れてしまったことから始まる崩壊を客観的に見守り、どのように接していくか、ビクターとの距離感に思いをはせていました。また、1幕では聖母のようでありながら、2幕では冷酷な悪魔のような存在、その極端な部分が出せたらいいなと思っています。素晴らしい初日を迎えられると信じております」
※1 会見冒頭に板垣さんからも改めてご説明がありましたが、フランケンシュタイン=怪物と思われがちですが、実際は怪物を創り出した人がビクター・フランケンシュタイン博士なのです。つまり、ビクターの姉のエレンもフランケンシュタイン!続いては、役柄についてのコメントです!
──メインキャストが2役を演じることについて板垣さん
「2役をやる、まるで別の人格を演じるというのがこのお芝居の仕掛け、非常に楽しい試みです。“真逆な2つの人格の根っこは同じ人”としたら面白いかなと思っています。僕らもご機嫌なときとご機嫌じゃないとき、攻撃的なときと慈悲深いときってありますよね。両方、内包しているんです。
みなさんもそうだと思いますが、これを僕らは日々使い分けて、状況によりそれらの人格を出すことで生きています。それを演劇として2役として取り出す、ひとりの人格の中にある光の部分と陰の部分、天使と悪魔、そういう解釈で作れるのかもしれないと考えています」
──役への印象と引受けた決め手は。 中川さん
「子供のころ、映画だったかな。「フランケンシュタイン」に触れたとき、人の倫理に反することへの葛藤を感じ、そこへ踏み込む博士の気持ちってどんなものだったんだろうと疑問に思ったことがあります。大人になった今、そこを知りたいと思う自分もいます。
この作品の中では、なぜ彼が人間を生き返らせようしたのか、その1つの理由としてそれがアンリという自分にとって愛する人間だったことがあります。一見、異常なことのように思えたり、やってはいけないことだという思いが勝ってしまいそうですが、愛する人を愛し続けたい、そこにビクターを演じ、生き、歌で体現するときの説得力を見いだせると感じ、引き受けました」
柿澤さん
「ナショナル・シアター・ライブの『フランケンシュタイン』
※2を見ていて、それをやるのかと思っていたら、どうやら違うらしい。1幕と2幕で僕ら6役のキャラクターがガラリと変わるという設定が最初は全然想像できませんでしたが、そんな新解釈の『フランケンシュタイン』に挑戦できる楽しみを感じました。
また、去年『デスノート』を日本で制作し、その後、韓国版を上演しました、今回の逆ですね。同じ脚本、同じ音楽ですが日本と韓国では全然違うものになっていたんです。この作品も韓国版とはまた違うものになると思います。そこには、負けたくないなという思いも、一緒に創っていくという仲間意識も持っています。そんな挑戦をしてみたい気持ちが決め手になりました」
※2 Bunkamuraル・シネマにて上演されます!
ベネディクト・カンバーバッチ as 怪物役バージョン:8/20(土)~8/26(金)
ベネディクト・カンバーバッチ as 博士役バージョン:8/27(土)~9/2(金)
詳しくはこちらのページにて! 加藤さん
「まず、楽曲を聞きました。その中で特に♪君の夢の中でという曲が素晴らしかったことを記憶しています。また、個人的にすごく好きな韓国の俳優パク・ウンテさんが、このアンリと怪物を演じていたので、同じ役を演じることはとても高いハードルですが、そこに挑戦したい気持ちもあったのでお引受けしました」
小西さん
「えーと、どうだったかな(笑)。
理由は、楽曲がよかったのがひとつ。あとは、韓国語を直訳した台本をいただき、それを読んだ時の印象は、すごく話の筋はわかりやすく、勢いがある反面、粗もある。直訳なので僕の勝手な判断ですが。でも、粗がある分、日本で生まれ変わることで、別物になる可能性があるとも言えます。
僕自身、韓国発のミュージカルは、過去に3本ぐらい出演していますが、どれも役者、クリエイターの“やってやるぞ”“書いてやるぞ”というエネルギーを強く感じます。そうやって書かれた物語は、多少の粗さはあっても、核の強さがあるんです。そして、がっちり完成されているものより、そのほうがこちらでいただいて演じたときに面白いものになる可能性があると感じているので、お引き受けしました」
音月さん
「2つの役をいただき挑戦させていただく場を与えていただいたことに感謝しています。自分を断崖絶壁に追いやって、落ちるギリギリまで行って、ひと皮もふた皮も向けるといいなという期待を胸にお受けしました」
壮麻さん
「「執事の役だよ」「え、執事ですか!」
僕はホテルマンになりたかったのですが、それはホスピタリティを前面に出して大好きな人を支える、居心地よくすることが好きなんです。だから、執事役が大好きなのです!
かつては、別の作品でお隣にいらっしゃる濱田さんが僕の女主人でした。そのとき、若い変な闖入者が部屋に入ってきてね、それがカッキー(笑)」
柿澤:“変な”って!!
壮麻さん
「ごめん、若い素敵な闖入者が入って来て、しぶしぶその男(柿澤さん)にお仕えするというシチュエーションでした。でも、今回は「おぼっちゃま、おぼっちゃま」と言いながら、2人のビクターを居心地よくさせてあげる役です。本当によだれが出てきそうなくらい楽しいなと思い、引き受けました。そんなこんなで執事役を拝命いたしました。大切に演じたいと思います。
今回は演技が赤裸々な人たちが揃っています。赤裸々というのは、ごてごて役を貼り付けていくというより、役をそぎ落としていく、素っ裸な自分を舞台上に放り出して、相手役とラリー、バトルしていく人たちということ。僕も取り繕うことなく、稽古場では思い切り失敗をしてもいいと思っています、そして、うまくいったらみんなで喜んで…そうやって初日を迎えられたらと思います」
相島さん
「オファーをいただいたときですよね、いいんですか!私でいいんですか!というのが一番率直な感想でした。相島、49歳で長男が、52歳で長女が生まれました、まったくプライベートな話をしております(笑)。そして、今年で55歳。子供が生まれたときから相島は第二の人生を歩もうと思いました。初めてということは出会いがたくさんあるということ、とてもありがたくこの仕事を受けました。
2役については、ひとつには衣裳が力になってくれると思います。宣伝用の写真を撮ったときに、このお父さんの衣裳と極悪な人の衣裳を着ましたが、それだけでその人格になってしまう。美術が持っている力というのは本当に素晴らしいもので、役者というのはそういう感受性や想像力がすごく強いですから」
濱田さん
「1幕と2幕、別の役を演じることにすごく興味がありました。自分がやるだけでなく、お稽古でそれぞれの役者さんがどのように2つの役作りをするのかにも興味が湧いて、その好奇心にも押されお引受けました。
エレンの役作りに付いては、普通の家に天才が生まれてしまったことの喜びと悲しみ、その葛藤の中での心の揺れを表現できるように準備をしたいと思います」
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~歌唱披露&お写真編~に続く…
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人